TVで見たイエス・キリスト教会
先日「題名のない音楽会」を見ていたら、新司会者の佐渡裕氏が「新録音の仕事の下見」と称してベルリンのイエス・キリスト教会を訪れていました。私はTVに映し出される教会内部の映像を見て「おおっ!カラヤンのレコードで見たのと一緒じゃん!」と心の中で叫んでしまいました。そう思ったのは私だけでなかったようで、佐渡さんもステンドグラスに目をやると「カラヤンがジャケット写真に使ったのはこのアングルから撮ったやつじゃないかな」みたいなことを話しながら、カラヤンの立ち姿を真似たりしていました。
イエス・キリスト教会といえば、かつてレコード各社がセッション録音に好んで用いた場所として、中年以上のクラシック音楽ファンにはおなじみではないでしょうか。レコード音楽産業華やかなりし頃は(同教会のように)録音に重用される建築物が、欧州各都市に存在していました。ドレスデンの聖ルカ教会、ウィーンのゾフィエンザール、ロンドンのキングスウェイ・ホールといった名前は、ジャケ裏などで随分と目にしたものです。現在ゾフィエンザールは火災で焼け落ちた後廃墟となっているそうですし、キングスウェイ・ホールは解体されて、今は同じ場所に同じ名前を冠したホテルが建っています。低調な現代のレコード業界を象徴するような、寂しい話であります。
ところでイエス・キリスト教会でレコーディングを行った指揮者は、カラヤン以外にもたくさんいます。晩年のフルトヴェングラーもここでレコーディングしましたし、オトマール・スウィトナーの数多くの録音も、この教会で収録されました。フリッチャイの「第九」(→アマゾン)やバルビローリのマーラー「交響曲第9番」(→同)など、今なお「ベスト・バイ」と讃えられる名盤の録音も、ここで行われました。
私にとって、イエス・キリスト教会のベスト・レコーディングはカール・ベームがベルリン・フィルを指揮したブラームス「交響曲第1番」(写真:→アマゾン)です。実は小さい頃、私が最初に聴いた「ブラ1」がこの演奏なのですが(もちろん当時メディアはアナログ、LPでした)、自宅の貧弱なステレオからでもベルリン・フィルの「凄み」は十分に伝わってきて「おおっ、これが一流のオーケストラ・サウンドというものか」と感動したのを憶えています。また壮年期のベームが見せる燃焼ぶり(特にフィナーレ)など、晩年の彼には見られない特徴も随所に見られ、その辺りも「聞きもの」となっています。
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