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2013.10.09

【演奏会レポ】ラトル指揮ベルリン・フィル (9月1日 パリにて)

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 夜は冷えるから、と聞いたのでジャケット羽織ってパリに行ったら暑かった。いつも自宅のある日本海沿いから「南」(わたしの場合それは「関西」だったり「名古屋」だったり「東京」だったりしますが)に行くときはいつも何を着るか迷い、結局町中を厚着して歩くことになるのだが(さすがに生前のグレン・グールドほど極端ではないが)、外国行くときも同じことが起こった。まあ気候は水物ですし、難しいですな。

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 でパリに着いてイの一番にやったことが、ラーメン屋に並ぶことという…。日本でやってることと変わらん。これがグローバリゼーションということか。なんか使い方間違ってるような気がしますが。ちなみに行ったのは「なりたけ」。ねぎが日本のと違う食感と味がしたけど、太麺がおいしかったですよ。チャーシュー丼と一番絞り(生でなく缶でした)と一緒に頂きました。全部で20ユーロ弱だったかな。おいしゅうございました。ちなみにお客さんで明らかに日本人っぽい方は私だけ。はなし言葉の印象だとなんとなく広東語ネイティブっぽい方が多かった。あとPardon!と言って私の隣に座ったパリジェンヌ。一人でラーメンすすってましたわ。

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 翌日は昼4時に開演のベルリン・フィルのパリ出張公演まで時間があったので、ペール・ラシェーズ墓地に。誰がどこに眠ってるとか事前に情報を仕入れずに行ったので、とりあえずガーッと適当に歩き回ってましたら、フランス人以外の方の墓地を結構見かけました。中国の方とかインドの方とか。タタ財閥の方のお墓も見かけました。音楽関連では以前ここで紹介したビゼーとか、その近くにあったエネスコとか、プーランクらの墓にお参りいたしました。でショパンの墓のあたりを通りかかったら押しかけガイドっぽいドミニク・ヴィス似の男に追っかけられたので走ってメトロの入り口まで逃げ帰りましたとさ。

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 でサル・プレイエルに到着しロビーへ。あたりは日本語の話し声があちこちで聞こえる。開場して中へ。ホワイエは広いし椅子は座り心地いいし、設備は充実してますな。やがて客席が暗転し、コンサートへ。1曲目は弦楽パートによるシェーンベルク「浄められた夜」。16-14-12-10-8とサイズは大きめ。「それでもこんだけ合うんだぁ…」「どこをどう見たら、こんだけ合わせることができるんだろう…」。普段アマオケでタテの線がなかなか合わず四苦八苦している身には驚きの連続。そんな中展開される前半部の修羅場。緊張感に満ちた音楽は「これから音楽はどうなっちゃうんだろう」「どこに連れていかれるんだろう…」と不安な思いすら抱かせるほどでした。何度も聞いたことのある曲だし、次どうなるか判ってるはずなのに、初めて聞いた曲のような気分にさせられて、なんか不思議な感じ。
 でそんなとき、ステージの向こう側の客席から叫び声が。最初は空耳かと思ったのですが、同じ方向から声が何回も聞こえてきたので、そちらに目をやると、声の主は隣人に肩を抱き抱えられていました。隣の方は彼の身を案じているようで、小声で何か話しかけていました。雰囲気から察するに、障がい者が不意に声を出した、そんな光景に見て取れました。隣の人は彼の家族か、支援するスタッフでしょうか。指揮者のラトルも声がする方向を一瞬見やりましたが、瞬時に事態を悟ったようで音楽は止まることなく進行していきました。
 音楽はやがてニ長調の後半へ。前半と打って変わり、慈愛に満ちた音楽。じつに美しく、安らかな時間が過ぎていきます。ここでベルリンの弦楽奏者たちは、音楽の題材となったデーメルの詩に登場する2人の「和解」を描写するのみならず、もっと普遍的な「赦し」を表現しているように思われました。やがて音楽が終盤に差し掛かり、ここで例の声の主がスタッフに連れられてホール外に誘導されていきました。彼は階段を慎重に一歩ずつ、時よりよろけそうになりながら降りていったのですが、その歩みは完全にシェーンベルクの音楽とシンクロしていました。
 続く2曲目はアルバン・ベルク「『ヴォツェック』からの3つの断章」。バーバラ・ハンニガンの独唱と管楽、そして打楽器群が加わり、ステージは賑やかに。わたしはベルクの楽器の使い方を楽しみました。ウェーベルンみたいに点描的な手法があったりとか、シェーンベルクが「グレの歌」でやったように同じ音色の楽器で和音を出したりとか、結構師匠や同士の影響を受けているんだなぁと。それから3曲目の前半、歌の出番のないハンニガンが終始オケの方向を向いて立っていたのが印象的だった。音楽はオリジナルのオペラだと題名役が池で溺れていった直後から始まるのだが、まるで池に沈んでいく夫をマリーが助けようとせず、ただ傍観しているだけ。そんな非情な立ち姿に映ったのだ。オリジナルにはそんなシーンはありませんが。
 休憩をはさんで後半はストラヴィンスキー「春の祭典」。今年2月にサロネン&フィルハーモニア管弦楽団の演奏で聞いたので、どうしても比較してしまうのですが、サロネンの方が完成度は高かったかも。音の響きは美しく、曲の流れも自然でスムーズで、そして決めるところはドンピシャで決まってたし。ただベルリン・フィルの演奏もよかったですよ。「いい音」に交じって、「よくない音」というと語弊があるけどノイズっぽい響きもステージから一杯聞こえてきて、それが混然となって音のカオスとして提供されていて、そのあたりに「ハルサイらしさ」を感じたのも確か。そんな印象を与えたのは会場の特性にも一因があったかも。このホール、響きは残響成分が少なめで、楽器の音がダイレクトに聞こえてくる感じ。弦のピチカートとかコル・レーニョとか、バチバチ聞こえてきたし。
 さてベルリン・フィルで「春の祭典」といえば、11月の来日公演プログラムにも入ってます。チケットをすでにお持ちの方は…
1)ラトルの指揮ぶり(あのハルサイなのに、モーツァルトかハイドンを振るみたいにチョイチョイと小手先のアクションで振る)
2)ホルンのベルアップの回数の多さ(まさにアップップ状態)
3)Es管クラリネット奏者の勇姿(コンチェルト吹いてるつもりか!とツッコミたくなる)
以上の3つを楽しみに会場入りされるとよいと思います。もっとも2)と3)は奏者がパリと日本で違う可能性があるので、私が見たときと違うことになってる可能性もありますけど。

Post_sacre

(Program Note)
Berliner Philharmoniker
Conductor: Sir Simon Rattle
Soprano: Barbara Hannigan
Venue: Salle Pleyel, Paris
Date: September 1, 2013

1.Arnold Schönberg: Verklärte Nacht Op.4
2.Alban Berg: Drei Bruchstücke aus "Wozzeck"
3.Igor Stravinsky: Le Sacre du printemps

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