木嶋真優の新譜を聴く
ヴァイオリン奏者、木嶋真優の実質的なソロ・デビュー・アルバムが「小品集」になると聞いたとき、私はいささか意外に感じたといいますか、拍子抜けしたといいますか、ともかく「彼女の実力にしては、これまた随分と控えめな…」というのが正直な感想でした。
ヴァイオリン奏者、木嶋真優の実質的なソロ・デビュー・アルバムが「小品集」になると聞いたとき、私はいささか意外に感じたといいますか、拍子抜けしたといいますか、ともかく「彼女の実力にしては、これまた随分と控えめな…」というのが正直な感想でした。
先日YouTubeで動画を探してたら、こんなのを見つけました。
「セミラーミデ」第2幕、アルサーチェのアリア「かくも酷い災いのさなか」なのですけど、いやこれは衝撃映像でした。スキンヘッドで顎に髭を蓄えた男が、容貌に似合わず超高音のコロラトゥーラを巧みに操るわけですから…。個人的にアルサーチェといえば、かつてMETでこの役を歌ったマリリン・ホーンのイメージが強いわけで、それが脳に染み付いているからこそ、男装した女性歌手(いわゆる「ズボン役」)でなく、男が(しかもスキンヘッドでヒゲ面の男が)この難アリアをいとも容易にクリアしていく様に、吃驚仰天したわけです。
読者の皆様おはようございます。おかかです。今ホテルに居ます。窓からは新幹線が見えます。さっきまでネットラジオでショーソンのコンセール聞いてました。それにしてもこの曲、いつ聞いても、どこで聞いてもイイですね。
さて2007年もあと1日です。大晦日です。もう今年はCDを買わないと思います(たぶん…)。ということで例年やってる「マイ・ベスト10」のご紹介です。一応「順不同」ですので、よろしくお願いします。
アマゾンから荷物を受け取るやいなや、荒々しくカッターナイフで切り裂き、すばやくDVDパッケージを開封してディスクをトレイに載せ、「PLAY」ボタンを押したあと一気に最後まで食い入るように見てしまいました。カラヤンのライヴDVD「ライヴ・イン・大阪 1984」(→amazon.co.jp)は素晴らしかった!ライヴでは「ドン・ファン」→「モーツァルト」→「ローマの松」だった曲順が、どういうわけかDVDでは「モーツァルト」→「ドン・ファン」→「ローマの松」となっていたり、朝日放送(ABC)のオンエア時よりも緑がかった色調で映像に「輝き」や「明るさ」に欠けるところがあったりとか、気になるところは散見されますが、そんなことが瑣末なことに思えるほど、1984年当時のベルリン・フィルのサウンドは輝きにあふれ、音楽は躍動しています。「ドン・ファン」のダイナミズム、「アッピア街道の松」での神々しいまでのサウンドは、今改めて聴いても引き込まれます。そしてモーツァルト「ディヴェルティメント変ロ長調」(K287)で、ヴァイオリンの旋律を思い切りレガートで響かせるあたりでは、「あっ、これがあのカラヤン・レガートだな」と思ったりして。これが生前のカラヤンの好悪を分かつポイントだったんですけどね。でも今振り返ると、あの「厚化粧」気味の濃厚な表現も却って懐かしく感じられたりもします。ともかくこれはカラヤンの演奏様式を知る上で、格好の映像作品です。あぁ、やっぱいいわ。もう一度見直そう。
慌ただしい師走の最中、仕事の合間に好んで聞いている音盤などをご紹介します。
以前当ブログで触れたスウェーデンのアカペラ・ヴォーカル・グループ「ザ・リアル・グループ」と北欧合唱界の重鎮、エリック・エリクソンとのコラボレーション・アルバム「スタムニング」ですが、先月日本盤(→amazon.co.jp)がリリースされました。解説文を音楽評論家の諸石幸生氏が担当しているというのは、クラシック音楽ファン向けの配慮でしょうか。
このアルバムに収められているアルヴェーン、ペッテション=ベリエル、ヴィカンデルらの合唱曲は、北欧の合唱団が好んで取り上げているものです。ザ・リアル・グループの5人による演奏は、大人数のコーラスと比べ迫力こそ欠けるものの、繊細かつ適切な音楽表現は好感を抱かせます。これこそエリクソンの指導の賜物ではないでしょうか。単なる「クロスオーバー・アルバム」として片付けることのできない佳作です。
