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2009.07.01

秋山和慶指揮大阪フィル、そしてベルシャザールのこと

Opo429

 こないだの日曜日(6/28)は、大阪フィル定期を聞きにザ・シンフォニーホールまで出かけました。メインに据えられたウォルトンの大作「ベルシャザールの饗宴」が目当てでしたが、前半のモーツァルトやディーリアスもなかなか魅力的な演奏で、最初から最後まで飽きることのない、素晴らしいコンサートでした。

 最初のモーツァルト「ハフナー」から、この日の演奏会の成功は約束されていました。力強いトゥッティ、旋律と内声部の掛け合い、管楽器の彩り。全てがモーツァルトのスコア通りに進行していきますが、そのどれもが音楽的な「悦び」を伴っています。秋山和慶のモーツァルト演奏には目新しいところ、いわゆる「新機軸」などどこにもありません。それでも音楽の持つ楽しさが確実に客席の聴衆に伝わってきます。以前広響を聞いたときにも感じたのですが、「さりげなく良い演奏をする」「そして曲の美点を伝える」という点において、秋山和慶の右に出る指揮者は日本、いや世界を探してもなかなか居ないのではないでしょうか。

 その次に演奏されたのは、ディーリアスの「小管弦楽のための二つの小品」。こんな絶対音楽風のタイトルより、個々の楽曲に付けられた「春はじめてのカッコウを聴いて」「川の上の夏の夜」という題名にピン!と来る方のほうが多いと思います。モーツァルトとは語法があまりにもかけ離れたディーリアスではありますが、それでも「足したり」「引いたり」せずに作品に込められたメッセージを着実に伝える、という指揮者のポリシーは一貫しています。それによって自然に感化された人間の感情の揺れが、見事に表現されていました。

 そしてメインの「ベルシャザール」ですが…、それが実にすごかったのですよ。三管編成の管弦楽と混声合唱隊+オルガン、更には両脇に配置された別動隊のブラスバンド(2組)が束になって大音量をかき鳴らす、その迫力には圧倒されましたし、ベルシャザール王のエピソードを挟みながらユダヤ民族の怒りと歓喜を熱狂的に描いたウォルトンの「筆力」にも恐れ入りました。

 それにしても、イギリスの音楽一家に生まれ育ったウォルトンが、これほどまでユダヤ人の民族的怒りをストレートに表現した作品を書いたというのは、少し意外ですし不思議な気もします。ユダヤ人のシェーンベルクなら理解できるのですが(実際彼はホロコーストを題材にした「ワルシャワの生き残り」を書いていますし)。もしかして作曲当時のウォルトンはユダヤ人に対して共感するところがあったのでしょうか。作品が初演された1931年当時、欧州大陸でナチス・ドイツが党勢を拡大していたことを考えると、気になることではあります。

(Program Note)
Osaka Philharmonic Orchestra
The 429th Subscription Concert
Venue; The Symphony Hall, Osaka
Date; June 28, 2009

Conductor: Kazuyoshi Akiyama
Bariton: Akiya Fukushima
Chorus: Osaka Philharmonic Chorus & The Kyushu Symphony Choir

1.Mozart: Symphony No.35 in D major KV.385
2.Delius; 2 Pieces for Small Orchestra
(On Hearing the First Cuckoo in Spring / Summer Night on the River)
3.Walton; Belshazzar's Feast


(参照)
William Walton.net

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