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2008.06.24

ブランデンブルグ七重奏曲

 22日(日)は名古屋で所用があったので、遠出したついでにバッハ・コレギウム・ジャパン(以下BCJ)の「ブランデンブルグ協奏曲」全曲演奏会に行ってきました。

 今回BCJは「肩に掛けて弾くチェロ」、ヴィオロンチェロ・ダ・スパラ(以下「スパラ」)を「第1番」「第5番」以外の4曲で採用しました。この効果のほどを確かめるべく、私はしらかわホールまで足を運んだのですが、このコンサートで個人的にスパラ以上の「サプライズ」がありました。それは「ブランデンブルグ協奏曲第5番」がたった7人で演奏されたことです。この有名曲を、これほどの小編成で聞くのは初体験だったもので、演奏者たちが入場したときは少々面食らいました。確かにこの日は「第5番」以外の5曲も「各パート1人で」演奏されたので、BCJがその流儀を貫いたといえばそうなのですが、舞台上の奏者が7人て「協奏曲」というより室内楽ですよ。「ブランデンブルグ七重奏曲」ですよ。

 でもこの日演奏された6曲のなかで、「第5番」が音楽的に最も充実していたように感じられたのは何故でしょう。その一つは、やはり足の間に挟むチェロ(以下ここでは便宜上「ガンバ」と記す)を用いたことで、低音の充実ぶりがはっきりと感じ取れたことです。ほんとうにガンバの「効果」は絶大でした。「レオポルド・モーツァルトが『チェロは最近(管理人註:18世紀中頃か?)になって足の間に挟んで弾くようになった』と自著に記している」と、コンサート前の前口上で鈴木雅明氏が述べておられましたが、それはやはり低音の響きの豊かさという点で、ガンバがスパラに勝っていたことがポイントになったのではないでしょうか。ここで私は当時の音楽界で起きていた二つの大きな地殻変動、すなわち「演奏会場の変革」(宮廷からコンサートホールへ)と「作曲様式の変革」(ポリフォニーからホモフォニーへ)とダブらせながら「会場が広くなると『より豊かな響き』が求められるだろうし、対位法的な音楽よりも和声的な音楽の方が、低音楽器に『低音らしい響き』が求められただろうな」と想像力の翼を羽ばたかせてみたのですが。おっと、ここから先は音楽学者の領域ですね。

 この日の演奏に話を戻します。「第5番」が魅力的なパフォーマンスとなったもう一つの要因は、「各パート1人で」演奏したこと自体にあると思います。各パートに複数名のメンバーを配置したオケが演奏すると、音量的にソロ楽器群がどうしても埋没してしまうところですが、ソリスト3人にオーケストラ 4人という小編成をとることで、ソリスト陣とオケとの「力関係」がより均衡したものとなり、それがソリストたちの妙技をより際だたせていました。寺神戸さんの「職人芸」は本当に「いつもながら」の安定ぶりでしたが、それに加えてフラウト・トラヴェルソの繊細な音色(と菅きよみさんの良い仕事ぶり)が、アンサンブルに埋没することなく確実に伝わってきたのは驚きでした。そして「第5番」の「華」であるチェンバロ(奏者はもちろん鈴木雅明氏)が、この日はひときわ輝いていました。その存在感はまさに「将軍」と呼びたくなるほどでした。

(追記)「第5番」以外に登場した奏者たちでは、「第1番」のオーボエ群(三宮正満、前橋ゆかり、尾崎温子)と「第2番」のリコーダー(山岡重治)が出色の出来でした。特に「第2番」でリコーダーがこれほど「気になる」というのは、滅多とないことではないでしょうか。もしかしたら、この曲がスパラ使用曲だったというのが、アンサンブルのバランス的に良い方向に働き、リコーダーの魅力を引き出していたのかも知れません。

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Comments

>Sonnenfleckさま
そうです、私は「しらかわ民」でした(笑)。あのホールで室内楽を聞くのが好きなんですよ。

でスパラですが「もっと大きいサイズだったら、もっと低音が豊かになってチェロっぽく聞こえるんだが…」とか思いながら聞いてました。

http://bloomingsound.air-nifty.com/ongei/2006/03/001_f6c7.html
↑バディアロフ氏はかつて「現代のチェロほどの大きさでも、肩の上で演奏された可能性が高い」と語っています。今度はソレを見たいですね。

Posted by: おかか1968 | 2008.06.25 08:03

同じしらかわ民でしたか>日曜日
第5番はおっしゃるとおり親密な響きでしたね。トリオ・ソナタ式に演奏された第2楽章なんか、ちょっとアダルトな雰囲気で好ましかったです。

音を聴きながら、きっとスパラの小さなものはヴィオラに、大きなものはヴィオロンチェロ・「ダ・ガンバ」にそれぞれ収斂されていったのだろうなあということを想像しました。今回は「規格品」がなかった時代の最後の煌めきを甦らせて聴かせてくれた、ということですかね。

Posted by: Sonnenfleck | 2008.06.25 07:08

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» 「BCJのブランデンブルク」全曲演奏会@名古屋 [庭は夏の日ざかり]
【2008年6月22日(日)16:00~ しらかわホール】 ●バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1~6番 BWV1046-51 →島田俊雄(Tp)、トーマス・ミュラー、オリヴィエ・ダルベレイ(Cor)   山岡重治、向江昭雄(Rec)、菅きよみ(Ft)   三宮正満、前橋ゆかり、尾崎温子(Ob)、功刀貴子(Fg)、   寺神戸亮(Vo-pic、Vn、Spl)、   フランソワ・フェルナンデス(Va、Spl)、ディミトリー・バディアロフ(Vn、Spl)、   若松夏美(Vn、Va)、高田あ... [Read More]

Tracked on 2008.06.25 06:58

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