アリーヌ・ヴァン・バレンツェン(Aline van Barentsen:1897-1981)はCDのブックレットによると「ジャック・ルヴィエ、シプリアン・カツァリスの師としてその名を知られている程度」とありますが、私はその事実すら知りませんでした。ともかく私は彼女の華麗かつ完璧なテクニックと、その奥に潜む「典雅」な音楽性に魅了されました。かつてこの世に、このようなベートーヴェンを演奏する人がいたこと、そしてそれがレコードに記録されていたことに感謝せねばならない。そう心の底から思える、そんなアルバムです(→@TOWER.JP)。
次にご紹介するのは、CDではありません。フィルハーモニア管弦楽団のサイト内にある音楽配信サービス「Philharmonia Orchestra Online Shop」にあったメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」のライヴ音源(mp3 320kbps:有料)です。ソリストはロシア出身の若手アリーナ・イブラギモヴァ、管弦楽の指揮はサー・チャールズ・マッケラスです。イブラギモヴァの瑞々しくて実に健康的なヴァイオリンの響きも素晴らしいですが、バックのオケも実に安定した演奏ぶりです。合奏部の分厚い低音から弦のピツィカート、そして木管のハーモニーに至るまで、全く以て手抜き無しです。さすがマッケラス、いい仕事してます。
最後はこの季節にふさわしく、クリスマス・アルバムです。フランスはヴェズレーにあるサント・マリー・マドレーヌ大聖堂(→Wikipedia)のパイプオルガンが奏でるノエルやクリスマス・キャロルを収録した「もうひとつのクリスマス」です。パイプオルガンを演奏するダミアン原田修道士は、聖チェチーリア音楽院でオルガンを学んだ後、日本でTV・ラジオ番組の音楽などを書いていましたが、1990年代にフランスに渡り、異国の地で修道士となられた方です。
原田修道士のオルガン演奏には、教会の窓から差す陽光のような暖かみを感じます。それが心にじんわりと染み渡ります。もしこれを実際にヴェズレーのお御堂で聞いたとしたら、確実に私は泣いてしまうでしょう。
このアルバムはアマゾンやタワレコでも扱っているようですが、私は女子パウロ会オンライン・ショップ「ショップ・パウリーネ」で入手しました。
ラハティ交響楽団との共演アルバムを聞いて以来、私はすっかりフィンランドのアカペラ・ヴォーカル・グループ「ラヤトン」(Rajaton)にハマっちゃってるのですが、そんなラヤトンの最新アルバムが出ました。タイトルは「Maa」。フィンランド語で「大地」という意味だそうです。
全編歌詞がフィンランド語というこのアルバム、私は一通り聞きとおした後「ああ、いつものラヤトンだな」と思いました。堅実なテクニックをそれとなく披露しつつ、ポップで楽しいアルバムに仕上がってるな、と。そう思いつつ何気なく歌詞を見ようとブックレットに目を落とした私は「えっ!」と驚きました。
エルガー生誕150周年を記念して、ユニヴァーサルから廉価版シリーズがリリースされました。私もCD店で何枚か買おうとしたのですが、チョン・キョンファの「ヴァイオリン協奏曲」とマッケラスの「交響曲第1番」は店頭在庫を切らしているとの事でした。一枚あたり1200円という値ごろ感もあり、既に結構な枚数が売れてるようです。
この日は結局マッケラスの「交響曲第2番」(UCCD-3899)と、「歴史的録音集」(UCCD-3908:写真)の2枚をゲットしました。前者は演奏は悪くないのですが、もうちょっとワンランク上の「風格」のようなものが欲しいな、と思いました(「今」のマッケラスなら、その辺りはクリアしてくれそうなのですけどね)。一方後者は英デッカにとって最良の時期(と私が勝手に思ってる)、1950年代から60年代前半にかけてのレコーディングを寄せ集めた「オムニバス」なのですが、これが結構馬鹿にできない面白さでした。
今日棚から取り出したのは、アマデウスSQの3人の奏者たち、すなわちノーバート・ブレイニンのヴァイオリン、ペーター・シドロフのヴィオラ、マーティン・ロヴェットのチェロに、ピアニストとしてマレイ・ペライアが加わってブラームス「ピアノ四重奏曲第1番」(作品25)を演奏・録音したCD(CBS Masterworks, MK 42361→amazon.co.jp)です。ブラームスはピアノ四重奏曲を3曲書いていますが、この4人が「作品25」以外の2曲を録音する機会のないまま、ヴィオラのシドロフが死去してしまいます。のちにCBSはアイザック・スターン、ハイメ・ラレード、ヨー・ヨー・マ、エマニュエル・アックスという豪華なクワルテットでピアノ四重奏曲の全曲録音を行いましたが、「作品25」に限っていえば、シンフォニックでゴージャスなスターンらの演奏よりも、室内楽的で落ち着きのあるアマデウス&ペライアの演奏のほうが私の好みです。
