秋山和慶指揮大阪フィル、そしてベルシャザールのこと

こないだの日曜日(6/28)は、大阪フィル定期を聞きにザ・シンフォニーホールまで出かけました。メインに据えられたウォルトンの大作「ベルシャザールの饗宴」が目当てでしたが、前半のモーツァルトやディーリアスもなかなか魅力的な演奏で、最初から最後まで飽きることのない、素晴らしいコンサートでした。

こないだの日曜日(6/28)は、大阪フィル定期を聞きにザ・シンフォニーホールまで出かけました。メインに据えられたウォルトンの大作「ベルシャザールの饗宴」が目当てでしたが、前半のモーツァルトやディーリアスもなかなか魅力的な演奏で、最初から最後まで飽きることのない、素晴らしいコンサートでした。
去年「第57回ARDミュンヘン国際コンクール」の弦楽四重奏部門で、日本から参加した「ウェールズ四重奏団」が第3位を獲得したことは、やくぺん先生のブログで大きく取り上げられたこともあり、ご存じの読者も多いかと思います。このカルテットがメンバー2人を入れ替えて以来初めての演奏会を静岡県・袋井市の「月見の里学遊館」で開くという情報を、ホールスタッフの方から直々に頂きましたので、「これは行かねば!」と片道1000円の高速道路に乗って袋井まで出かけて参りました。当ブログのコメント欄で情報を寄せて頂いたホールスタッフの方には、この場を借りまして御礼を申し上げます。ほんとうにありがとうございます。
先週末、3月28日(土)に京都・北山までおでかけしました。一番の目的は「よもぎあんぱん」ではなく(笑)、竹澤恭子さんと小川典子さんのデュオ(at 京都コンサートホール・小ホール)です。お二人とも世界に名を知られた名手ということで、とても期待して会場入りしたのですが、全般的に「世界水準」の、素晴らしいコンサートだったと思います。
ヴァネッサ・ラン(Vanessa Lann)という人が書いた「スプリング・エターナル」(Spring Eternal)という曲を、ウェブラジオで聞きました。ヴァイオリンとピアノによる二重奏曲で、演奏はパトリツィア・コパチンスカヤと大井浩明という「曲者」二人。ストリーミングの接続状況があまりよろしくなくて音が途切れ途切れだったけど、音楽は何とか楽しめました。
先週末の東京遠征の続きです。7日(土)の「冬の旅」に続いて8日(日)は、初台のリサイタルホールで「MoVEヴォーカルアンサンブル」のコンサートを見てきました。オール現代音楽でしたが、面白い音楽をいっぱい体験できましたし、なによりシュトックハウゼン「私は空を散歩する」の日本初演の場に立ち会えうという、貴重な経験をすることができました。
先週末は休暇を利用して東京におでかけしました。目的は当然(笑)、コンサートです。

3/7(土)に訪れた、所沢市民文化センターMUSE「マーキーホール」です。
この日のコンサートのプログラムは、シューベルトの「冬の旅」1曲のみ。演奏者はクリストフ・プレガルディエンとミヒャエル・ギース(パンフレットでは「ゲース」)の2人です。

一昨日に春一番が吹いたからでしょうか。昨日はやたらポカポカ陽気で、一足早く春が来たような天気でした。パーカーを羽織って外へ出かけたのですが、余りに暖かくて途中で脱いじゃいました。
でどこに行ったかというと…;
「これは北欧の集合住宅です」とキャプションを付けてもなんら違和感のないモダンな外観ですが実はコレ、静岡県・袋井にある公共施設です。名前は「月見の里学遊館」といいます。「月見の里」とは、なかなか趣のある名前です。山奥の温泉旅館っぽくもありますが。
すでにネットのあちこちで絶賛されてますので、いささか「後出しジャンケン」になってしまいますけど、エリシュカ&N響の「わが祖国」、良かったです。いや「良かった」なんてもんじゃないですね。エリシュカほどの実力者なら、相当なレベルの演奏になるだろうことは予想できましたし、実際それを期待してわざわざNHKホールに足を運んだのですから。でもこれほど素晴らしい演奏をしてくれるとは…。「エリシュカさんありがとう」「N響ありがとう」と言いたい気分です。本当に私の想像の遙か上をいく、見事な演奏でした。弦楽器も木管楽器も金管も打楽器も、力のこもった迫力あるサウンドでしたし、これほど充実したオーケストラを目の前で聴かされて、しかも聴いている音楽がロマンティックでエネルギッシュで情感に溢れる「わが祖国」なのですから、これはもう泣くしかありませんよ。「シャールカ」の終結部のあたりで、自然と溢れて来たのですよ。コンサートで感極まってしまうというのは3年前に一度ありましたが、それ以来ですね。
年末恒例の「回顧モノ」企画です。今年は思うところあって、少々財布を傷めてでも「積極的にコンサートに出かけよう!」と思い、実際そうしました。結果として大学の授業料1年分の出費をしてしまいましたが、いい「勉強」が出来たと思っています。
今年は実際に会場に足を運んだコンサートを「オーケストラ」「器楽&古楽」「オペラ」の3部門に分類し、それぞれのトップを決めるというスタイルでTop3を決めてみようと思います。まずは管弦楽部門からです。
ついにYouTubeが交響楽団を組織するようです。
まずはプロモーションビデオからどうぞ。
団員をオーディションで世界中から募り、合格者は来年4月マイケル・ティルソン・トーマスの指揮の下、カーネギーホールで演奏できます!というイベントのようです。「世界初のオンライン・コラボレーション・オーケストラ」(by YouTube)への参加希望者は、課題曲を演奏した動画をYouTubeに投稿すればそれで良いそうです(細則はこちらにあります)。
ペーザロの「ロッシーニ・オペラ・フェスティバル」来日公演に行ってきました。今日観たのはびわ湖ホールの「マホメット2世」だったのですが素晴らしかった!そして凄かった!歌手たちが次々とコロラトゥーラを決める様はまさに圧巻!舞台の上はまさに声のグランプリ・ファイナルでしたよ(←フィギュアスケート風:笑)。特にアンナを歌ったマリーナ・レベカの歌唱は、おそらく一生私の頭に残ることでしょう。ちょっと私忙しいので、今日はこの辺にしときますが、これは必見ものではないでしょうか。東京公演のチケットはまだあるみたいなので、時間とお金のある方は是非。
あーソキエフの来日公演行きたかったなぁ。なんかスゴク良かったらしいじゃないですか。直言家で知られるN響・根津さんも手放しで賞賛しておられますし。実はこのコンサート、「神尾真由子が出演するから、どうせ発売即完売だろうな」と高をくくってしまい、端から買うのを諦めて、別のコンサートに行くことにしたのです。実際は本番前までチケットが売れ残ってたらしいですし(「チャイコフスキーコンクール優勝!」効果が1年しか持たなかったのは寂しい限りですが)、「惜しいことしたなぁ」という思いで一杯です。しゃあない、来年のトゥールーズの来日公演に行きますか。しかしチケット代幾らだろ。
で私がソキエフ&N響の代わりに行ったのが、びわ湖ホール「サロメ」だったのですが、うーん。ちょっと消化不良でした。ここから先は、演出家のカロリーネ・グルーバーがどういう意図で舞台にかけたのか、ということとは無関係に、あくまで私が舞台から受けた印象を記します。
なんか最近無性に聞きたくなっちゃいました。

