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2014.09.21

エディンバラ記(その1)

01

 この夏エディンバラ・フェスティバルに行く機会があったので、それについてだらだらと記録することにした。駄文失礼。


 ・1日目
 関西国際空港を朝10時に発ってルフトハンザでフランクフルト国際空港へ。ここに寄るのは5年ぶりだが、空港ターミナルの構造がすっかり変わってしまってた。おなじルフトハンザでの乗り継ぎでも到着後新交通システムみたいなものに乗って、乗り継ぎ便の搭乗口のあるところまで移動したりする。フランクフルトから2時間弱でエディンバラに。到着前に空から眺めたスコットランドの田園風景はなかなかの見物であった。麦畑や林、海が太陽に照らされて輝いていた。
 空港到着後入国手続きを済ませて外に出て、左方向に進むとエディンバラ中心部へ向かうバスやトラムの停留所がある。今回はバスの方、AirLinkに乗る。すでにバスの中は満員。スーツケースを置くスペースがあるのだがそこもぎっしり。仕方なく荷物を横に立て置きして私はその傍らに立つ。車が走り出し、車窓から右から左へと流れる建物をなんとなく眺めていたら、そのうちに人通りや車通りの激しい道に入り、そのままエディンバラ中心部にあるターミナル駅のそばに到着。そこから近くのホテルまで徒歩で向かう。目の前にはデデーンとエディンバラ城が!いきなり360°観光名所、どこを見渡しても世界遺産な場所に放り出された感覚。心の準備もないままに旅の醍醐味を味わった。そのあととりあえずマクドナルドで何かを放り込み空腹を満たした。街を歩くとやはり肌寒い。だが雨の予報に反して天気は「晴れ」。結構強い日差しを感じる。これはラッキーだ。
 ホテルに戻りシャワーを浴びる。なかなか熱いお湯が出てこない。しかもシャワーの水圧が弱い。バッグパッカー時代に宿泊した数々の安ホテルのことがフラッシュバックする。そしてあの頃と違い、今回は一泊あたりかなりの出費をしているのだ。部屋を替えてもらおうかと一瞬思ったが、やはりバッグパッカー時代にひどいホテルの設備に悩まされながらも何とかカントカして過ごしたことがよみがえり、まあ何とかなるさと思い留まる。

 ・2日目
 朝ごはんはビュッフェ形式。食べ物はパンにシリアル、ソーセージ、ベーコン、目玉焼きにスクランブルエッグ、あとはフルーツ。そしてよくわからない麦のお粥みたいなものがあった(あとで検索してしらべたら「ポリッジ」というらしい)。できれば生野菜が欲しかったがまあいいか。お店の人に大通りに面した窓側の席を案内される。外は晴天。日差しの向こうにエディンバラ城がよく見える。特等席である。この景色を見せつけられると出費も仕方ないか、と思ってしまう。麦のお粥は好奇心から食べてみたが、日本人はしょうゆをかけたくなるな、うん。それか漬け物と一緒に食べたくなる。

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 いろいろと身支度しているうちにマチネのコンサートの時間が近づいていた。ホールまでどうやって行ったらいいか。今はスマホで目的地を入力したらバスの時間、目的地の停留所の名前、さらには途中の停留所までパッと出てくるので実に助かる。
 バスがやってきたので前から乗車(というか前にしか入り口がない)。5ポンド札を見せて一日乗車券を頼んだが「おつり出ないから、どっかで両替してもらうかお店で買い物でもしたら」と言われる。バスから降りて近くのスーパーへ行き水を買う。10ポンド札を渡したらレジ係の女性に「バスの運転手に言われたのね」と言われた。どうしてわかった!?というかそんなヒト多いんでしょうね。
 スマホが指示するとおりの停留所でバスを降りたが、周辺にはコンサートホールっぽい建物が見当たらない。だがある建物の前だけ、行列ができていた。どうやらここがマチネの会場、クイーンズ・ホールのようだ。わたしも並んだが列はすぐにさばけ、入り口でeチケットを提示してそのまま客席へ。実に古めかしい建物だ。椅子はベンチシートみたいになっていて、背もたれの上が平たくて机みたいになっている。なんか大学の昔の講義室のようなレトロなムード。
 椅子に腰を下ろしてから数分で演奏者たちが舞台に上がり音楽が始まった。「テレジエンシュタットの音楽」というテーマによるコンサート。耳に届く音楽はどれも初耳。歌手アンネ・ゾフィエ・フォン・オッテルによる曲間のトークを通じ、貧しいヒアリング能力の持ち主は何とか曲の成り立ちなどを知る。今回のプログラム構成は、ナチスが設けたユダヤ人収容所内で奏でられた音楽を純クラシックからキャバレーソング、そして看護師が夜勤の合間に書いた歌に至るまで、幅広く紹介していくというもの。個人的にはヴィクトル・ウルマンやパヴェル・ハースの作品がもっと聞きたかったのだが、今回のごちゃ混ぜ的オール・ジャンルのプログラミングは、テレジエンシュタットの人々の日常生活が見事に伝わってくるという点で、とても興味深いものだった。才気あふれる作曲家が構想を練っていたり、キャバレーソングを聞いた収容者たちの喝采だったり、そんな光景が次々に想起される。そして最後にオッテルが歌ったイルゼ・ウェーバーの子守歌。帰国後ネットで検索すればこの歌にまつわる様々なエピソードが出てきた。それを事前に知った上で聞いていたら、感情が揺さぶられるのを抑えられなかったかもしれない。だがわたしはただ、オッテルが子守歌を控えめに、しかし大事に歌うのを静かに聞いていただけ。でもそれはそれでよかった。子守歌なのだから。
 オッテルの長年の音楽のパートナー、ベングト・フォシュベリ。テレジエンシュタットの音楽に造詣の深いヴァイオリン奏者ダニエル・ホープ。アコーディオンからギター、ベースまでこなしたベベ・リーゼンフォース。いずれもすばらしかった。そしてホープとフォシュベリによるバッハのハ短調ソナタがとても印象に残った。なんか壮絶な状況で書かれた特異な音楽のあいだにバッハの音楽が挿入されると、とても効果的なのだ。
 会場を出てホテルに戻る。日本のホテルみたいに自販機がないのでスーパーに行って水やらジュースやらお菓子やらサンドイッチやらを買う。アルコールのコーナーに行くと缶ビールが6本単位でしか売ってないので、購入に躊躇。ヒューガルデンの大びんを生まれてはじめて見たが、これもかごに入れず。じつはエディンバラに行く直前に尿路結石が見つかり、アルコールの量を意識的に減らしているのだ。せっかくスコッチウイスキーの本場に来たのにバッドタイミングだが仕方がない。とりあえずパブで連日飲みふけることはせず、スーパーのお総菜などで食事を済ませよう、と心に誓ってエディンバラ入りしているのだが、禁を破るかもしれない。まあそのときの気分で、と思っている。