次はマリア·カラスの「椿姫」です。
カラスが1958年3月、リスボンはサン·カルロ劇場で歌った「椿姫」ライヴ録音は、オペラ·ファンの間で評価の高い名演として知られています。
このときのライヴ録音は、これまで長らくEMIレーベルからリリースされていたのですが、新しい原盤からリマスターしたCDが英Pearlレーベルからリリース(→HMV.co.jp)されたことを「クラシックジャーナル」の最新号で知りました。同誌で山崎浩太郎氏が「EMI盤よりもはるかに音がいい」と書いていたので「どんだけやろ?」と思って購入してみたのですが、実際に聞いてみて「どんだけ~?」と言いたくなりました(笑)。ほんとに全然音が違います。EMI盤と比較視聴するのも時間の無駄に感じられるほど、その差は歴然としています。これだけ良い状態の録音が残されていたのなら、「どうして最初からこのテープでレコードを出してくれなかったのだろう」とEMIに強い疑念を抱いてしまいます。ともあれ全盛期と言われる「50年代のカラス」が、良い録音状態で聞けるようになったのは良いことです。そういえば最近、彼女の「ルチア」のMETライヴも海外ウェブラジオでオンエアされ、そちらも随分といい音でした。もしかしたらカラヤン指揮のベルリンでの1955年ライヴの方も、放送局に眠るマスターテープは良い音なのかもしれませんね。
さて、これだけ高音質で聞くと、カラスだけでなく、他のキャストの歌唱にもつい聞きほれてしまいます。マリオ·セレーニの重厚なジェルモンは見事の一言ですし、当時新進気鋭のテナーだったアルフレート·クラウスの若々しい声には、初々しさすら感じます。そしてなんといってもカラスのヴィオレッタ。第1幕での他を圧倒する歌唱はEMI盤でも強く印象に残ったのですが、Pearl盤では第3幕に強く惹かれました。ここでのカラスの歌唱は実に脆弱で、そして痛切なものです。この好対照の演技っぷりは、まさに「女優」そのものです。
今日も棚の奥からゴソゴソとCDを取り出します…。
ノルウェーの作曲家、ハーラル・セーヴェルー(Harald Sigurd Johan Sæverud, 1897-1992)は地元で「グリーグの再来」と称えられる国民的巨匠です。9曲の交響曲、劇付随音楽「ペール・ギュント」などの管弦楽作品も遺していますが、私には「やさしい小品集」「シーリューステールからの歌と踊り」などのピアノ作品が、とりわけ魅力的に感じられます。どれも数分程度で終わる小品ですが、どの曲も旋律が美しく、しかも親しみやすくて、思わず曲に合わせて歌ってしまいそうになります。そして曲には独特のリズム感というか、ノルウェーの民族的要素がふんだんに感じられます。このあたりが「グリーグの再来」と評される所以なのでしょう。確かにこれらの愛すべき小品集を聞くと「20世紀の叙情小品集だな」と言いたくなります。
暑い日の夜だから、次は北欧音楽にしましょう、ということでシベリウスのCDを取り出す私。
CDプレーヤーのトレイに乗せたのは「ヴァイオリンと管弦楽のためのユモレスク集」(BIS; BIS-CD-472)。シベリウスといえば何といっても「ヴァイオリン協奏曲」が有名で、「ユモレスク集」はその陰に隠れた脇役的存在です。でもこの脇役たちが実に良い味を出してるんです。
6曲はそれぞれ異なった音楽的キャラクターを持っています。舞踊的な作品もあれば、シベリウスならではの瞑想的な曲もあります。どの曲も決してソリストのためだけのショー・ピースに陥らない、良く書けた音楽なのですが、曲の端々に「親しみやすさ」も感じさせます。このあたりにこの曲独特の魅力があるようです。
曲の魅力をさらに倍加させているのが、独奏のドン=スク・カンです。彼の甘美な音色のヴァイオリンは、耳にすごく馴染みますし、親しみやすい「ユモレスク」との相性も良いと思います。このヴァイオリニストは現在、音楽界で華々しい活躍を見せているわけではありませんが、地元韓国はもちろん、日本でもコンサートに登場したりしているようです。一度生で聞いてみたいアーティストの一人です。