アース・ウィンド・アンド・ファイアー(EW&F)です。写真のは橋本徹氏によるコンピレーション「Free Soul - The Classic Of Earth Wind And Fire」(→Amazon)です。
さて私がEW&Fを聞きたくなったきっかけは、ある演奏会でした。
福井に引っ越してから、毎年9月になると「武生国際音楽祭2008」に出かけるのが恒例となっている私ですが、今年も行ってきましたよ。今回は「細川俊夫と仲間たち」と題された室内楽コンサート(9/5:金)に出かけたのですが、福井に居ながらにして現代音楽の最先端に触れることが出来たという点で、実に有意義な演奏会だったと思います。
昨日(4/26)は東京オペラシティで東京交響楽団を聴きました。お目当てはベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」を演奏するイダ・ヘンデルです。それにしてもこの日の彼女のヴァイオリン演奏を、どんな言葉で形容したらいいのでしょう。「いやー、恐れ入りました」としか言いようがありません。
大井浩明氏(→公式ブログ)の「Beethovenfries」がいよいよ始まりました。今月から1年がかりで、ベートーヴェンのピアノソナタ(全32曲)とリストが編曲したバージョンの交響曲全9曲を、作曲順にフォルテピアノで演奏します。さらにはベートーヴェンのピアノソナタを作曲した時期と同年齢の作曲家たちの新作初演もやってのける(しかもフォルテピアノで)ということで「これは是非とも行かねば!」と思っていたところ、大井氏ご本人から招待券を頂きました。どうもありがとうございました。
昨日は広島交響楽団を聴きに、すみだトリフォニーに行ってきました。コンサート前に近くの公園にふらりと立ち寄ったのですが、桜は満開で、木々の下では「今から酒を飲みますよ~」的にスタンバイしておられる方が大勢おられました。私もつかの間の花見を楽しませてもらい、コンサートに臨んだわけですが、こちらも見事な満開でしたね。あの、「たいへんよくできました」ていう桜の花びらをモチーフにしたハンコがあるじゃないですか。あれを(僭越ですが)昨日の広島響の演奏に進呈したいです。まあ音楽はグリーグにシンディングにスヴェンセンと「北欧づくし」で桜とは縁遠いのですけど(笑)、ともかく良かったです。秋山和慶のタクトの下、広島響のアンサンブルも実にまとまっていましたし、曲のもつ良さを存分に味わうことができました。あれだけ北欧モノをきちんと音楽として提示できるオケって、なかなか稀有な存在ではないでしょうか。わざわざノルウェーまで行かなくても北欧気分が味わえましたよ。これからも「北欧モノといえば広響」という路線で突き進んで頂きたいものです。
【Program Note】
山下洋輔、燃えるピアノに新たに挑戦「ピアノ炎上2008」
Date: 2008年3月8日
Venue: 能登リゾートエリア増穂浦
演奏:山下洋輔(ピアノ)
このコンサートは、現在金沢21世紀美術館で開催中の「荒野のグラフィズム:粟津潔展」の関連企画として行われた。そんな主催者側の趣旨を汲むためには「先ず美術館で展示物を拝見し、それから現地へと出向く」というのが理想的な行程だ、というのは判ってはいたのだけど、不誠実にも私は美術館には立ち寄らず、代わりに千里浜の砂の上をクルマで走ったり、世界一長いベンチを見学したりと能登路を堪能しつつ現地に到着。
始まるまでの空き時間にベンチに腰を下ろす。澄んだ青空を眺めていたら、杖をついたおじいさんがやってきて「今日なんかコンサートでもあるんか?」と話しかけてきた。地元の方のようだ。「そうですよ」「結構人が集まっとるな。あんたはどっから来た?」「福井の方。今日はあったかいね」「もう春や」などと雑談を交わす。砂浜では子供達が貝を探しているのが見える。ここは桜貝が採れる名所らしい。
午後5時。開演予定時刻。銀色のほろが取られ、ピアノが姿を現す。砂浜の上に置かれたピアノ。ジェーン・カンピオン監督の映画「ピアノ・レッスン」を思い起こさせる。西の空から夕日を浴び、白い砂の上に伸びた長い影。それを周囲に張られた規制線の向こうから眺める。主催者からのアナウンスが拡声器から流される。ギャラリーは静かにその時を待つ。
しばらくして、消防服を着た人物がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。山下洋輔だ。それを察した観客から自然と拍手が起こる。ゆっくりと時間をかけて歩みを進めたピアニストが、ピアノの前に腰を下ろす。普段見につけない消防服がやはり慣れないのか、何度も裾に手を伸ばし、座り具合を確かめていた。
静まりかえる砂浜に波音が響く。やがてその波音に乗せるようにピアノの音が聞こえてきた。中低音による物悲しくメランコリックな旋律。しかしこの日の夕空のように美しい。「もう少し聴いていたい…」と目を閉じて耳を澄ませていたら、ため息とも喚声ともつかない声がギャラリーから漏れる。目をピアノにやるとすでに胴体から火の手が上がっていた。
波の音とピアノの音。それに「パチ」「パチ」という焚き木のような音と、「バンッ」という鈍い音が交じる。熱でネジが飛んで弦がはじけているのだろう。ピアノの音は中音部から低音部へと、徐々にホンキー・トンクに、そしてプリペアド・ピアノのようなメタリックな響きへと変化する。ピアニストは88個の鍵盤を舐め回すように、ときには肘打ちも駆使しながら演奏を続ける。ピアノが燃え続けているという状況で、その瞬間その瞬間でのピアノの「ベスト・サウンド」を探し、その音を拾い集めて必死で音楽を続けようとしているように映る。
ピアノが燃え始めてから5分以上経過。山下は最高音部の1オクターブ分で必死の打鍵を試みるが、もはやかすれ声のような音しか発することが出来ない。そんなピアノの「最期」を察したのだろうか、ピアニストが席を立つ。彼はピアノから離れると、規制線の手前あたりから燃えるピアノを眺める。それからまもなく響板がバタンと音を立てて崩れ落ちた。再び上がる喚声。
ピアニストは席を立ったが、パフォーマンスは続く。胴体からハラリ、ハラリと木の葉のような小片がいくつも落ちていく。ハンマーだろうか。ますます火は勢いを増し、白煙がこちらの方にも迫ってくる。炎を眺めていると、まるで左義長(どんと焼き)みたいにピアノの「霊」を送り出す儀式に立ち会ってるような気分にもなってくる。
(ここから先には、楽器を愛する方にとってショッキングな画像があります。読者の方は、その点にご留意の上でご覧下さい)
いや別に大上段から偉そうな物言いをしようというわけでなく、単にブログ見出しの常套句を使いたかっただけですので。
少し時間が出来たので、ようやく例のピョンヤン・ライヴを最初から最後まで聞くことができました。私が聞いたのはNYフィル公式サイトに3/14までの期間限定でうpされている音楽ファイルです。サイトにある「Listen now」をクリックすると聴くことができますが、高音質なので演奏の様子をはっきりと聞き取ることができます。私はとりあえず適当かつ何となく「新世界」の途中から聞いてみたのですが、数秒聞いて「これは最初から襟を正して聞かないといけない」と悟りました。
