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2008.05.20

プレトニョフの「田園」 そして「ヘンな演奏」について

 巷で「ヘンだ」「ヘンだ」と評判のプレトニョフ指揮のベートーヴェンを、私もようやく聴くことができました。といってもCD演奏ではなくて、今年4月にパリのサル・プレイエルで行われたライヴから交響曲第6番「田園」をウェブラジオで聞いたのですが、「んんっ!?思ったよりもちゃんとしてるかも…」というのが第1印象でした。
 確かにあの二段ロケット的展開の第1楽章冒頭部、第4楽章の嵐の場面でのコントラバスのしゃかりき具合、第5楽章突入直前の間延びしたクラリネットとホルンのソロ(一瞬マーラーが始まったかとオモタ)など、「大笑」ポイントは散見されたものの、やや気まぐれなプレトニョフの棒に、きちんと合わせてくるロシア・ナショナル管の合奏能力の高さには素直に驚かされました。ソロパートなどでは各奏者の技量も高さもうかがえますし、かなりポテンシャルの高いオケだと思います。そしてオケが上手いと、いくら局所的にエキセントリックであっても、音楽に妙な説得力が出てくるのが不思議なところです。第二ロケット噴射(爆)後の第1楽章の爽快さ、第2楽章の川の流れのような流麗さは聞きものでしたし、明朗なフィナーレも悪くなかったです。

 というかここで私は「ヘンな演奏」と称されるものについて、改めて問い直したいと思います。まあ「ヘンな演奏」という呼び方はどう考えても褒め言葉では無いでしょうが、「ヘンな演奏」とは何を指すのか。単にこれまでと違うテンポで演奏したら「ヘンな演奏」なのか。一般的な解釈と異なるアプローチなら「ヘンな演奏」になってしまうのか。そこを問いたい(←政治評論家風)。大体「前例と違うから」という理由だけで「ヘン」と決めつけるのっておかしいと思います(←生徒会長風)。一風変わってるかもしれないけど、その中にキラリと光る部分もあるかもしれないのです。「ヘン」というレッテル貼りが、物の本質を見えにくくしてしまう危険があるような、そんな気がするのです。
 ここでグールドの「ゴルトベルク変奏曲」を思い出しましょう。これはリリース当初、相当「ヘンな演奏」に思われたでしょうが、今やそれが「スタンダード」ですからね。何度も何度も聞かれていく間に、世評が「邪道」から「正道」へとコペルニクス的転回を見せることもあるのです。ですから、プレトニョフのベートーヴェンの交響曲も、何十年後かには「これぞ名演!」「究極のベートーヴェン演奏!」と高く評価される…、かどうかは判りませんが(苦笑)、全くあり得ないとは言い切れないのではないかな、とは思います。

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