次に棚から取り出したのはバッハ「ブランデンブルグ協奏曲」(DG; 423 116-2)。演奏するのはラインハルト・ゲーベル率いるアンサンブル、ムジカ・アンティカ・ケルンです。
この演奏に最初に出会ったときの印象を一言で表現するならば、「初体験」でしょうか。なんか良からぬことを連想させる言葉ですが、ここではもっと一般的な意味での「初体験」を指します。初めて外国に行ったとき。初めて大学に足を踏み入れたとき。初出勤したとき。まあ好きな女性を初めてデートに誘ったときでもいいや(笑)。ともかく人間はどんなことであれ、初めて何かを経験する時は戸惑ったり、驚いたりするものです。要はこの演奏を初めて聞いたときは、最後まで驚きっぱなしだった、ということが言いたかっただけなのですけど。
ゲーベルの「ブランデンブルグ協奏曲」は、それ以前の演奏を遥かに凌駕するスピードで最後まで突き進みます。「第1番」ではまだ「あっ、ちょっと早いな」程度ですが、「第2番」でギアが入ると、「第3番」で遂にフルスロットル状態に突入し、ブランデンブルグ協奏曲のファステストラップをたたき出しています。ここまで想定外の速さで演奏されると、「バッハじゃない何か」を聞いているような気分になってしまう面も確かにあります(これをクラシックを全く知らない友人に聞かせたら『まるでドラクエのBGMみたい』と言われました)。でも何度か聞き直すうちに、彼らの演奏の持つ小気味よいテンポ感が病み付きになるというか、独特の魅力(というより「魔力」?)にハマってしまうのですから不思議なものです。そういえばこの「第3番」での壮絶なまでの弦楽合奏の「早弾き」を「デスメタル風バッハ」と表現した人が、某巨大掲示板に居たような…。
あとこの録音で注目すべき点は、チェンバロをアンドレアス・シュタイアーが担当していたことです。当時ムジカ・アンティカ・ケルンの一員だった彼は、「第5番」でヴァイオリンのゲーベル、そしてフルートのヴィルベルト・ハーツェルツェトらと共に、軽快な演奏を披露しています。その後シュタイアーはゲーベルらと袂を分かったのち、ソロ奏者として華々しい活躍を見せているのは、皆様もご存知の通りです。
帰省ラッシュですか…。そういえば家の近所の国道が、普段では考えられないほど車で混雑していました。まさに数珠繋ぎ状態。猛暑の中、本当にご苦労様です。私はというと、実家も近いし、割としょっちゅう両親と顔を合わせていますから、お盆のときに帰ったとしても「帰省」という言葉を使ってよいか迷うところです。
今日は朝から日光浴がてら高校サッカー観戦をしに出かけました。体中から噴出す汗をタオルでぬぐい、木陰を探して腰を下ろします。そしてボーッと試合を眺めているのですが、休日でも容赦なく職場からは電話がチョコチョコ掛かってきます。神様は私をなかなか休ませてくれないようです。
汗をかいて夕刻に自宅に戻るとシャワーを浴びて、アイスコーヒーでほっと一息つきます。日は落ちて来ましたが、夜はこれからです。今日は時間もたっぷりあるので、CD三昧といきますか。
まず棚の奥から取り出したのはコルトーのショパン「ワルツ集&バラード集」。カタログ番号は「TOCE-7818」。1992年に発売された「GR on CD」シリーズの一枚です。EMIによるSPのリマスターにはいつも泣かされっぱなしですが、このCDに関しては実に自然なサウンドで、何の気兼ねもなく素直に音楽を楽しむことができます。久しぶりにステレオで聴いてみると、B&Wのスピーカーから流れる音が(1930年代の録音なのに)結構リアルで、そこにコルトーが居るかのような臨場感すら感じさせるほどです。
コルトーの演奏のどこが魅力的なのか。私のような輩が書くのも何ですが、彼のピアノって、音がスムーズに流れていくんですよ。右手も左手もサラサラ流れていくようで、まるで岩の上から滑り落ちていく沢水のようです。その自然な音の流れが心地いいんです。コルトーはよくルバートがどうだとか、崩し方がどうだとか言われますが、その文言から想像される「ぎくしゃく感」が全く感じられない。そこが素晴らしいと思います。こういうピアノ演奏を「至芸」と言うのでしょう。

「Works of Igor Stravinsky」(ストラヴィンスキー・エディション:22CD-BOX, Sony Classical, →HMV/@TOWER.JP/amazon.co.jp)です。米CBS原盤によるストラヴィンスキー自作自演音盤が、132mm×132mm×58mmの箱にギッシリと収められています。店頭での購入価格は6200円。一枚あたり約280円です。二昔前に私がゲットしたストラヴィンスキー指揮の「春の祭典」海賊盤が1枚1000円だったわけですから、これこそまさに「正規軍による海賊征伐」ですね(笑)。
