往年の名ピアニスト、アンドレ・チャイコフスキーの頭蓋骨が小道具として「ハムレット」の舞台に
先日ネット上でこんな記事を見つけました。
▼CNN.co.jp. 小道具の頭がい骨は本物だった 英劇団のハムレット公演
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(以下RSC)が「ハムレット」の舞台で(レプリカでなく)本物の人体の頭蓋骨を使っていたことを公演終了後に明らかにした、という記事です。
しかし音楽ファンにとって、それより興味深い事実があります。その頭蓋骨は、ポーランド出身のピアニストで、かつてRCAやパテ・マルコーニなどに数多くのレコーディングを遺したアンドレ・チャイコフスキー(1935-82)の「遺骨」なのです。
アンドレ・チャイコフスキー(写真上)は46歳の若さで大腸がんのために死去したのですが、彼は長い遺言状を残していました。その第13章は「私の体を臓器提供や医学研究などに役立てて欲しい」という内容でしたが、最後には「ただし、頭蓋骨だけはRSCに寄贈して舞台に用いてほしい」と書かれていました。
(写真)2008年のRSC公演「ハムレット」から。
David Tennant(左)が手にしているのが、アンドレ・チャイコフスキーの頭蓋骨
RSCの舞台に何度も足を運ぶなど、シェークスピアに造詣が深かったチャイコフスキーの遺志を尊重すべきだと考えたマネージャーは、知人を通じてRSCに故人の遺志を伝えます。劇団関係者は了承し、頭蓋骨は遺言通りRSCへと贈られるのですが、その後RSCは本物の頭蓋骨をなかなか実際の舞台に用いようとしませんでした。劇団員の中にも倫理的・道義的見地から、遺体の一部を舞台で用いることに反対する意見があり、そのことが小道具として頭蓋骨を用いることを躊躇させたようです。今回「ハムレット」での遺骨使用を公演終了後に発表したことについて、RSC側は「事前に発表すると、舞台が台無しになる恐れがあった。ハムレット役が手にしているのは本物の頭がい骨だという、そのことばかりに注目が集まるのを避けたかった」と述べていますが、やはり公演中に遺骨の使用の是非についての議論が沸騰することを避けたかったのでしょうね。
ところでアンドレ・チャイコフスキーが遺したもう一つの遺産である商業録音ですが、一時期Danteレーベルから(LPの板起こしと思われる)CDが何点かリリースされていましたが、最近では全くといっていいほど見かけなくなりました。その代わり、彼がRCAやコロンビアに残した録音の一部が「Andre Tchaikowsky Website」で公開されています。生前得意にしていたというショパンもなかなか味わい深い演奏でしたが、私が特に惹かれたのはバッハ「ゴルトベルク変奏曲」です。チャイコフスキーは若い頃、ワンダ・ランドフスカ門下のエマ・アルトベルクに師事したことがあるそうですが、そのことが何となく頷ける、そんな演奏です。
(参照)
Wikipedia - Andrzej Czajkowski
Andre Tchaikowsky Website - Story of the Skull
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Comments
Exϲellent site web Danielle
Posted by: Cool site web Prunella | 2014.03.23 11:06
Hayesさまこんばんは。
>80年代のレコ芸で三浦淳史さんが書いてた(以下略)
そうだったんですか!それは知りませんでした。きっと当時もファンの間では話題になってたのでしょうね。私はその頃、中学に入りたてで「レコ芸」はおろか、クラシック音楽にすら殆ど接していませんでしたから。
Posted by: おかか1968 | 2008.12.04 02:01
アンドレ・チャイコフスキーが死んで、遺言で頭蓋骨がハムレットの舞台で使われるようになったという話、80年代のレコ芸で三浦淳史さんが書いてたのを読んだ覚えがあります。なんと、ようやく実現したんですね。
Posted by: Hayes | 2008.12.03 23:45