一つ前のエントリはCDの「マイベスト」でしたが、今度は「コンサート編」です。今年は例年以上に、コンサート会場に足を運んだような気がします。そんな中私が気づいたことが一つあります。それは「感動はチケット代の高さとは無関係」ということです。諭吉さん数枚分をはたいて海外オペラの来日公演に出かけて、それなりに本場の雰囲気は味わいましたし、「やっぱり一級品だなぁ。違うなぁ」と感心することしきりだったのですが、それと同時に、どうしても「チケット代5万円相当の感動」を求めてしまうんですよね。脳内がそんなムードに支配されてしまうともうダメ。眼前の舞台に没入できなくなっちゃって、些末な「アラ」探しを始めてしまうんですよ。そして「どうしてアソコでコケるんだマルシャリン」とか「エージェントスミスというか、全員タモリだよ」とか「ここでいきなりパペットショーの始まりですか」とか、そんなことばかり考えてしまうのです。いけませんねこれじゃ。ホント「お里が知れる」とはこの事です。こういう場所ではもっと鷹揚に構えないとね。
というわけで私的コンサートのベスト3を挙げてみます。
来年ナントで開催される「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭のプログラムが本日発表されました。詳細はこちらのpdfファイルをご覧くださるとして、いつも本家「熱狂の日」音楽祭のプログラムの何割かは、東京で開催される「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」(5/2~5/6)と確実にダブります。ですからナントの傾向を知ることは、東京のプログラムを予想する上でとても重要なのです。ということで私も目を皿のようにしてプログラムを見渡すわけです。
さて今回の最大の注目である「シューベルトにインスパイアされた作品」ですが…。「ピアノ五重奏曲『シャケ』」は見あたりませんし、「ピアノ五重奏曲『鮎』」もありません(苦笑)。プログラムには細川俊夫の「リート(ヴィオラとピアノのための)」、藤倉大の「フランツの伴奏」(“Accompanying Franz”)、そしてブルーノ・マントヴァーニの「バスクラリネット協奏曲」「8つの楽興の時」などの新作があります。それ以外にシューベルトと現代音楽とのコラボ作品の旧作として、ベリオの「レンダリング」、ツェンダー編の「冬の旅」、ブルーノ・マデルナが編曲した「軍隊行進曲」などが演奏されます。
メインとなるシューベルト作品では、交響曲「未完成」が7回、「グレート」は3回演奏されます。あと2台ピアノのための「幻想曲」(D940)は6回、「ピアノ三重奏曲第2番」(D929)は8回。そして「ます」はナントで13回(!)演奏されます。ナントは「ます」が大漁ですな(笑)
あとシューベルトといえば歌曲ですが、ナントの「熱狂の日」では「冬の旅」全曲はツェンダー編曲による管弦楽版のみ、「美しき水車小屋の娘」「白鳥の歌」は各1回のみ、しかも後者は全曲でなく抜粋です。沢山のコンサートがある中、歌手とピアノという編成のプログラムが10回、というのは多いか少ないかといえばやはりシューベルトとしては「少ない」と言わざるを得ません。「ルネ・マルタンは歌曲があまり好きでないらしい」という噂は本当だったのでしょうか。その一方で歌曲のピアノ・トランスクリプションが、やたらと演奏されます。
「目玉」となるのは未完のオラトリオ「ラザルス」(2/1)でしょうか。どのようなエディションが用いられるのかも含めて、気になるところです。そしてベートーヴェンの一周忌の日(1828年3月26日)に行われた「シューベルティアーデ」のプログラムをそのまま再現した演奏会もあります(1/31)。
シューベルトと同時代の作品も沢山演奏されます。ウェーバーにロッシーニ、それにメンデルスゾーン姉弟の曲もたくさん演奏されます。まあベートーヴェンのピアノ協奏曲4曲(第2番~第5番)や「ハンマークラヴィーア」が並んでいるのを見ると、「あれっ、今回のテーマは!?」と思わないでもないですけど。それからクラヲタ歴ン十年の私も見たことない名前の作曲家があったりします。「Bochsa」って誰ですか?ニコラ=シャルル・ボクサ(→Wikipedia)のことでしょうか。あとリンドペイントナー「木管五重奏のための協奏交響曲第1番」ってどんな曲でしょうかね。
ここで本家ナントの「熱狂の日」に登場する主な出演演奏家の名前を挙げてみます;

好天に誘われて、クルマで赤穂まで遠出してきました。目的は、赤穂城本丸跡などを会場にして行われた「赤穂国際音楽祭」です。
会場へと足を踏み入れようとしたら、まず飛び込んできたのがコレ↓
↑音楽監督の樫本大進に対する「熱烈歓迎」の横断幕です。彼のお母さんが赤穂出身ということもあって、以前から樫本さんと赤穂との関係は深く、これまでも樫本さんがヴァイオリンを寄贈したりしているそうです。この日も本番前のプレ・コンサートで、地元の子供たちが寄贈されたヴァイオリンを持って演奏していました。贈り主の樫本さんとの共演もありましたが、舞台袖では父兄たちと思しき皆様がビデオカメラを回していたりして、会場全体が「おけいこの発表会」みたいなムードになってました。まあ、なかなか微笑ましい光景でした。
今日は車を走らせ「武生国際音楽祭」(→公式サイト)のオープニングコンサートに行って参りました。例年同様今回も、音楽祭参加アーティストたちが次々に登場する「ガラ・コンサート」的な色彩の濃いイベントでした。まあ私はプログラムを知らないままフラリと会場に出かけたもので、シェーンベルクやシャリーノを聴かされてやや不意打ちを喰らった気分ですが(笑)、それでも演奏がどれも一級品でしたので、私としては大満足です。これだけの名手たち揃って、入場料が3000円なのですから安いものです。今日のコンサートはコスト・パフォーマンスの高さでいえば「熱狂の日」を超えたかもしれません。
いやもう、フルコースのディナーを堪能した気分でしたよ。「前菜」のベートーヴェンのソナタのあと、「1皿目」のシューマン「ソナタイ短調 作品105」(ヴァイオリンソナタ第1番の編曲版)、そして「2皿目」のプロコフィエフと、次々と見事なチェロの腕前を披露してくれるので、聞いているこちらは楽しくてしょうがなかったです。「デザート」といえるアンコールでも、彼の華やかなテクニック、そして表現力の「幅」をこれでもかと見せつけられて、けっこうお腹に来ました(やや違)。
破綻の無い確かな技巧のシューマンも良かったですが、この日はそれ以上にプロコフィエフ「チェロ・ソナタ」が素晴らしかったです。この曲は楽想が局面局面で目まぐるしく変わるせいか、どこかバタバタした印象をもってしまうのですが、彼は数ある難所を鮮やかに(そして余裕をもって)クリアしていくことで、おのずと曲の持つ「ストーリー性」というか、「流れ」といったものが、スムーズに表現されていたと思います。
そしてリサイタルでは、ミュラー=ショット自身も曲によってチェロの「音」を変えていたのが印象的でした。ベートーヴェンのときはやや軽め、そしてプロコフィエフでは低重心の朗々としたサウンドを響かせていました。そのあたりも含めて、彼のオールラウンドなチェリストとしての能力が遺憾なく発揮されたコンサートだったと思います。