この四字熟語、「たなやまぶりこう」と読みます。意味は…、棚に山と積まれたブリリアントのCDボックス(愛称:鰤箱)を眺めながら「これはまだ全部聴いていなかったなぁ」「いつ聴こうかな…」などと考えを巡らせるという…、まあそんな意味です(笑)。
そうは言っても、最近のブリリアント・クラシックスの充実ぶりには目を見張るものがあります。最近購入した中ではベートーヴェンの作品を収録した2つのBOXセットが、とりわけ素晴らしかったです。
一つは、最近引退を発表したガルネリSQによる「弦楽四重奏曲全集」(→HMV/@TOWER.JP)です。書道にたとえるなら、「草書体」でなくて「楷書体」のような、そんな音楽を4人が奏でています。各パートがとても明瞭ですし、曖昧な音が何ひとつない、クリアネスに秀でた演奏です。16曲全てが優れていますが、特にガルネリの特徴が現れている楽曲を一つ挙げるなら「第12番」(Op.127)でしょうか。一音一音に力が篭った、筋肉質な演奏は見事の一言です。
もう一つは、グリュミオーとハスキルによる「ヴァイオリンソナタ全集」(→HMV/@TOWER.JP)です。モノラル録音のせいか、グリュミオー独特の磨かれた珠のような音の輝きには僅かながら欠けるところがあるのですが、それでも彼の伸びやかなヴァイオリン演奏は、十分過ぎるくらい魅力的ですし、ハスキルの無駄のない表現も、音楽にフィットしていて実に素晴らしいです。
両方とも「えっ!こんな値段で!?」と思うほどの出血大サービス価格で手に入るのですから、ホントに良い時代になったものです。この流れを「音楽業界をおびやかす暴挙」と捉える向きもあるようですが、消費者の立場で言えば全然オッケーですよ。これからもブリリアントには、手ごろなお値段で名演をどんどんと提供して欲しいところであります。
通販サイト「アリアCD」から先日、岐阜・サラマンカホールで収録されたギ・ボヴェのアルバムが届きました。タイトルは「オルガン音楽の喜び」。収録曲はバロック期にヴァレンシアで活躍したファン・カバニレスの小品数曲とネブラの「ファンダンゴ」、大バッハの「幻想曲とフーガ ロ短調」(BWV544)。そして最後には日本の歌を下敷きにしたボヴェ自身の作品「日本三景」へと続きます。やや珍しいプログラミングですが、ブックレットによると「サラマンカホールのオルガンの多様な側面を表すように考えられ」たとのことです。
そもそもこのCD購入のきっかけとなったのは、このホールのオルガンを製作した辻宏氏のことを「アリアCD」で紹介していたからです。この記事を見たあと私はネットで様々な情報を集めていくうちに、辻氏のオルガンが置かれた岐阜の小さなコンサートホールが、スペインの学園都市の名前を冠するに至った所以を初めて知りました(そのいきさつについてはサラマンカホールの公式サイトにも記されています)。そして私は、このホールで体験したある出来事を思い出しました。「ルー・ゲーリック病」に冒され惜しまれつつ世を去ったオルガン職人と、私が会場で見かけたレスピレータを着けた観客の姿が、私の心の中でダブったのです。
バブル期以来、日本では数多のコンサートホールが建てられていますが、このサラマンカホールには、辻氏を始め、このホールに関わった様々な人々の「魂」が篭っているような気がします。だからこそ、私はあんな滅多とない経験をしたのかも…。
さてボヴェ作曲による「日本三景」の1曲目は、郡上八幡に古くから伝わる「郡上節」がモチーフになっています。物悲しい出だしはオリジナル(※)と相当ギャップがありますが、最後には華麗で輝かしいオルガンの響きで幕を閉じます。これは明らかに辻氏に対する音楽的なオマージュではないでしょうか。
(※)ボヴェが引用した郡上節の「かわさき」は、郡上八幡観光協会のサイトで聴くことができます。
(Reference)
"The Joy of the Organ Music"
Guy Bovet(Organ)
Works by Juan Cabanilles, Jose Blasco de Nebra, Johann Sebastian Bach and Guy Bovet.
