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2008.04.27

ひび割れてない骨董品

 昨日(4/26)は東京オペラシティで東京交響楽団を聴きました。お目当てはベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」を演奏するイダ・ヘンデルです。それにしてもこの日の彼女のヴァイオリン演奏を、どんな言葉で形容したらいいのでしょう。「いやー、恐れ入りました」としか言いようがありません。

 全盛期と比べてどうか、なんて事は私には判りません(第一彼女の全盛期なんて知らんし)。現在第一線で活躍している名手(たとえばヒラリー・ハーン)とくらべてどうだとかこうだとかなんて書くのも野暮だと思います。音がすごく小さかった、というところにはさすがに年齢を感じてしまいましたが、E線のハイポジションの音程はきっちりと取れていましたし、早いパッセージもしっかりと弾ききっていました。「ヨレヨレだったらどうしよう…」と正直思っていたのですが(シャンドール・ヴェーグや江藤俊哉といった名手たちも、最晩年はそんな感じでしたから)、決してそんなことはありませんでした。いくつかミスも散見されましたが、ともかくこの日は「年齢の割に」なんてことを考える余地を観客に与えず、純粋に楽しんで聴くことが出来ました。それだけでもヨカッタのではないでしょうか。ベートーヴェンの第2楽章後半部からの独特な雰囲気は聞き物でしたし、第3楽章は「えっ、そのテンポで大丈夫?」と思うほど、普通に早いテンポで軽快に音を鳴らしていました。

 でこの日最大の見せ場はここからでした。アンコールのチャイコフスキー「ロシアの踊り」(ヘンデル自身のアレンジによるヴァイオリン独奏でした)での鮮やかで熱い弾きっぷり。そして何より、彼女が出す音すべてに含蓄がありました。80代であれだけの演奏ができるものなのか。いやー、恐れ入りました。

 あと共演したシャン・ジャンについても触れておきましょうか。すでにニューヨーク・フィルを指揮した経験もある中国の若手で、以前その活躍ぶりを当ブログで紹介したこともあります。この日の東京での演奏はネット上でずいぶん評判が良いのですが、個人的にはシューマン「交響曲第4番」はもっと内声部を聞かせて欲しかったですし、繊細な表現も足りないような気がしました。ただオケの響きはダイナミックで、溌剌としたテンポ感も感じられましたし、オケを統率する能力は十分に持っているようです。「チョン・ミョンフンに近いキャラかな」と私は思いました。

(Program Note)
Tokyo Symphony Orchestra
Tokyo Opera City Series No.43
Violin: Ida Haendel
Conductor: Xian Zhang
Date: April 26, 2008
Venue: Tokyo Opera City Concert Hall

1.Beethoven: Leonore Overture No.3 Op.72b
2.Schumann: Symphony No.4 in D minor Op.120
3.Beethoven: Violin Concerto in D major Op.61
4.(Encore)Tchaikovsky/Haendel: Russian Dance (from "Swan Lake")

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