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(Program Note)
1.Beethoven: Cello Sonata No.3 in A major Op.69
2.Schumann/Müller-Schott: Sonata in A minor Op.105
3.Prokofiev: Cello Sonata in C major Op.119
(Encore)
4.Ravel: Piece en orme de Habanera
5.Schumann: Adagio & Allegro Op.70 - Allegro
6.Schumann: Adagio & Allegro Op.70 - Adagio
Daniel Müller-Schott(Cello)
Robert Kulek(Piano)
Venue: Hyogo Performing Arts Center Grand Hall
Date: June 17, 2007
会場入りしてとりあえず驚いた。ステージ両サイドに備え付けられたスピーカーからは洋楽ロックが大音量で流されている。五色のスポットライトで照らされたステージには複数の打楽器のセットとピアノ、そしてマイクが所狭しと並ぶ。一瞬「今日ここだったな!?」とチケットを見直してしまうほど、ステージの雰囲気は地方の公民館のコンサートというより、都会のライヴハウスのそれに限りなく近かった。
「なんでPAを使うんだろう…」。しばらく事態が飲み込めないまま、一旦席を立ちロビーをうろつく。私の周囲にいるのは普段着のミセスたち、子供の手を引いた夫婦、ラフな服装の若者、そして手話で会話をする人々や補聴器をつけた人たちもいた。明らかに普段のコンサート会場とは違う客層の人たちが、この日の各務原市文化会館には多数詰め掛けていた。
昨日は「大阪国際フェスティバル」の一環として開催された、ウラディーミル・フェルツマンのリサイタルを聴きにフェスティバルホールに行ってきました。来年中に取り壊されるこの建物を見るのは今宵限りかもと思い、ケータイで写真を撮ってみました。
渡辺橋北詰から撮影。この写真だと判りづらいかもしれませんが、建物の表面には幾何学的な凹凸が施されていて、ややキュビスム建築っぽい外観です。
正面玄関。今年の「大阪国際フェスティバル」は、実に第49回目だということです。そういえばホールのロビーには過去のフェスティバルの舞台写真が所狭しと飾られていました。
リサイタルホール(小ホール)の壁面レリーフ。肥後橋の上流側にある歩行者専用橋から撮りました。
(曲目)
1.バッハ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタト長調 BWV1021
2.同:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番ホ長調 BWV1006
3.イザイ:子供の夢
4.同:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番イ短調
5.貴志康一:竹取物語
6.同:花見
7.グリーグ:ヴァイオリンソナタ第2番ト長調 Op.13
(演奏)
小栗まち絵(ヴァイオリン)児嶋一江(ピアノ)
(2007.3.31 神戸新聞松方ホール)
どんな芸事でも、その道を極めた方の「技」に接すると、思わず襟を正さずに居られなくなるものですが、私にとってこの日のコンサートがまさにそれでした。小栗先生の演奏を聴いているうちに、最初は猫背だった私の背筋が「ピンッ」と伸びていくのが自分でも判るんですよ。それほど小栗先生の演奏には、普段私が耳にするものと明らかに違うワンクラス上の「本格感」、そして「上質感」がありました。それにしても小さな提琴から、かくも豊かで広がりのある音を出せるとは…。一文字で言えば「巧」ということになるのでしょうが、まさに一芸に秀でた者でしか表現できない類の「究極の技」に触れたような気がします。
この日はどの楽曲も楽しめたのですが、白眉といえばバッハ、ということになるでしょう。ナチュラルで力みが無く、そして倍音成分も豊かなヴァイオリンの音はまさに「無為自然」を実感させるものでした。そのあとのイザイの作品では、より感情表現豊かなサウンドへと変化させることで、バッハとの音楽様式の違いを際立たせていました。休憩後貴志康一の小品に続いて演奏されたグリーグではもう少しノルウェーらしさを求めたいところでしたが、それでもホール一杯に鳴り響く豊潤なヴァイオリン・サウンドを経験しただけでも「今日はわざわざ会場まで足を運んで良かった」と、心から実感しつつ帰路につくことができました。
東京国際フォーラムの「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」公式サイトで、本家ナントの「熱狂の日」音楽祭の模様が見られます(参照)。私はタラフ・ドゥ・ハイドゥークスの出演したライブをウェブラジオで聴きましたが、クラシックの世界では絶対体験できないハイテンション、ハイスピードの音楽は圧巻でした。これにつられてか、この後オーケストラが演奏した「ルーマニア民俗舞曲」もいつになくノリノリというか、良い意味で「乱れて」いました。異なるジャンルの音楽家が出会うことで音楽的感性が刺激され、触発された感じがネット越しにも伝わってきました。この「異種格闘技」的企画、吉と出たようです(というかこーゆーのってルネ・マルちゃん好きそう…)。
しかしこのライブのレポートが「おジャポン」の公式サイトに載ったということは…、有楽町でもこのライブを見ることができるのでしょうか?来週木曜日(2/15)の発表が待たれるところです。
(曲目)
1.モーツァルト:ヴァイオリンソナタ第36番変ホ長調 K.380
2.ベートーヴェン:同第4番イ短調 Op.23
3.モーツァルト:同第28番ホ短調 K.304
4.ベートーヴェン:同第5番へ長調 Op.24「春」
(以下アンコール)
5.モーツァルト:同変ロ長調 K.378から ロンド
6.ベートーヴェン:同第8番ト長調から 第3楽章
7.モーツァルト:同24番ハ長調 K.296から 第2楽章
8.同:同24番ハ長調 K.296から 第1楽章
(演奏)
ジュリアーノ・カルミニョーラ(ヴァイオリン)矢野泰世(フォルテピアノ)
(2007.1.28 兵庫県立芸術文化センター・小ホール)
実は前半は正直眠くて眠くて…。仕事疲れもまだ残ってたし、自宅から会場までの長時間ドライブの影響もあったでしょう。でも私の眠気を吹き飛ばすほどのインパクトが前半の演奏に無かったのも確かです。音はすれども響かないヴァイオリン演奏を聞きながら「これがあのカルミニョーラなのか!?」と思いながらコックリ。「ホントなのか、どうなんだ!?」と自問自答しながらコックリ。「それにしてもカルミニョーラって誰かに顔が似てるな…、でも誰だろう…、名前が浮かばない…」といけない雑念が浮かんではコックリ、といった前半でした。
(曲目)
1.ウェーバー:「オベロン」序曲
2.モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番ハ長調から 第2、第3楽章
3.渡辺俊幸:ザッツ・モーツァルト!
