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2009.04.14

タローさんサティに行く

 アレクサンドル・タロー(以下「タローさん」)は、コンサートではプログラミングに必ず「ひねり」を加えます。スカルラッティとラヴェル「鏡」を交互演奏したり、クープランと「クープランの墓」をシャッフルしたり、ちょっとイタズラっぽい試みではあります。でもタローさんは、時間を超えて異なるモノを対置させることで起きるケミストリーというか、別の言葉で言えば「マッシュアップ」的な効果を狙っているのでしょう。そして化学反応は実際に起こるわけです。「道化師の朝の歌」の最後の和音が決まった後アタッカでスカルラッティの「ソナタ・ニ短調」(K141)などを弾かれたら、思わず「やられた!」と心の中で叫んじゃいます。

 そのように曲順が織りなす「妙」を表現しようとするタローさんは、きっとクラブのDJをやってもうまくやっていけると思います。

Tharaud_satie  でタローさんの最新作、サティ・アルバム(→amazon/HMV)は2枚組です。1枚目はタローさんのピアノ・ソロ。レーベル面が赤いので「赤盤」ですね。2枚目は他の器楽奏者とのデュオやシャンソンが収録されていて、こちらは白いレーベル面なので「白盤」ということにしましょう。でこの「赤盤」と「白盤」とで印象がすごく違って聞こえるのが、この2枚組の面白いところです。もう少し厳密に聞くと「赤盤」も「白盤」も、どちらもいつも通りのタローさんなんですよ。沈着冷静でさりげなく良い仕事するスマートな人、といった感じのピアノ演奏なのですけど。でもなぜか「赤盤」と「白盤」では印象が違う。

 その理由を考えていくとやはり、「赤盤」と「白盤」のセレクションの「妙」ということに行き着くのではないかと。同時代の作品にインスパイアされた皮肉っぽいタイトルの曲が並ぶ「赤」は、静的なたたずまいというか、ひとり部屋で身を潜めているような感じ。一方シャンソンや映画の付随音楽などが収録された「白」は、ガヤガヤした雰囲気のパリのカフェと「どこでもドア」で直結したかのよう。その対比が、実に面白い。

 あとタローさんのサティ演奏自体ですが、実に「正統派」です。小洒落たところを見せようとか、甘く囁いてみせようとか、これっぽちも思っていない。「正統派」でかつ「硬派」です。そんなストイックな演奏を聴きながら、「タローさんは、フランス鍵盤音楽の歴史において、サティをきちんと位置づけしようとしているのかな」とか思ったりしていました。それからシャンソンでヴォーカルを担当しているジュリエットさんがいい味出してる。ベルカントの立派な歌唱でないところが良い。

(関連エントリー)
たろーさんに会いたい… (2007年10月29日付)

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Comments

亭主さまこんばんは。

>大きな流れの中でのその作品は、とか、自分が今それを弾くこととは、という意識が見えますよね
そのあたりがタローさんの「個性」ではないかと。

Posted by: おかか1968 | 2009.04.15 at 22:21

そうそう、まさに歴史主義(違うか)というか、大きな流れの中でのその作品は、とか、自分が今それを弾くこととは、という意識が見えますよね、タローは。古代や中世の日本の歌人みたいな感じです。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2009.04.15 at 07:44

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Tracked on 2009.04.30 at 23:11

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