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2009.02.09

N響「わが祖国」に涙

 すでにネットのあちこちで絶賛されてますので、いささか「後出しジャンケン」になってしまいますけど、エリシュカ&N響の「わが祖国」、良かったです。いや「良かった」なんてもんじゃないですね。エリシュカほどの実力者なら、相当なレベルの演奏になるだろうことは予想できましたし、実際それを期待してわざわざNHKホールに足を運んだのですから。でもこれほど素晴らしい演奏をしてくれるとは…。「エリシュカさんありがとう」「N響ありがとう」と言いたい気分です。本当に私の想像の遙か上をいく、見事な演奏でした。弦楽器も木管楽器も金管も打楽器も、力のこもった迫力あるサウンドでしたし、これほど充実したオーケストラを目の前で聴かされて、しかも聴いている音楽がロマンティックでエネルギッシュで情感に溢れる「わが祖国」なのですから、これはもう泣くしかありませんよ。「シャールカ」の終結部のあたりで、自然と溢れて来たのですよ。コンサートで感極まってしまうというのは3年前に一度ありましたが、それ以来ですね。

 ところでエリシュカは、札幌交響楽団とドヴォルザーク「交響曲第6番」のディスクをリリースしていますが、私はその演奏の「勤勉さ」、すなわち「どんな音符も疎かにせず、各パートが丁寧にかっちり弾いていく、それによって充実した音楽が出来上っていく」ところが素晴らしい、とブログで書きました。その「勤勉さ」というのは、チェコ・フィルに限らず同国のオケに共通する特徴で(と私は思ってます)、そんな本場のオケの醸し出す雰囲気を、日本のオケからも感じることが出来て、私は素直に嬉しかったのです。

 で、この日のN響も実に勤勉でした。どのパートも労を厭わず、スメタナの楽譜に対して実に謙虚で、かつ献身的に取り組んでいたと思います。まあN響もプロ中のプロですから、普段から楽譜に忠実に演奏していると思います。しかしこの日のN響には、単なる「楽譜に忠実」以上の表現がありました。エリシュカの指導の賜物だと思うのですが、スメタナの記した楽譜に秘められていた素晴らしい音の数々が、大音量の中で「ググッ」と浮かび上がってくるのです。それがこの日の「わが祖国」を、より豊かなものにしていたと思います。

 一例を挙げましょう。「わが祖国」のなかで一番有名な「モルダウ」。その中で最もポピュラーな、あの主題が初めて現れる箇所です。

 (譜例1)

Moldau01_2

 (画像をクリックすると、大きく見やすくなります)
 
 この楽譜を初めてご覧になる方は、第1ヴァイオリンの美しい旋律の陰で、第2ヴァイオリン以下の弦楽パートが実に込み入った音の動きをしていることに驚かれるかもしれません。この細かいフレーズを一人で弾くのも大変なのに、皆で息を合わせ揃えないといけないのですから、伴奏は大変です。でこの日のN響の弦楽パートは実に良い仕事をしてましたね。アンサンブルはいつも以上に緻密でしたし、なにより音楽的でした。その結果、大河のうねりのような音の造形が生まれていました。

 あともう一つ。同じく「モルダウ」から、終結部で主題が長調へと転換し、音楽が輝かしい瞬間を迎える直前の混沌とした場面です(「IMSLP」にあったBreitkopf & Härtelのスコアだと、pdfファイルの48ページ目)。

 (譜例2)

Moldau02b_2

(やはり画像をクリックすると、大きく見やすくなります)

 赤い太線で強調した上昇音型は、なにを隠そう「モルダウ」の主題の変形なのですが、ここで弦バス(第2チェロとコントラバス)パートから半拍ずれて、第3トロンボーン&チューバが弦バスと同じ音型を演奏するという、なかなか他の管弦楽曲では見かけない低音楽器同士の「掛け合い」があるのです。一般的な演奏ならトロンボーンの方は聞こえても、弦バスのパートは大音響の中で埋もれてしまうものです。しかしこの日のエリシュカの「モルダウ」では、この「掛け合い」が実に明確に私の耳に届いてきたのです。ティンパニが轟きピッコロが響き渡る大音量の中、低弦楽器が「存在感」を示すためには、相当な労力が必要だったことは想像に難くありません。この日のN響の「勤勉さ」、音楽に尽くす姿勢は、この箇所でハッキリと感じ取ることが出来ました。

 ともあれこの日は、「ヴィシェフラド」冒頭部のハープから「ブラニーク」の最後のファンファーレまで、「わが祖国」の音楽世界を心行くまで堪能しました。この演奏会、一生の宝物になりそうです。

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Comments

ばってん様こんばんは。そうですか、滲み出ていますか。私の気持ちが伝わったようで嬉しい限りです。

そしてクーベリックとクリーブランドの「わが祖国」ですか…。これはレアですね。情報ありがとうございます。あとでじっくり拝聴させて頂きます。おっと、ハンカチを用意した方がいいですね(笑)。

Posted by: おかか1968 | 2009.02.10 at 00:20

うわぁ〜行間から”素晴らしかったぁー!”が滲み出ていますねぇ。これだからコンサートはやめられない、ですよね。
我が祖国、ぼくはクーベリーク&チェコフィルの大阪公演で思いっきり泣かされました。

ところで、おそらく裏青盤でも出た事がないクーベリークの我が祖国が、某DLサイトで出ていました。
http://www.mediafire.com/?ztamz3iumed
http://www.mediafire.com/?zegziaimmnk
http://www.mediafire.com/?myyztmy2iwu
Rafael Kubelik cond Cleveland Orchestra
Smetana Ma Vlast
Live Severance Hall Dec 9, 1976

この組み合わせを見るだけで泣けてきます!
クーベリーク、燃えに燃えています!
聴いているこっちも萌えに萌えます!

Posted by: ばってん | 2009.02.09 at 22:44

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