4.アメイジング・グレイス
5.ビゼー:「カルメン」前奏曲
6.同:ハバネラ(「カルメン」より)
7.同:お前が投げたこの花は(同上)
8.同:間奏曲(同上)
9.同:何を恐れることがありましょう(同上)
10.同:闘牛士の歌(同上)
11.ラブ・ミー・テンダー
12.ピアソラ:真実との3分間
-------------[休憩]-------------
13.宮城道雄(池辺晋一郎編):春の海
14.フバイ:ヘイレ・カティ
15.弦哲也:鼓門で逢いましょう
16.ティルザー:私を野球に連れてって
17.宮川彬良:栄光(ひかり)の道
18.蛍の光
--[カウントダウン・セレモニー]--
19.上真行:一月一日
20.ヨハン・シュトラウス二世:シャンパンの歌(「こうもり」より)
21.プッチーニ:誰も寝てはならぬ(「トゥーランドット」より)
22.バーンスタイン:「キャンディード」序曲
23.ロウ:踊り明かそう(「マイ・フェア・レディ」より)
24.ロイド=ウェッバー:メモリー(「キャッツ」より)
25.ピアソラ:オブリビオン
26.レイ:ラ・マンチャの男
27.バーンスタイン:マリア~トゥナイト(「ウエストサイド物語」より)
(アンコール)
28.中村八大:上を向いて歩こう
29.宮川彬良:栄光(ひかり)の道
30.ヨハン:シュトラウス一世:ラデツキー行進曲
(演奏)
宮谷理香(ピアノ;2)yumi(フルート;3,4,8)ジョアナ・ゲドミンタイテ(ソプラノ;9,20,23,27)鳥木弥生(メゾソプラノ;6,16,20,24)志田雄啓(テノール;7,20,21,27)安藤常光(バリトン;10,17,20,26)ギドン・クレーメル(ヴァイオリン;11,12,25)石川県筝曲連盟(琴;13)ジェフリー・ペイン(トランペット;14)松井昌雄(唄;15)黒瀬恵(オルガン;18)
管弦楽:オーケストラ・アンサンブル金沢(特別大編成)
指揮:ルドヴィーク・モルロー、松井秀喜(28,29)
(2006.12.31-2007.1.1 石川県立音楽堂)
「小山実稚恵 ピアノ・トリオ 夢の響演」
(曲目)
1.ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調 Op.97「大公」
2.チャイコフスキー:同イ短調 Op.50「偉大なる芸術家の思い出に」
(演奏)
堀米ゆず子(ヴァイオリン)堤剛(チェロ)小山実稚恵(ピアノ)
(2006.12.3 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール)
この日は室内楽の醍醐味を十二分に堪能いたしました。「室内楽の醍醐味」といっても大きく分けて二種類あると思うのですけど、一つは奏者全員が完全に一つの意思を持って演奏することによって得られる快楽、そしてもう一つは各奏者の個性を存分に味わう快楽。この日は2つの「快楽」を同時に味わうことができました。
(演目)
ハイドン:歌劇「月の世界」
(配役)
ブオナフェーデ:フルヴィオ・ベッティーニ
エックリティコ:セルジュ・グビウ
フラミニア:森麻季
クラリーチェ:野々下由香里
リゼッタ:穴澤ゆう子
エルネスト:彌勒忠史
チェッコ:水船桂太郎
(演奏)
寺神戸亮指揮レ・ボレアード
(演出)三浦安浩(※)
(2006.12.2 北とぴあ さくらホール)
先日「北とぴあ」で上演されたハイドンの歌劇「月の世界」、私はものすんごく期待して上京したのですよ。珍しいハイドンのオペラ、しかも荒唐無稽な筋立てのドタバタ喜劇、そして演奏するのは世評の高い「レ・ボレアード」、歌手陣も今エイベックスが最も強力にプッシュしてる森麻季と、バッハ・コレギウム・ジャパンでお馴染みの野々下由香里が登場、と魅力一杯のプロダクション。「私をどれだけ笑わせてくれるんだろう…」と期待に胸を膨らませて来たんですけど…。正直関西人には「笑い」が足りませんでした…。まあ確かに笑いましたよ。でも笑ったのはブオナフェーデが「カワイイ!」と日本語で叫んだりカンフーの真似事をやったりしてる時と、各幕の冒頭でスクリーンに映し出されるアニメーションのときだけでした。私はオペラの中で歌手達が歌っているときに、もっと「音楽」で笑いたかったのです。これはどこに起因するのでしょうか?ハイドンの音楽がロッシーニやドニゼッティの「オペラ・ブッファ」に比べて大人しかったからか?演奏がシリアス過ぎたからか?それとも演出に何か問題が?
