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2009.02.15

晴天に 月見に行くとは これいかに

Hamana_ko

 一昨日に春一番が吹いたからでしょうか。昨日はやたらポカポカ陽気で、一足早く春が来たような天気でした。パーカーを羽織って外へ出かけたのですが、余りに暖かくて途中で脱いじゃいました。

 でどこに行ったかというと…;

Tsukimi_no_sato01

 「これは北欧の集合住宅です」とキャプションを付けてもなんら違和感のないモダンな外観ですが実はコレ、静岡県・袋井にある公共施設です。名前は「月見の里学遊館」といいます。「月見の里」とは、なかなか趣のある名前です。山奥の温泉旅館っぽくもありますが。

 で私はこの施設内に併設された「うさぎホール」(これまた風流なネーミング:笑)で、「桐山建志と仲間たちによる古楽アンサンブル&小倉貴久子 ~秘密のコンチェルト~」と題されたコンサートを聞きに行ったわけですが、実に不思議な演奏会でしたね。メンデルスゾーンを聞きに来た筈なのに、メンデルスゾーンじゃないような。なんでそう思ったかというと、この日はメンデルスゾーンが10代前半の頃に書いた作品ばかりが演奏されたのですが、どれも作風が定まってないといいますか、彼「らしくない」作品が並んでいたのです。言い換えると、どの曲にもバッハ、ハイドン、モーツァルトにベートーヴェンといった、偉大な先人たちの影響が露骨なまでに感じられるのです。プログラム最初の「弦楽のための交響曲第7番」の第1楽章はブランデンブルグ協奏曲を連想させましたし、メインの「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲」の冒頭部は「モーツァルトがこの編成で曲書いたらこんな感じかな」みたいな音楽でした。もしかして、古楽器演奏でピッチがモダン・オケより低めだったから(未確認ですがA=435かな?)、そう感じたのかもしれません。やはり音程の低いヴァイオリンやチェロを聞くと、バッハを聞いているみたいな気分になってしまうもので。演奏家のパフォーマンス自体はとても素晴らしくて、日本では最高レベルの古楽演奏が楽しめたと思うんですけどね。

 で予定されたプログラムが全て終わり、鳴り止まない拍手に応えてアンコール演奏となったわけですが、そのとき独奏ヴァイオリンの桐山建志さんが「今日は皆様がご存じでない作品ばかりを演奏しましたが、今から皆様がよくご存じのメンデルスゾーンの曲を演奏します」と仰るので「ナニを演奏するんかいな」と思ったら結婚行進曲でした(確かに…笑)。個人的には、この日演奏されたニ短調でなく、有名な方のヴァイオリン協奏曲を「サワリだけでも…」と期待したんですけど(実際CD録音もありますし)。ということで次回はそっちを聞きたいなぁ、と思いながら帰途についたのでした。

 あともう一つ、袋井の公演で印象に残ったことがありまして、それは会場で配られたパンフレットです。このチラシでホールスタッフのひとりがお書きになった解説文が、普段コンサートで見かけるような類の一般的な(悪くいえば「紋切り型の」)モノとは、なんか違うんです。「どう違うの?」と聞かれると返事に困るのですけど、とにかくなんか「いい味出してる」んです。たとえば「ヴァイオリンとピアノのための協奏曲」の解説は、こんな具合です;

本日の最後を飾る大曲。メンデルスゾーン14歳の作品。実に聴き応えのある名曲で昨今演奏機会が増えているのも、さもありなんと思わせる。冒頭、ドラマティックな展開が予想される序奏部に続いてヴァイオリンとピアノがテーマをがっちり受け止め、「14歳、気合い入ってるな」と唸りたくなる。まさに、これぞニ短調!といった楽想である(後略)

 「14歳、気合い入ってるな」とは、クラシック演奏会のパンフレットに載せる文章としては、なかなか斬新ではないでしょうか。

 このあともニ短調という調性について(ちなみにこの演奏会、ニ短調の曲ばかりが演奏されました)書いた件があるんですけど、そこには;

(前略)この調性は、激しい感情であったり荘厳であったり、劇的で陰影のある楽想に用いられると言われています。例えばベートーヴェンの『交響曲第九番』、カール・オルフの『カルミナ・ブラーナ』など。インターネットで調べてみると、イルカの『なごり雪』や中島みゆきの『地上の星』もニ短調とのこと……そんな感じの調性です(後略)

 とあります。メンデルスゾーンの演奏会でまさか、中島みゆきの名前を見かけるとは…。恐れ入りました。こんな書き方をすると、この解説文に茶々を入れてるみたいに思われそうですが、でもこんな突拍子な発想ってとても大事だと思うんですよ。その「発想力」にいたく感心したので、思わず「この文章書かれた方どなたですか?」とホールスタッフにお尋ねして、著者に直接「面白かったですよ!」とお声を掛けてしまいました(笑)。そのあとこのスタッフの方から、うさぎホールの沿革とか今後のホール運営の展望とか(4月から指定管理者制度に移行するので大変だ、と仰ってました)、たくさんの貴重な話をお伺いすることができました。この場をお借りして御礼申し上げます。

