「世界のオーケストラ名鑑387」が取り上げない世界のオーケストラ名鑑
先日音楽之友社から「世界のオーケストラ名鑑387」(→アマゾン)なるムック本が出版されました。世界の管弦楽団387団体を紹介するという、まさにオーケストラの「百科事典」といえる内容に驚嘆しつつ、世界に存在するオーケストラが数千、いや数十万と存在するなかで「387団体」をセレクトした理由もしくは根拠がどこにあるのか、いささか首を傾げたくなる部分もあったりしました。
ということでここでは「世界の~」が取り上げなかったオーケストラの中から、「これは掲載せんとイカンでしょう!」というものをサルベージしたいと思います。なお「世界の~」では、「盤鬼」こと平林直哉氏をはじめとする日本の有力音楽ライターたちが健筆を振るっておられます故、筆力の及ばない拙ブログでは簡潔な紹介に留めたいと思います。
【USA】
●ニュージャージー交響楽団 ネーメ・ヤルヴィが桂冠指揮者を務める。
●ボストン・フィル ボストン交響楽団ではありません。ボストン・フィルです。マーラーの録音で知られるベンジャミン・ザンダーが音楽監督です。
●ニュー・ワールド・シンフォニー マイケル・ティルソン・トーマスが深く関わってるオケ。
【カナダ】
●モントリオール・メトロポリタン管 1981年創立。ヤニク・ネゼ=セガンが芸術監督を務めるようになってからモーレツな勢いでCDがリリースされている。
【UK】
●ブリテン・シンフォニア いまイギリスで最も精力的な活動を行っている室内オケのひとつ。CD多数あり。
【フランス】
●ラ・シャンブル・フィルハーモニック エマニュエル・クリヴィヌが古楽器に取り組んでいるオケ。最近「第九」をウェブラジオで聞いたけど、面白かった。
●アンサンブル・オルケストラル・ド・パリ(パリ室内管弦楽団) 1978年設立。古くは父ジョルダンのモーツァルト録音(現在廃盤)、最近だとジョン・ネルソン指揮によるベートーヴェン交響曲全集がある。
●ボルドー・アキテーヌ国立管弦楽団 指揮者クワメ・ライアンと「ラ・フォル・ジュルネ」に出演したオケ、といえば「ああ!」と思い出す方も多いかと。
●ル・コンセール・スピリテュエル(※) 去年の来日公演は各地で話題になった。ちなみに「レコード芸術」誌最新号(2009年7月号;→HMV)に、指揮者エルヴェ・ニケのインタビュー記事が載ってます。
●アンサンブル・アンテルコンタンポラン 1976年、ピエール・ブーレーズによって創設されたオケ…、て読者の皆様もご存じですよね。こんな有名オケが載ってなくて、一方でベルナール・トマ管が載ってるというのがね…。「世界のオーケストラ名鑑387」は相当にマニアックなムック本と言わざるを得ない(苦笑)。
【オランダ】
●北ネーデルランド管弦楽団 ミシェル・タバシュニクが首席指揮者を務めるオケ。9月にやる「シンフォニック・クイーン」、面白そう。
●ASKOアンサンブル/シェーンベルク・アンサンブル オランダを代表する現代音楽アンサンブル。ネーデルランド・オペラのピットにも入る。
【ドイツ】
●ウッパータール交響楽団 「なんで世界のオーケストラ名鑑387に載ってないの?」なドイツ・オケその1。「未来のシューリヒト」(by 宇野功芳)、上岡敏之がシェフを務める。
●ハイデルベルク交響楽団 「なんで世界のオーケストラ名鑑387に載ってないの?」なドイツ・オケその2。トーマス・ファイ指揮のハイドンやメンデルスゾーンなどがナクソス・ミュージック・ライブラリー(以下「NML」)で聞けます。
●アーヘン交響楽団 カラヤン、サヴァリッシュ、北原幸男らが芸術監督を務めたオペラハウスのオケ。現在のシェフ、マルクス・R・ボッシュと録音したブルックナーは世評が高い。
●ケルンWDR管弦楽団 ケルンWDR交響楽団と紛らわしい名前のオケ。しかも両方とも西部ドイツ放送協会(WDR)の関連団体ときてる。私も時々間違えます(笑)。
【チェコ】
●ボフスラフ・マルティヌー・フィル ズリンを本拠地として活動するオケ。若手注目株のヤクブ・フルシャが去年まで音楽監督を務めていた。
【ハンガリー】
●ハンガリー・テレコム交響楽団 ケラー四重奏団の創設者、アンドラーシュ・ケラーが音楽監督を務める。