Recording date: October 3, 2001
Venue: Salamanca Hall, Gifu
私の最近の「お気に入りCD」のひとつに、ガヴリエル・リプキンのチェロ小品集「Miniatures & Folklore」(edel classics, 0016142GLP; →@TOWER.JP)があります。まずはモシュコフスキの「ギターレ」でさりげなく始まりますが、ここで油断は禁物です。この次のヴィエニャフスキ「スケルツォ・タランテラ」で「ゲゲッ!」、ポッパー「妖精の踊り」(Track 14)で「オヨヨ!」、そしてブラームス「ハンガリー舞曲第1番」で「アチャー!」と、リプキンの超絶テクの数々にはサプライズしっぱなしです。それ以外にも(チェレプニン「だったん人の踊り」やグラズノフ「アラビアの旋律」といった)珍曲や、個人的には初耳の作曲家の作品も何曲か収録されていたりして、中身はなかなかバラエティに富んています。ラストの(オリジナル以上に中国風な)「中国の太鼓」も秀逸ですし、最後まで飽きることなく聴き通すことができるアルバムです。

(曲目)
1.ドビュッシー:交響詩「海」
2.同(コリン・マシューズ編):前奏曲集
(霧/西風の見たもの/ミンストレル/カノープ/夕べの大気に漂う音と香り/ヴィーノの門/奇人ラヴィーヌ将軍/枯葉/交代する三度/パックの踊り/野を渡る風/亜麻色の髪の乙女)
(演奏)
マーク・エルダー指揮ハレ管弦楽団
(→hmv.co.jp、@TOWER.JP)
イギリスの「タイムズ」紙上で「イギリスではハレ管がナンバー1」と書かれているのを見たとき、私はずいぶん驚いたものです。しかし今回(CDではありますが)マーク・エルダーの着実な仕事ぶりと、オケの技量の高さを聴くに及んで「タイムズ紙の高評価もむべなるかな」と得心した次第です。ハレ管は来年創立150周年を迎えますが、どうやら良いアニヴァーサリー・イヤーとなりそうです。
SIMAXレーベルでの一連のベートーヴェン録音で注目を浴びたデンマークの指揮者トマス・ダウスゴー。私も去年ウェブラジオで彼のモーツァルトを聴いた折、その細部まで整えられた精緻なアンサンブルに好印象を抱きました。さて彼の指揮による新譜が2枚立て続けにリリースされましたが、どちらもなかなか興味深い内容となっています。

(曲目)
1.武満徹:弦楽のためのレクイエム
2.外山雄三:ラプソディ
3.同:子守唄
4.小山清茂:管弦楽のための木挽歌
5.渡辺浦人:交響組曲「野人」
6.尾高尚忠:フルート協奏曲
7.メシアン:ばら色の扉(「5つのルシャン」から)
8.同:天国の色彩
(演奏)
吉田雅夫(フルート;6)木村かをり(ピアノ;8)岩城宏之指揮NHK交響楽団(1-6)東京混声合唱団(7)東京コンサーツ(8)
(録音)
1961年1月/4月(1-6)1973年3月(8)
先日大阪のCD店で「弦楽のためのレクイエム 岩城宏之」(→amazon.co.jp)を購入しました。昨年惜しまれつつ世を去った指揮者・岩城宏之氏の追悼企画ということで、モノトーンを基調とするジャケットデザインです。パッケージの外見は地味ではありますが、演奏のポテンシャルはどれも高く、昭和30年代から40年代にかけての日本音楽界の熱い息吹が確実にスピーカーを通して伝わってきます。
昨年末に購入したディスクのなかで、私のお気に入りの一つとなっているのが、トゥガン・ソヒエフの「展覧会の絵」(写真)です。「naive」レーベルならではのアーティスティック・ポイントの高いジャケ写に釣られ、ついレジに持っていってしまったのですけど、トゥールーズ・カピトール管のポテンシャルをフルに引き出した演奏はなかなかのものでした。同封ブックレットによるとソヒエフは北オセチア出身で現在28歳とあります。北オセチアといえば、どうしてもワレリー・ゲルギエフを連想してしまうのですが、ソヒエフの「展覧会の絵」はフランスのオケの持つ「繊細さ」「上品さ」を前面に押し出しながらも、時折同郷の先輩を思わせるような「勇ましさ」が時折顔を覗させるという、なかなかユニークな味わいを持っています。カップリングのチャイコフスキー「交響曲第4番」はアンサンブルに1ランク上の精度が欲しいところでしたが、それでもデビューCDとしては上々の滑り出しではないでしょうか。