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 日本から来るメールやらツイッターやらを見ているうちに何となくコンサートの時間が近づいてきた。少し早いが出かけることに。バスで10分たらずでアッシャー・ホールの真ん前に到着。建物が太陽に照らされて、なんとなく金色に輝いて見える。まだ開場まで時間があるのでホール周辺をうろうろしながら適当に時間がつぶせそうな店を探す。べつに晩ご飯でもいいのだが…と思いながらぶらぶら。ピザ屋さんとかインド料理とかのお店の看板を見かけるが、いまはさほど行きたい気分でもない。結局スタバに入りホットのグランデを頼む。日本とやってること変わらん。
 開場時間になりホールに入場。eチケットは入口で係員が閲覧するだけ。バーコードリーダーはなし。実にユルい。内部はステージを客席が馬蹄形に取り囲んでいて、3階席まである。舞台の裏手方面に椅子がずらりと並んでいる。きょうはお客さんを入れないようだ。定刻に開演。紫色の暗い舞台照明のなかを、サー・アンドラーシュ・シフがピアノに向かう。前半はベートーヴェンのピアノソナタ第27番と第28番、そしてバルトークのソナタの3曲。じつに文句のつけようがない。別の言葉でいえば「落ち度がない」。「隙がない」とも言えるか。曲の最初から最後まで、すべてがスムーズに流れていき、音楽)にバタついたところは皆無。バルトークの最後のたたみかけるようなラッシュですら、余裕を感じさせる。そんな破綻のない音楽から生まれる「歌」。音が澄んでいて、輝いている。響きが生む歌の美しさ。それは後半のヤナーチェク、シューベルトのD894、そしてアンコールに演奏された3曲(おそらくリスト編曲のシューベルト歌曲、即興曲D899-2、そしてゴルトベルク変奏曲のアリア)でも同様だった。
 コンサートを終えて来たバスに飛び乗ってホテルへ。やはりシャワーは使いにくい。バスタブにお湯を張って浸かることにする。就寝。

(Program Note 1)
Edinburgh International Festival - The Queen's Hall Series
Mezzo-Soprano: Anne Sophie von Otter
Violin: Daniel Hope
Piano: Bengt Forsberg
Accordion/Double Bass/Guitar: Bebe Risenfors
Venue: Queen's Hall
Date: August 25, 2014

1. Ilse Weber: Ich wandre durch Theresienstadt
2. Karel Švenk (Karl Schwenk): Všechno jde!
3. Ilse Weber: Und der Regen rinnt
4. Anonymous (after Emmerich Kálmán): Terezin-Lied
5. Erwin Schulhoff: Violin Sonata No.2 - First and second Mov.
6. Viktor Ullmann: Clere Venus / Sturmlied
(Interval)
7. Martin Roman: Das Lied von den zwei Ochsen
8. Pavel Haas: Suite for Piano Op.13 - Second Mov.
9. Pavel Haas: Sedm písní v lidovém tónu Op.18 - Dárek z lásky / Prípoved / Slzy a vzdychání / Statecný jonák
10. Karel Berman: Reminiscences - Family Home / Auschwitz - Corpse Factory / Typhus in Kauffering Concentration Camp / Alone - Alone!
11. Erwin Schulhoff: Sonata for solo violin - Second Mov.
12. J.S.Bach: Violin Sonata in C minor BWV1017 - Siciliano
13. Carlo Sigmund Taube: Ein jüdisches Kind
14. Ilse Weber: Wiegala

(Program Note 2)
Edinburgh International Festival
Piano: András Schiff
Venue: Usher Hall
Date: August 25, 2014

1. Beethoven: Piano Sonata in E minor Op.90
2. Beethoven: Piano Sonata in A major Op.101
3. Bartók: Piano Sonata
(Interval)
4. Janáček: Piano Sonata, 1.X.1905.
5. Schubert: Piano Sonata in G major D894

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