●オブダ・ドナウ管弦楽団 1993年創立の若いオケ。
●UMZE室内アンサンブル アンサンブル・アンテルコンタンポランやアンサンブル・モデルンに刺激を受けたゾルターン・ラーツが、1997年に創設した現代音楽アンサンブル。桂冠首席指揮者としてペーター・エトヴェシュも関わる。
【リトアニア】
●セント・クリストファー室内管 1994年創立のオケ。発足以来ドナタス・カトクスが芸術監督を務める。客演指揮者のなかにはデニス・ラッセル・デイヴィス、リナルド・アレッサンドリーニらの名前も。
【デンマーク】
●オーフス交響楽団 ホルンボーの交響曲全集録音(→NML)が有名。
【ノルウェー】
●ノルウェー放送管 いくつかのノルウェー音楽のディスクで印象深い。トマス・ソンダーガードが今秋から首席指揮者に。現在の首席客演指揮者はアンドリュー・マンゼ。
●トロンハイム交響楽団 1909年創立だから、ことし創立100周年。首席指揮者はエイヴィン・オードランド。
●スタヴァンゲル交響楽団 当ブログの読者なら、去年秋のベートーヴェン・ツィクルス(フランス・ブリュッヘン指揮)が記憶に新しいところ。
●ノルウェー室内管弦楽団 1977年にテリエ・トネセンにより創設。現在もトネセンは音楽監督を務める。レイフ・オヴェ・アンスネスとの共演が多く、来年3月にはこのコンビで来日予定。
【スウェーデン】
●スウェーデン室内管弦楽団 音楽監督はトマス・ダウスゴー、首席客演指揮者はニコライ・ズナイダー、そしてバロック音楽のアーティスト・イン・レジデンスはアンドリュー・マンゼ。
●ヘルシンボリ交響楽団 アンドリュー・マンゼが関わるようになり、CDもリリースされるようになった。ライヴでマンゼはウェーベルンも振ってる。
【フィンランド】
●タピオラ・シンフォニエッタ 「Artists In Association」としてステファン・アスバリー、オリ・ムストネン、ペッカ・クーシストの三人が関わる。今シーズンはパーヴォ・ベルグルンド、ラインハルト・ゲーベルが客演予定。
●タンペレ・フィル メラルティンの交響曲全集を録音したオケ。現在の音楽監督はハンヌ・リントゥ。今シーズンはティエリー・フィッシャーやマキシム・ヴェンゲーロフも指揮する。
●ヘルシンキ・バロック・オーケストラ 1997年創立。エンリコ・オノフリ、スキップ・センペらとの共演歴あり(参照:NML)。
【極東アジア】
ここはまとめて。中部フィルまで取り上げるのなら、京都フィルハーモニー室内合奏団も取り上げて欲しかったです。あと関西には長岡京室内アンサンブルもあります。それからマカオ管弦楽団が載ってるのに香港フィルがないのは何故!?
最後に。上記で私が挙げた34団体だけでなく、世界にはオーケストラがゴマンとあります。もっと世界のオーケストラが知りたい!という方は「東西南北交響楽団」という便利サイトがありますので、そちらをご参照ください。
(※)「ル・コンセール・スピリテュエル」にはもちろん公式サイトがあるんですが、アクセスしようとすると「攻撃サイトとして報告されてます!」というメッセージが出てきます。何があったんでしょう。
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Comments
ばってん様、怒りの(?)コメントありがとうございます(笑)。あの見栄えの良いHPと、共演者のラインアップを見れば、見過ごすなんてできない筈なんですけどね。ばってん様、応援活動がんばってください(笑)。
指揮者Lu Jiaは、たしかヨーロッパでも各地のオケを客演してますよね。しかも結構いいソリスト(たとえばポール・ルイスとか)と共演したりしてますし、あちらでも注目されてるのでしょうね。私も気に掛けておきます。
Posted by: おかか1968 | 2009.07.05 18:32
> マカオ管弦楽団が載ってるのに香港フィルがない
なにぃー!?香港フィル応援団長としては許せない!
マカオ管弦楽団の音楽總監のLu Jiaは大変素晴らしい
指揮者ですので、将来マカオOrch.が飛躍的成長を
遂げるとは思いますがね。
Posted by: ばってん | 2009.07.05 13:05