さて最近の音楽界では20代の指揮者は決してレアではありません。ソヒエフとおなじ20代のドゥダメルやブランギエの活躍ぶりは当ダイアリーでも取り上げていますが、この3人には「若い」という以外にも共通点があります。実は彼らは所属事務所も同じなのです。彼らの音楽事務所「Askonas Holt」にはアバド、ヨー・ヨー・マ、ボストリッジら多くの有名演奏家を抱えていますが、現在ベルリン・フィルの首席指揮者を務めるサイモン・ラトルを17歳の頃から(!)サポートしてきたエージェントです(参照)。更にはラトルと同郷で、彼の跡を追うような活躍ぶりを見せるダニエル・ハーディングも「Askonas Holt」の所属です。おそらくこの二人の「成功」に続けとばかりに、次の世代のアーティストの発掘に力を入れているのでしょう。そして「Askonas Holt」以外にも「IMG Artists」、「HarrisonParrott」、「Van Walsum」といった音楽事務所も負けじと若手指揮者のサポートに熱心に取り組んでいます。
<当エントリはここからが長いので、読者の皆様はご注意ください>
最近ショスタコーヴィチのオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」と、その改作である「カテリーナ・イズマイロヴァ」のDVDを2本立て続けに鑑賞しました。まずは1966年にソ連で製作されたオペラ映画、「カテリーナ・イズマイロヴァ」からご紹介。

(曲目)
1.ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番Op.77(Op.99)
2.同:同第2番Op.129
(演奏)
セルゲイ・ハチャトゥリアン(ヴァイオリン)クルト・マズア指揮フランス国立管
(2006年7月収録)
アルメニア出身の俊英、セルゲイ・ハチャトゥリアンによるショスタコーヴィチの協奏曲録音です(→@TOWER.JP、HMV.co.jp、amazon.fr)。私がこのCDを聴く前に気になっていた点が2つありました。一つはハチャトゥリアンがライブで見せる「燃焼度の高さ」を商業録音でも示すことができるか。もう一つは共演する指揮者のクオリティです。私はハチャトゥリアンの「ヴァイオリン協奏曲第1番」を二度ウェブラジオで聴きましたが、そのときの指揮者たち(ワシリー・シナイスキー&エリアフ・インバル)はソリストに比肩する好演を聞かせていました。このCDでのパートナーはクルト・マズアです。知名度では前者二人に勝りますが、この録音ではどうでしょうか…。
私が最近車の中で好んで聴く音盤を紹介します。ご覧の通り、クラシック音楽以外のジャンルのものばかりですが、クラシックはDレンジが広すぎて車中では弱音が聞こえないので、自ずとクラシック以外の洋楽を聴く機会が多くなってしまうのです。
●「ジョアン・ジルベルトの伝説」
いま日本で「ジョアンの伝説」といえば、開演時間になっても楽屋入りしてなかったりとか、「嫌いだから」と会場のエアコンが切られるなどの振る舞いのことを指すようだが(苦笑)、本来は彼の声が伝説なのだ。スピーカーから聞こえてる筈なのに耳元で甘く囁いているように聞こえる彼独特の歌唱は、まさに唯一無二のものだ。このCDではそんな彼の歌声(今より声のトーンは高いけど)にたっぷりと浸ることができる。
(EMI Korea, EKJD-0155)

●「LIVE - Ricardo Silveira Luiz Avellar/Play the Music of Milton Nascimento」
ギターとピアノの二重奏が虚飾の無い音楽を紡いでいる。このデュオからはクラシックの上質な室内楽に通じるような、そんな親密さと濃密さが味わえる。
(Adventure Music, AM1014 2)

●「シノノメソラ」(シノノメソラ)
数十年前の軽音楽のようなシンプルなビートの上に、日本の古い歌謡曲を連想させるシンプルな旋律が乗っかってる。この独特の音楽世界はエスニックというべきか、ナチュラルテイストというべきか、はたまたノスタルジアと言うべきか。ともかくどこかで聴いたことがあるようで、実はどんな所でも聴いたことがない音楽だ。このバンドの中心人物でもある黒田かなでさんによる、感情過多に陥らないヴァイオリン演奏も良い。洋食が続いた後にうどんを食べたときのような、そんな安心感とぬくもりが感じられるアルバムだ。
(ミディクリエイティブ,CXCA-1165)

●「オープン・シーンズ」(ダリンデオ)
上述のシノノメソラが「町のうどん屋さん」なら、これは間違いなくモダンなカフェのような音楽だ。コード進行やベースの動きはジャズ的だが、ポップでダンサブルな音楽はシンプルで親しみやすい。難しいことを考えずに素直に楽しめるサウンドに仕上がっていて、これはこれで見事な職人芸だ。ところでダリンデオのメンバーは6人ともヘルシンキはシベリウス音楽院の出身らしい。なんか最近この音大出身のジャズマンて増えてないか。
(コロムビアミュージックエンタテインメント,COCB-53575)
(関連サイト)
・ほぼ日刊イトイ新聞-ボサノバをつくった男。ジョアン・ジルベルトが日本にやってくる!
