フィラデルフィア管 世界最大のオルガンと競演

　今月27日（現地時間）、アメリカの老舗デパート「メイシーズ」(Macy's)の創立150周年を記念して、フィラデルフィアでコンサートが開催されます。会場は同地のメイシーズの店内です。「ええっ!?デパートでコンサートですかぁ!?」と思っちゃいますが、実はこの店、世界最大のオルガン「ワナメイカー・オルガン」が設置されていることで、アメリカ国内では有名なのだそうです。今度の記念演奏会は、巨大オルガンと世界有数のオーケストラであるフィラデルフィア管弦楽団との競演、ということになります。

　このオルガンは元々、1904年にセントルイス万博のために製作されましたが、その後実業家のジョン・ワナメイカー氏に買い取られ、オルガンは同氏が経営するフィラデルフィアの百貨店「Wanamaker's department store」（※）へと移築されます。元々10,000本以上のパイプを持つ「巨大オルガン」ではありましたが、移築後もパイプの追加などの改造が積極的に行われ、さらには作曲家・オルガニストのマルセル・デュプレらの助言を取り入れるなどして、最終的には6段の鍵盤と729ストップ、そして28,482本のパイプを持つ「超弩級オルガン」ができあがりました。

　ワナメイカー・オルガンの歴史は、数々の音楽家たちによって彩られています。前述のデュプレ以外にもルイ・ヴィエルヌ、ナディア・ブーランジェ、ヴァージル・フォックスらがこのオルガンで演奏を行いました。またレオポルド・ストコフスキーが指揮するフィラデルフィア管とも1919年に「共演」しています。ベルギーの作曲家ジョゼフ・ジョンゲンは、1926年にワナメイカー・オルガンのために大作「協奏交響曲」を作曲しましたが、諸事情でフィラデルフィアでの初演が流れてしまい、今日まで同地で演奏されることはありませんでした。今月27日のコンサートでは「協奏交響曲」がようやくワナメイカー・オルガンで演奏される、という意味でも記念すべきコンサートになりそうです。

（写真）コンサート会場となる百貨店内の「Grand Court」

　当日はジョンゲンの作品以外に、映画音楽で有名なハワード・ショアの新作「ファンファーレ」、バッハの「トッカータとフーガ ニ短調」などが演奏されます。後者はストコフスキーの編曲による、オルガンと管弦楽によるバージョンです。フィラデルフィアですから、やはりストコフスキーは外せませんね。オルガン演奏はPeter Richard Conte、指揮はローゼン・ミラノフです。

（追記）ワナメイカー・オルガンについては、ブログ「甲斐田雅子のフィラデルフィアリポート」が詳しいです。またヴァージル・フォックスがここで演奏した「トッカータとフーガ」の動画がYouTubeにあります。

（※）「Wanamaker's department store」は、アメリカ初の大型百貨店。このデパートが「母の日」の普及に大きな役割を果たしたとも言われています。このデパートで財を成したワナメイカー氏は、のちに「百貨店王」と称えられました。
　なおこの店舗は同業他社の買収などを経て、現在はメイシーズの系列店舗「Macy's Center City Philadelphia」（→地図）となっています。

（参照）
Grand Court Organ, Wanamaker Dept. Store Philadelphia, PA
TheOneRing.net. Shore Helps Macy’s Celebrate 150th Anniversary. (August 8, 2008)
Wikipedia - Wanamaker Organ