武生国際音楽祭2008に行ってきました
福井に引っ越してから、毎年9月になると「武生国際音楽祭2008」に出かけるのが恒例となっている私ですが、今年も行ってきましたよ。今回は「細川俊夫と仲間たち」と題された室内楽コンサート(9/5:金)に出かけたのですが、福井に居ながらにして現代音楽の最先端に触れることが出来たという点で、実に有意義な演奏会だったと思います。
この日の演奏会で一番すばらしいと感じたのは、コンサートの構成です。まず当音楽祭の音楽監督である細川俊夫の最新作「さくら」(2008)と処女作「ウィンター・バード」(1978)が[対置される形で]続けて演奏され、そのあとフルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノという変わった編成の作品が2曲演奏されました。「変わった編成」と書きましたが、この組み合わせを見てピンと来た読者もおられるかもしれません。これはシェーンベルクが「月に憑かれたピエロ」で初めて採用して以来、多くの作曲家たちに好んで用いられた楽器編成で、いわば「20世紀室内楽のスタンダード」ともいえる組み合わせです。ですからこの編成は自ずとシェーンベルクを連想させるわけで、これが今年の音楽祭のコピーである「浄夜への誘ひ」へと繋がっていくわけです。このように何らかの「意図」を感じさせる知的で巧妙なプログラミングが、なかなか興味深く感じられました。
さてその「変わった編成」の2曲、伊藤弘之の「イン・ザ・ディム・ライト」と金子仁美の「連歌II」ですが、ともにオリジナルな魅力が感じられる作品でした。前者は微分音の使い方が実に効果的で、静謐ななかにも独特な緊張感を生んでいました。後者はDレンジもfレンジも極端に広く取った、室内楽の表現を極限まで追求したような作品でした。というより「ここで音楽が落ち着くのかな…」と思うといきなり大太鼓が「ドカン!」とやったりと、終始予測不可能な音の展開が続くので、結構ドギマギしてしまいました。
後半にはイザベル・ムンドリー(1963- )の作品が3曲演奏されました。彼女はシュターツカペレ・ドレスデンの2007/08シーズンの「Capell-Compositeur」(「コンポーザー・イン・レジデンス」的な位置づけか)を務め、さらには新作オペラ「Ein Atemzug — Die Odyssee」がベルリン・ドイツ・オペラで上演されています。これらの仕事ぶりから、彼女は「今ドイツで最も活躍している現代作曲家の一人」といえそうです。そんなムンドリーですが、会場では彼女の作風について「デュファイやマショーらのポリフォニーへの関心が強い」「繊細な音を積極的に使用する」と紹介していました。確かにそのとおりの音楽だったのですが、前半に演奏された日本人作曲家たちの作品も「繊細」な要素が多かったので、ムンドリーの音楽がとりわけ繊細だとは感じませんでした。ただ最後の「Sandschleifen」の後半部に、彼女ならではの「繊細な音世界」があったように思われました。
(Program Note)
Concert "Toshio Hosokawa and His Friends"
Date: September 5, 2008
Venue: Echizen City Cultural Center, Fukui, Japan
1.Toshio Hosokawa: Sakura (2008/Japanese Premiere)
2.Toshio Hosokawa: Winter Bird (1978)
3.Hiroyuki Itoh: In the Dim Light (2005)
4.Hitomi Kaneko: Renga II (1999)
5.Isabel Mundry: Spiegel Bilder (1997)
6.Isabel Mundry: Traces des moments (2000)
7.Isabel Mundry: Sandschleifen (2003/06)
Sho: Mayumi Miyata(1)
Violin: Keisuke Okazaki(2)
Piano: Junko Yamamoto(3,4,7)
Acoordion: Teodoro Anzellotti(5,6)
Next Mushroom Promotion(3-7)
Conductor: Ken-ichi Nakagawa(3,4)Ruediger Bohn (6,7)
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