・Ricardo Silveira Official Site
・Luiz Avellar Official Site
・シノノメソラ 公式サイト
・Dalindèo Official Site

(曲目)
1.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番(BWV1007)から 前奏曲、サラバンド、ジーグ
2.同:同第6番(BWV1012)から ガヴォット
3.同:同第5番(BWV1011)から ガヴォット
4.同:同第4番(BWV1010)から ブーレ
5.同:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 BWV1006
6.同:平均律クラヴィーア曲集・第1巻から 前奏曲 BWV846
7.同:主よ,人の望みの喜びよ
(演奏)
ジョン・キング(ウクレレ)
ウクレレといえばハワイアンに欠かせない弦楽器として一般的に知られていますが、そのウクレレ一丁で果敢にもバッハの作品を演奏したアルバムの存在を「ユビュ王の食卓」で知りました。「バッハとウクレレって合うのかな…」と思いつつも購入してみたところ、結果的に私の心配は良い方に裏切られました。
ハワイ出身のジョン・キングは全編を通じて丁寧で真摯な態度でバッハに取り組んでいて、その「正攻法」の演奏解釈が好印象を与えています。フレージングも実になめらかで、バッハのお馴染みの旋律の数々を更に魅力的にしています。なにより心地よいウクレレサウンドで、普段と違うバッハ体験を楽しめる、というのが魅力です。しかしここにあるのは紛れも無いバッハの音楽なのです。
(NALU music, ASIN:B00007IOYR)
(※私はこのCDを「CD Baby」で購入しましたが、「Amazon.com」でも扱っています)
(参考リンク)
John King - Profile
オアフ観光局公式サイト - ウクレレについて→ウクレレの由来について簡単に記されています。
王道を避け、あえて草をかき分け獣道を進む野武士の如きヴァイオリニスト、ナイジェル・ケネディの新譜2つがほぼ同時にリリースされました。一つはジャズ・ミュージシャンたちを従えてケネディがエレクトリック・ヴァイオリンを操ったアルバム。もう一つはヴィヴァルディの楽曲を中心としたアンサンブル・コンサートのDVDです。
●「Blue Note Sessions」(BLUE NOTE, 0946 3 75336 2 6)
一聴して「極めて真っ当なジャズ・アルバムだな」と思いました。私はジャズには明るくないので、共演奏者で知っている名前はベースのロン・カーターしかいませんでしたが、ネットで色々と調べてみるとジョー・ロバーノ(サックス)もJDアレン(同)もラッキー・ピーターソン(ハモンドオルガン)もケニー・ワーナー(ピアノ)もジャック・ディジョネット(ドラムス)もみんなジャズ界のビッグネームじゃないですか!彼らの(良い意味で)角の取れたまろやかなサウンドはシングルモルトウイスキーのような奥深さです。そんな中ケネディのメタリックでエッジの立ったヴァイオリンサウンドが「アクセント」となっています。しかしブルージーなナンバーでは、ケネディのフュージョン寄りとも思える表現が、彼をサポートする名プレーヤーたちとどこか「色違い」になっている印象が無きにしもあらずですが。まあケネディは決して「他の色」には染まらない演奏家だ、ということでしょう。
●「Kennedy Live Vivaldi Live à la Citadelle」(EMI Classics, 3 65908 9)
ケネディの「代名詞」となっている「四季」など、ヴィヴァルディの作品が収録されたライブDVDです。この「ギグ」でのケネディの演奏ぶり、そして曲間での立ち居振る舞いは、私が以前ラジオで聴いた今年2月のメルボルン公演の雰囲気に極めて近いものです。そのとき強烈な印象を私に残した「調和の霊感」が収録されていないのが残念で