(演奏)
ユリア・グライダー(ソプラノ)
ベルナルダ・フィンク(アルト)
ヴェルナー・ギューラー(テノール)
ルーベン・ドローレ(バス=バリトン)
ニコラウス・アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
アーノルド・シェーンベルク合唱団
(2006.11.18 京都コンサートホール・大ホール)
3時間の長丁場だったので、後半になるとお尻の辺りが少し痛くなりましたが(笑)、「生アーノンクール」、良かったです。
(曲目)
1.ブラームス:大学祝典序曲Op.80
2.エルガー:チェロ協奏曲ホ短調Op.85
3.(アンコール)ヴァスクス:ドルチッシモ
4.ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77
5.(アンコール)同:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調Op.102から 第3楽章
(演奏)
ソル・ガベッタ(チェロ,2,3,5)パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン4,5)金聖響指揮関西フィルハーモニー管弦楽団(1,2,4,5)
(2006.11.12 いずみホール)
「演奏会を聴きに行った」のではない。「ライブを見に行った」のだ。そう言い切ってしまいたくなるようなコンサートでした。
(曲目)
1.プント:ホルン協奏曲第5番ヘ長調
2.モーツァルト:交響曲第32番ト長調 K.318
3.同:断章変ホ長調 K.370b
4.レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲
5.ロータ:カステル・デル・モンテ(ホルンとオーケストラのためのバラード)(1974)
6.モーツァルト:ロンド変ホ長調 K.371
7.ブラームス(ボク編):ホルン三重奏曲変ホ長調 Op.40(ホルン、ヴァイオリンと管弦楽のための編曲版)
(演奏)
ラデク・バボラーク(ホルン;1,3,5-7)豊嶋泰嗣(ヴァイオリン;7)広上淳一指揮新日本フィルハーモニー交響楽団
(2006.10.29 すみだトリフォニーホール)
今回の上京のもう一つのお目当ては、チェコ出身で現在ベルリン・フィルの首席ホルン奏者を務めるバボラークが協奏作品を5曲も披露するという、滅多とないプログラミングのコンサートでした。彼の演奏はこれまでもオーケストラの一員として、またソリストとしてCD、ラジオ、そしてテレビなどのメディアを通じて何度か耳にしたことがあるので、アーティストとしておおよそイメージは掴んでいたつもりでした。しかしこれほどまでホルンの「音」そのもので酔わせてくれるとは思いませんでした。ホントに彼の出す音全てが、今まで聴いたことのないような高品位のサウンドだったもので…。「ホルンでこんな柔らかくてスムーズな音が出せるんだぁ」「なんでこんなに音がクリアで粒が揃ってるんだろう…」と、演奏会のあいだずっと聴き惚れていました。
(配役)
イドメネオ:ジョン・トレレーヴェン
イダマンテ:藤村実穂子
イーリア:中村恵理
エレットラ:エミリー・マギー
アルバーチェ:経種廉彦
大司祭:水口聡
声:峰茂樹
(管弦楽と合唱)
ダン・エッティンガー指揮東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団(合唱指揮;三澤洋史)
(演出)グリシャ・アサガロフ
(2006.10.28 新国立劇場オペラハウス)
すでにネットの各所で話題となっていたこのプロダクションですが、私も大満足です。無理して夜行バスで上京した甲斐がありました。
まずはオーケストラから。予想以上に明確な自己主張を持った音楽がピットから流れてきたので驚きました。オペラにしては随分細かいところまで音がコントロールされていて、しかもそれが三時間半もの長丁場のあいだ持続していました。これは指揮者のエッティンガーの指示が隅々まで行き届いていたからでしょう。特にレシタティーボの弱音部でのデリケートな表現が印象的で、オペラをよりシリアスで感銘度の高いものにしていました。
歌手たちもおしなべて良かったです。何が良かったかというと、キャスト間での「力の差」をあまり感じなかったところです。オペラの場合主要キャストに一人でも魅力に欠ける歌手がいると、聴き手は劇に入り込めなくなり興ざめしてしまいます。その点今回のキャストでは一番心配していたイーリア役の中村恵理が冒頭から(鎖に繋がれながら)堂々とした歌唱を聞かせていました。イーリアは各幕でいつも最初にアリアを歌うので、ある意味「大役」ですが、第2幕のイドメネオへの思慕、第3幕での迷いと苦悩の表現も適切で、劇への興味を見事に繋いでいました。エレットラはこの役の聴かせどころである最後のアリアでいい具合にタンカを切っていました(笑)し、イドメネオは神託に怯える王を人間的に演じていました。そしてイダマンテ役の藤村実穂子はまさに期待通りの活躍でした。彼女を生で聴くのは初めてですが、声にボリュームだけでなく「深さ」があります。バイロイトで何年も歌い続けているだけのことはありますね。あとホール内を響かせるパワフルさと、繊細な感情表現(第2幕の「海は穏やか、海路の日和」の素晴らしさ!)を併せ持ったコーラスも良かったです。不満が残るとすればカーテンコールの際の合唱指揮者への拍手が少なめだったことでしょうか(笑)。
演出は地中海を連想させる青を基調とした美しいものでしたが、あまり演劇的要素をこのオペラに盛り込とうとはしていなかったようです。まあ歌手たちの側からすると、この演出はステージ上での動きが少ない分、きっと歌いやすかったと思います。だからこそ音楽的水準の高い演奏が聴けたのかもしれませんね。
(曲目)
1.コッコネン:風景
2.グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 Op.16
3.(アンコール)グリーグ:「叙情小品集・第3集」Op.43より 第6曲「春に寄す」
4.シベリウス:交響曲第2番ニ長調 Op.43
5.(アンコール)同:劇音楽「クオレマ」より 悲しきワルツ Op.44-1
6.(同)同:交響詩「フィンランディア」 Op.26
(演奏)
ユホ・ポホヨネン(ピアノ:2,3)オスモ・ヴァンスカ指揮ラハティ交響楽団(1,2,4-6)
(2006.10.9 兵庫県立芸術文化センター 大ホール)
ヴァンスカとラハティ響という、世評の高いこのコンビを「ライブでいつか聴きたい…」と予てから思ってたのですが、これまでの来日公演はスケジュールの都合がどうしてもつかなくて断念してばかりでした。今回ようやく念願が叶ったわけですが、ヴァンスカが音楽監督のポストから離れる前に聴いておいて本当に良かったです。もしかしたらこんな演奏、今後一生聴けないかもしれませんから。彼らを聴くためだけにフィンランドまで飛んでいく人がいる理由が分かったような気がします。
(曲目)
1.ショスタコーヴィチ:交響詩「十月革命」 Op.131
2.同:チェロ協奏曲第1番 Op.107
3.(アンコール)ヴァスクス:ドルチッシモ
4.同:交響曲第15番 Op.141
(演奏)
ソル・ガベッタ(チェロ:2,3)広上淳一指揮名古屋フィルハーモニー管弦楽団(1,2,4)
(2006.10.7 愛知県芸術劇場コンサートホール 「創立40周年記念シリーズ 第329回定期演奏会」)
