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2008.08.18

チャン・イーモウは「口パクは私が決めた」と言ったけど…

 実は私、北京五輪の開会式のTV中継を見ていません。あのチャン・イーモウが総監督を務めることは知っていましたし、当ブログの準レギュラー(笑)ラン・ランもピアノ演奏で花を添えるという情報も入っていました。でもこの開会式がどのようなものになるのかを想像したとき、どこかで中華人民共和国「らしさ」を出してくるのでないか、という危惧があったので「そんな場面を目にして気分を害するよりは…」と思い、生で見ることを回避したのです。結局はロス五輪の体操競技で具志堅幸司の「好敵手」だった李寧さんの聖火点灯のシーンだけは見たものの(最終走者が誰なのかには興味があったので)、それ以外は再放送も観ていません。

 その後五輪開会式を巡って、幾つかの「偽装」とも言われかねない「演出」があったことが次々に明らかになりました。そのうちの一つ、いわゆる「口パク少女」の件について、チャン・イーモウ自身が日本のメディアにコメントしています。

少女の口パク「私が決めた」 五輪開会式総監督単独会見
(朝日新聞、2008年8月18日付)

 ここでチャン・イーモウ氏は「口パク少女」の出演は「私が決めた」と述べています。さらに「モラルの問題ではないし、そんなに重大な問題とは思わない」「一種の創作だ」ともコメントしています。

 この記事を目にしたときの私の率直な印象は「なぜ?」「どうして?」というものでした。チャン・イーモウといえば、紫禁城での「トゥーランドット」公演の演出家としても知られていますが、その舞台制作過程を収めたドキュメント(参照)の一番の見所は、どこまでも徹底して「本物」であることにこだわるチャン・イーモウの姿勢です。舞台を明代に設定した彼は、その当時の様式に合わせた舞台衣装400着を手縫いで作らせたのです。それほど「本物」であることにこだわる彼が、どうして口パクを「重大な問題ではない」と言えるのでしょうか。そのことが私にはいまだに信じられません。

 ここで思い出しておきたいのは、「口パク少女」事件の発端となった陳其鋼氏の発言です。CNNの報道によると、音楽総監督として五輪開会式に関わった陳氏は、以下のように述べています。

 (前略)音楽総監督の陳其鋼氏はラジオ局とのインタビューで、開会式で「表舞台」に立ったのは林妙可ちゃん(9)で、実際に「舞台裏」で歌ったのは楊沛宜ちゃん(7)だと明らかにした。

少女2人を起用し「口パク」を採用した理由を「国益」と述べる陳氏は、「カメラに映る少女は完璧(かんぺき)な容姿、内面からにじみ出る印象が必要だ。林妙可ちゃんはこれらの点からも、すばらしい少女だった」と説明している。

また、「口パク」は上層部による決定だと指摘し、「非常に厳しい基準があり、それを満たせなばならなかった。党の上層部からの強い指示だった」としている。 (後略)

 (以上、2008年8月13日付の記事から)

 陳氏は「口パクは党の上層部からの強い指示だった」とハッキリと述べているのです。これは「総監督の私が決めた」とするチャン・イーモウの言葉と、明らかに矛盾するものです。真実を語っているのは、果たしてどちらなのでしょうか。

 今のところ真相は闇の中です。でももし、チャン・イーモウが語ったことが事実に反していたとしても、私は彼に深く同情します。中国は社会主義国なのですから。

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