シュニトケの「蝶々」
1972年に旧ソ連で製作されたアニメに「蝶々」という作品があります。監督はアンドレイ・フルジャノーフスキー。音楽はアルフレット・シュニトケが担当しています。アニメの前半部がYouTubeにありましたのでどうぞ。
蝶々がひらひらと舞う場面(2'00"過ぎあたり)でシュニトケが付けた、可憐で愛らしい音楽は、なかなかに印象的です。
この「蝶々」の音楽を、シュニトケは後の作品で大々的に引用しています。彼の作品中最も有名なものの一つ、「合奏協奏曲第1番」(1977)です。
「蝶々」の旋律は第5楽章「ロンド」で現れます。
過去の作品の旋律を引用するという手法は、シューベルトやマーラー、そしてシュニトケの先輩であるショスタコーヴィチにも認められるので、別段驚きではありません。ただ、空を自由に飛ぶ蝶々の可憐なテーマが、刺激的でヒステリックな弦の叫びが交錯する、凄惨な音楽へと変貌を遂げている、というのはなかなか興味深いです。1974年、「交響曲第1番」を外国人立入禁止の秘密都市であるゴーリキーで(まるで隠し事のようにひっそりと)初演するも当局から演奏を禁じられてしまい、悶々としていたシュニトケ。彼はスペインで映画賞を受賞したという「蝶々」に何を託したのでしょうか。
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