エジソン・シリンダーによる1890年代の録音が復刻される
数々の歴史的演奏家の録音のCD化で知られる「Marston」レーベルが、およそ100年前の巨匠たちの録音を復刻した3枚組CD「The Dawn of Recordnig : The Julius Block Cylinders」をリリースします。
▼Marston - The Dawn of Recording: The Julius Block Cylinders
このアルバムには南アフリカ出身のビジネスマン、Julius H. Block氏自身が1889年から1927年にかけて収録したクラシック録音が収録されています。ロシアでタイプライターや自転車を売る仕事をしていた彼は、蓄音機の発明家エジソンとも親しい関係にありました。ピアノ演奏を趣味にしていたBlock氏は、エジソンの蓄音機を用いてワックスシリンダー数百個分のレコーディングをロシアで行いました。これらのシリンダーはBlock氏の転居と共にベルリンに渡ったのですが、第二次大戦の戦災を逃れるためシレジアに保管され、さらに戦後同地を占領した旧ソ連によってレニングラード(現サンクトペテルブルク)へと移管され、数年前まで誰にも知られることなく倉庫の奥に眠っていました。つまり今回の復刻に用いられたのは、戦争や冷戦を乗り越えた貴重なシリンダーなのです。
気になる収録曲ですが、アントン・アレンスキー(1861-1906)が自作「ピアノ三重奏曲第1番」を作曲直後に演奏したもの、セルゲイ・タネーエフ(1856-1915)の「ピアノ協奏曲第2番」の自作自演、そしてパウル・ユオン(1872-1940)の演奏が含まれています。また19世紀ロシアのピアノの巨匠、パーヴェル(ポール)・パブスト(1854-1897)の演奏、チャイコフスキーと親交のあったチェロ奏者アナトリー・ブランデュコフ(1858-1930)の録音、ヨーゼフ・ホフマン(1870-1956)の現存する最古の録音なども含まれています。限定盤ということですので、興味ある方は店頭で見かけたら即買いですね。
(参照)
New York Times - Classical Ghosts, Audible Once Again (October 24, 2008)
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