広上淳一のショスタコーヴィチ演奏は、以前ラジオで「交響曲第5番」(たしかオケは東京フィルだったか…)を聴いた際に、その明晰な解釈と充実感のあるサウンドがすごく印象に残っていました。最近益々世界的な活躍を見せる広上さんを、日本で(しかも比較的安価で)聴ける機会は今後そうそう無いかもしれないと思い、悪天候を突いてオール・ショスタコーヴィチ・プログラム(これぞ「タコ三連発」!?)を聴くため遠路はるばる名古屋へと出かけました。私が座ったのはホールの3階席で、椅子に座ったとき正直「こりゃちゃんとした音が耳に届くかどうか…」と心配になりましたが、1曲目の冒頭部から充実した低弦の響きが聞き取れたので、「あっ、ちゃんとショスタコーヴィチの音がする…」と驚かされました。ここで私が「スピーカーはどこだ?」と辺りをきょろきょろしたのは内緒ですが…。
ともあれ「十月革命」での男性的で筋肉質な、実にいい具合に引き締まったオーケストラサウンドは聴いていて実に爽快でした。対位法的な音の処理も的確で、フレージングも活舌良く、実に小気味よく音楽が進行します。まさに「ショスタコーヴィチ・サウンド」と呼ぶに相応しい音楽が目の前で展開されていました。
2曲目でソリストのソル・ガベッタ(→公式サイト)がマスタード色の鮮やかなドレスで登場しました。楽器と体が当たるところに当てるチェロパッド(いわゆる「胸当て」)もマスタード色で衣装とお揃いです(笑)。妙齢の女性と聞いていましたが、私の席からは背中(より具体的には「背中の開いたドレスから覗く左右の肩甲骨」)しか見えません(苦笑)。しかしここで評価すべきは音楽です。「チェロ協奏曲第1番」はチェロが得意とする中音域の旋律が全くといっていいほど無い作品で、チェリストが楽譜をなぞるだけでは音楽にならない類の難曲ですが、ガベッタ嬢はしっかりと曲の特性を捉えて、甘美なところを排した「超辛口」の作品をストレートに、かつ見事に表現していました。技術的にも破綻が殆ど無く、テクニック面でも最後まで安心して聴けました。パンフレットによるとガベッタ嬢、ハンス・アイスラー音楽院であのゲリンガス教授に師事しているとの事。これは注目株ですね。
(曲目)
1.ブラームス:「F・A・Eソナタ」から スケルツォ
2.同:ヴァイオリンソナタ第1番ト長調 Op.78「雨の歌」
3.サン=サーンス:ハバネラ Op.83
4.同:序奏とロンド・カプリチオーソ Op.28
5.ガーシュイン:「ポーギーとベス」より 「Bess, you is my woman now」「It ain't necessarily so」
6.ラヴェル:ツィガーヌ
7.(アンコール)マスネ:タイスの瞑想曲
(演奏)
ニコラ・ベネデッティ(ヴァイオリン)アリソン・ラインド(ピアノ)
(2006.9.30、兵庫県立芸術文化センター 小ホール)
これまで当ダイアリーで何度も取り上げているニコラ・ベネデッティですが、話題にする以上は一度実際に演奏会を聴かんとイカンでしょう!というわけで西宮北口まで足を運んでみました。実は私、県立芸術文化センターは初体験でして、目に付くものがどれも新鮮で「やっぱり新しいホールっていいなぁ」とお上りさんよろしくキョロキョロしていました。しかしエントランスからロビーにかけての雰囲気って、ホールというより寧ろ駅のコンコースか飛行場のターミナルに似てると思いませんか?チケットカウンターも「みどりの窓口」っぽいレイアウトですし。でも建物の構造はシンプルで、大・中・小と3つあるホールへの導線も判りやすかったです。当日は3ホール全てで公演を開催していたこともあり、ロビー内は老若男女で賑っていました。やはりコンサートホールに活気があるというのは良いですね。
さて小ホールで行われたリサイタルでは、前半のブラームスよりも後半のプログラムの方がニコラ嬢の良さが出ていたと思います。特にサン=サーンスの2曲の演奏には自信があるのでしょうか、数々の難所にも臆することなくチャレンジし、見事に最後まで弾ききっていました。また彼女のヴァイオリンの音質について、私は以前「フレッシュで瑞々しい音色」と記しましたが、ライブでは「瑞々しさ」以上に、高音域の輝かしさが印象的でした。特にフォルテやフォルテシモの箇所になると、ホール中が彼女の華やかなヴァイオリンの音で埋め尽くされたのでは、と思うほど音に存在感がありました。ニコラ嬢は容姿(ちなみに当日はムター張りの黒のロングドレスで登場)だけでなく音楽的にも「華」がある演奏家のようです。しかし一方で弱音部での繊細な表現には課題が残ります。ブラームスのソナタの緩徐楽章はその点で物足りなさを感じました。しかしその前の第1楽章には「私のヴァイオリンを聴いて!」と主張しているかのような自信と勢いがあり、そんな(良い意味での)「若さ」が好ましく感じられました。会場の観客も彼女の勢いに押されたのか、第1楽章終了後に(室内楽では珍しいことに)客席から拍手が起こりました。そのとき演奏中ずっと硬い表情を崩さなかったニコラ嬢が一瞬微笑んだことも併せて、ライブならではの印象的なワンシーンでした。
(参考記事)
「イギリス人ヴァイオリニストが破格の契約でデビュー」(当ダイアリー、2005.1.17付のエントリ)
「ニコラ・ベネデッティのCDはDGからリリース」(同、2005.1.20付のエントリ)
「ベネデッティの最新インタビュー」(同、2005.1.28付のエントリ)
<曲目>
バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2巻 BWV870~893 <全曲>
(その前後に小品が1曲づつ演奏された)
<演奏>大井浩明(クラヴィコード)
(2006.9.3 芦屋・山村サロン)
去年行われた「平均律クラヴィーア曲集第1巻」演奏会の続編です。去年はホールにかすかに響くクラヴィコードを聴衆が息を潜めて聞き入っていました。今回は前回よりかなり小さいスペースでのコンサートでしたが、それでも一音一音を聞き逃すまいと静かに耳を傾ける観客たちは、会場内に格別の緊張感を醸し出していました。
それにしても大井さんのクラヴィコード演奏は去年と較べてより優しく、より伸びやかで、そしてより繊細なものになっていました。慎重な運指が生み出すスムーズなフレージングと、流れるように滑らかな旋律の表現は、大バッハのバロック音楽的な側面をより濃く映し出していたと思います。そして今回は前回より楽器に近い位置で聴けたことも相まって、クラヴィコードの持つ繊細な「響き」を十分に感じることができました。アルペジオの箇所では、楽音の中からかすかに聞こえてくる様々な倍音が混ざり合って、まるで楽器から色んな音がふんわりと立ち上がって漂っているかのような、何ともいえない趣のあるサウンドを生み出していました。
もっとも幾つかの楽曲では「スケール感をクラヴィコードで表現するのはさすがにキツイな」と感じたのも事実ですが、この企画自体「クラヴィコードでどこまでやれるか」という実験的意味合いが強いものなので、今回は「その心意気や良し」とすべきでしょう。
(写真)今回のライブで使用されたクラヴィコード(ジャン・トゥルネイ製作)。
(参考サイト)
●【演奏会レポ】大井浩明 クラヴィコードで「平均律」 (当ダイアリーの昨年3月12日のエントリ)
<曲目>
1.雅楽「調子」
2.タレルガ:アンハンブラの思い出
3.モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタニ長調 K.7
4.同:幻想曲ニ短調 K.397
5.同:「ああ、ママに言うわ」による12の変奏曲ハ長調(キラキラ星変奏曲)K.265
6.細川俊夫:光に満ちた息のように
7.同:アルトフルート独奏のための「黒田節」
8.バッハ:シャコンヌ
9.(アンコール)ヘンデル(細川俊夫編):私を泣かせてください(涙のアリア)