(追伸)この日のお土産。

Fukuroi_miyage

 どちらもホールに隣接するジャスコで見つけました。左は「國香 純米吟醸」。地元・袋井の地酒です。これまでに経験したことのない味といいますか、なかなか個性的で、どこかメロンを思わせるような味ですね…。そういえば袋井はメロンの産地でしたね。で右は「栄醤油」。家にある醤油が切れそうだったので、本当に何気なく買ったのですが、HPを見ると天然醸造で、しかも手間暇かけて製造された「こだわりの醤油」のようです。これは封を開けるのが楽しみです(笑)。

(Program Note)
"Felix Mendelssohn Bartholdy - Secret Cocerto -"
Venue; Tsukiminosato Workshop Center Usagi Hall, Fukuroi, Shizuoka, Japan
Date; February 14, 2009

1. Mendelssohn: String Symphony No.7 in D minor
2. Mendelssohn: Violin Concerto in D minor
3. Mendelssohn: Largo and Allegro in D minor (Japan Premiere)
4. Mendelssohn: Concerto for Violin and Piano in D minor
5. (Encore) Mendelssohn: Wedding March from "A Midsummer Night's Dream"

Fortepiano: Kikuko Ogura
(Instrument: J.B. Streicher, 1845)
Violin solo: Takeshi Kiriyama
Violin: Rika Nabetani, Shinji Takahashi, Shiho Hiromi, Atsumi Hanazaki, Satoki Nagaoka, Naoko Imamura
Viola: Yoshiko Morita, Mina Fukazawa
Cello: Kaoru Hanazaki, Nakako Nishizawa
Double Bass: Shigeru Sakurai

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Posted by: www.nfcr.org | 2014.02.08 05:08

月見の里の戸舘さまこんばんは。先日はご多忙な中色々とぶしつけな質問をしてしまい、大変失礼いたしました。

6月の演奏会の案内、誠にありがとうございます。この団体(「ウェールズQと呼ばれていた4人組」と言うべきか…)に関するウワサは、弦楽四重奏界の情勢に明るい某ぺん氏のブログなどで、よく存じあげております。そのカルテットが月見の里でコンサートをなさるのですね。これは行ってみたい!高速道路も片道1000円になりましたし、時間が許せば駆けつけたいと思います。この頃には栄醤油も使い切ってそうですので、買い足しもできそうです(笑)。

Posted by: おかか1968 | 2009.04.20 20:31

こんにちは。月見の里学遊館の戸舘と申します。2月公演をお越しいただき誠にありがとうございました。拙文もお褒め頂き恐縮です。

今年度の当館はクラシックに関してはやや守りに入ったプログラムで、規模も小さいのですが、6月21日(日)に、昨年のミュンヘン国際で第3位入賞した日本人カルテットを招へいします。(ウェールズ弦楽四重奏団です。入賞時と中2人を入れ替え新星ウェールズとして7月にデビューするのですが、6月の時点ではもろもろの問題ゆえにまだウェールズを名乗れないそうです)。
来年よりスイスを拠点に常設カルテットとして活動する気鋭の日本人若手カルテットの演奏会、もしお時間がございましたらお越しください。それでは失礼します。

Posted by: 月見の里 | 2009.04.20 10:01

桐山さまこんばんは。まず、先日は素晴らしい演奏をどうもありがとうございました。

メンデルスゾーンの音楽は(今回演奏された曲も含めて)何度か耳にしておりますが、彼がドイツの先人たちの影響を受けたことを、これほどはっきりと感じ取れたのは今回が初めてです。そのことに驚いたもので、上記のような感想になりました。

今度はホ短調の方のヴァイオリン協奏曲を、ぜひ生で聞いてみたいです。そんな機会が訪れることを楽しみにしております。

Posted by: おかか1968 | 2009.02.18 00:42

ヴァイオリンの桐山です。実は、アンコールは最初、ホ短調のヴァイオリン協奏曲を考えていたのですが、管楽器のパートをピアノにアレンジしている時間が無くて・・・。次回(がもしあれば)そうしますね。

おっしゃるとおり、メンデルスゾーンの若い頃の作品は、モーツァルトやハイドン、J.S.バッハやC.P.E.バッハの影響が強く感じられます。先人たちの作品を研究してこのような作品を作りながら、徐々に自分のスタイルを確立していった作曲家なのだと思います。

Posted by: おおぐま | 2009.02.17 00:08

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