<演奏>
宮田まゆみ(笙)(1,6)ティモ・コルホネン(ギター:2)千々岩英一(ヴァイオリン)(3)山本純子(3)伊藤恵(5)(ピアノ)吉野直子(ハープ:4)ロバート・エイトケン(アルトフルート)(6)今井信子(8,9)
(2006.9.2 越前市文化センター 大ホール)
ふと思い立って、武生まで車を飛ばして演奏会に出かけてみました。「確かこの辺だったかな…」とホールの前までやってきて真っ先に目に飛び込んできたのは、写真の観覧車です(笑)。確かにホールの横は公園だったのですが、遊園地があるわけでもないのにドーンとそびえ立ってるので「どうして?ここに?」という感じです。
で開演時間より結構早めに会場に着いたので「喫茶店で時間をつぶそうかな…」と辺りを見回したのですが、ホール内のカフェはどうやら音楽祭関係のイベントに使用されるみたいで、部外者が中に入ることができません。会場の周辺も見渡してみましたが、道路を挟んだ向かい側には「うどん」の看板を掛けたお店が…。昼食は自宅でナポリタンのスパゲティを作って食べたので、正直麺類の連荘はキツい…。そもそも武生といえば「越前そば」なのに何故「うどん」…。まあとりあえずコーヒーが飲みたかったので会場近くのローソンでダイドーブレンドコーヒー買って一服した後、会場入口が開くまで敷地内のベンチに座って本を読んでました。
と若干茶化して書いてしまいましたが、演奏会自体は面白かったですよ。だって次々と登場する世界的名手たちが皆、短い登場時間のなかで着実に聴き手の心に残る好演奏を繰り広げてくれたのですから。特に吉野直子さんのモーツァルトは、ハープという楽器の特性を考えると演奏するのは結構至難の技と思われるクロマティック(半音階的)な作品だったのですが、楽器のハンデを感じさせない自然なフレージングが実に素晴らしかったです。このコンサートでMCを担当していた細川俊夫氏も「奇跡的な演奏だ」とコメントしていました。エイトケンの「黒田節」も、最初は「なんだこの宴会芸みたいな曲は!」(失礼!)と思ったのですが、後半部に技巧を凝らした箇所が用意されていて、そこで彼のテクニックの確かさを味わうことができました。今井さんは「シャコンヌ」の堂に入った演奏も良かったのですが、個人的にはアンコールで演奏されたヘンデルのアリアの方が印象に残りました。この曲は今回が「世界初演」との事ですが、これはアンコールピースとして実に「使える」楽曲だと思います。コルホネンは「カエデ製」の風変わりなギターを持参していました。胴が普通のギターよりも小さくて、音も小さかったのですが、繊細で愛すべき音色でした。

今年の「熱狂の日」音楽祭は去年のようなチケット売り場前の長蛇の列こそ見られなかったものの、展示ホールや屋台村前は昨年と変わらない賑わいを見せていました。所狭しと軒を連ねる屋台の前をロココ風(?)の衣装を身にまとったスタッフが行きかう様は、まさに巨大テーマパークさながらの非日常的な異空間です。この場所に居るあいだは日常の煩わしさから開放されて音楽に没頭できる、そんな思いで東京国際フォーラムに連日通った人も少なからず居るのではないでしょうか。ともあれ去年の成功の勢いをそのまま持続できたのは良いことでしたし、事故も無く無事終了し、スタッフの方々は今頃胸をなでおろしているでしょう。「熱狂の日」音楽祭関係者の皆様にはこの場をお借りして「お疲れ様でした」と申し上げます。
あぁ~っ、何ということでしょう!速い!速すぎる!たった今、モーツァルトの「ピアノ協奏曲第21番」の演奏時間の、世界最短記録が出ました!ロシアのビック・ベアー、ボリス・ベレゾフスキーがモーツァルトをノックアウトしました!記録は約23分(推定)!この記録は今後破られることはないでしょう!
ベレゾフスキー!ベレゾフスキー!!ベレゾフスキ~~~!!!
昨日の演奏会で聴いたイェルジ・セムコフは噂通りすばらしい指揮者でした。彼の指揮動作はなかなか特徴的で、弧を描くように手を動かす一般的な指揮者の動作とはちょっと違って、彼のは針がピクピク動いてるみたいに見えるんです。30代、40代以上の方なら解っていただけるかもしれませんが、オーディオのパワーアンプのアナログメーターみたいに棒が動くんです。彼は長めの指揮棒を持ってるので余計そう見えるのかもしれません。
しかしそんな棒の動きに合わせて音は見事に造形され、変化していきます。モーツァルトの「交響曲第29番」はマーラーやブルックナーの交響曲と比べるとずっとシンプルな構造の作品ですが、セムコフの演奏は随所に芸の細かさを聴かせてくれました。例えば第1楽章で突然ヴィオラだけが音を出す箇所があるのですが、そこでのヴィオラの音を一瞬強調させたかと思うとすぐに音を弱め、「あれっ」と思うと他の弦楽器が音楽に加わります。そのあたりに聴衆を一瞬トリックに掛けたかのような手際のよさを見せました。この箇所以外にも普段なら聞き流してしまうようなところにも配慮した演奏全体に指揮者の意思を感じました。
(参考)
Mozart. Piano Concerto No.9 in E flat major K.271 "Jeunehomme" / Symphony No.29 in A major K.201 ; Nicolai Lugansky(Piano) Jerzy Semkov & Sinfonia Varsovia. Tokyo International Forum. Hall A. (May 5, 2006)

今日会場に着いて何気なく地下1階の展示ホールに来たらピアノオタクの私にサプライズが待っていました。何とタカギクラヴィア所有の「あの」ニューヨークスタインウェイ(写真)の演奏会があるじぁあないですか!演奏するのはこの歴史的スタインウェイを弾いたCD(→参照:当ダイアリーの去年2月1日のエントリ)も出している江口玲さんです。これが無料(ただし「熱狂の日」音楽祭のチケット半券が必要)で聴けるんだから、ルネ・マルタン超太っ腹(笑)。これはもう聴くしかないでしょ。コンサートは12時半からと午後8時からの二回、曲目はメヌエットK.1、ピアノソナタハ長調K.330など。「熱狂の日」にお立ち寄りの際は、ホロヴィッツも愛したピアノを聴きにいらしては如何でしょうか。
(追記)12時半からのコンサートを聴きました。ニューヨークスタインウェイ独特の、弱音の柔らかさが印象に残りました。しかしスタインウェイが鳴っているあいだ、会場は実に静かでしたよ。ブーズの方から聴こえるビニール袋の音や空調の音が気になるほどでしたから。こんどはもっと良い条件で聞いてみたいですね。
1.シューベルト/ロンドロ短調 D895(作品70)
2.フランク/ヴァイオリンソナタイ長調
3.プロコフィエフ/同第1番 作品80
4.チャイコフスキー/ワルツ・スケルツォハ長調 作品34
5.(アンコール)モンティ/チャールダッシュ
演奏:木嶋真優(ヴァイオリン)江口玲(ピアノ)
(会場:神戸新聞松方ホール 2005年9月4日)
先日聴いたショスタコーヴィチの協奏曲が素晴らしかったので、9月4日の神戸での江口玲とのデュオ・リサイタルにも出かけてみました。プログラムはシューベルト、プロコフィエフ、フランクという組合せですが、演奏順は前半にフランク、そしてプロコフィエフを後半のメインに置いていました。これを見て私は「彼女はプロコフィエフの方が自信あるのかな」と思ったのですが、予想通りプロコフィエフの方が確信に満ちた演奏でした。決してフランクがダメ、というわけではなく、むしろ素晴らしい部類に入る演奏だったことは間違いないのですが、現在の木嶋さんにはプロコフィエフの方が合ってるかな、と感じた次第です。