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2008.01.22

オトコの唄に男が惚れて マックス・エマヌエル・ツェンチッチ

 先日YouTubeで動画を探してたら、こんなのを見つけました。

 「セミラーミデ」第2幕、アルサーチェのアリア「かくも酷い災いのさなか」なのですけど、いやこれは衝撃映像でした。スキンヘッドで顎に髭を蓄えた男が、容貌に似合わず超高音のコロラトゥーラを巧みに操るわけですから…。個人的にアルサーチェといえば、かつてMETでこの役を歌ったマリリン・ホーンのイメージが強いわけで、それが脳に染み付いているからこそ、男装した女性歌手(いわゆる「ズボン役」)でなく、男が(しかもスキンヘッドでヒゲ面の男が)この難アリアをいとも容易にクリアしていく様に、吃驚仰天したわけです。

 「ちょっとこれヤバイ…」。私は「Cencic」というクロアチア風の名前を確認すると、アマゾンやHMVの検索窓に名前を入力し、このテニスプレーヤーみたいな風貌のスキンヘッド男(←いい加減しつこい:笑)のCDをサーチしました。どうやらアルサーチェのアリアが収められたアルバムが既に出ているようです。「しかし…。今すぐ聴きたいんだよ…。そだ。iTunesを探そ」。iTunesストアを探すと…。あっけなく見つかりました。もう迷わずクリック&ダウンロードです。「これ欲しい!」と思ってから実際にアルバムを入手するまで、一時間もかからなかったと思います。なんとも便利な時代になったものですが、実はこのYouTube動画、仏EMIがお墨付きを与えた「公認」のプロモーション用動画でして、私は罠にまんまと嵌ったわけです(苦笑)。でもまあ、EMIによるYouTubeの有効活用は、「Web 2.0」の時代に相応しいプロモーション戦略といえるでしょう。
 でこのツェンチッチのロッシーニ・アリア集を堪能したあと、この若者がいかなる人物なのかを知るためにググってみたところ…。もうワンサカ出てきて驚いたのですが、中でも一番の驚きは、彼がウィーン少年合唱団の元団員だったということ、そしてその頃から、ツェンチッチはファンのあいだで注目の的だったということです。私はボーイソプラノといえばどうしてもアレッド・ジョーンズを思い出してしまうのですが、今彼は公衆の前で歌う機会が激減し「BBC Radio 3」などでMCを務めたりしています。だからこそボーイソプラノとして活躍した後に、大人になっても声楽家としての「輝き」を更に増している、という事実はまさに驚嘆に値します。
 ツェンチッチは既にオペラの舞台でも大活躍のようで、最近では日本のオペラ好きの間でも話題となったランディ「聖アレッシオ」(クリスティ指揮)にも出演しています。この舞台でツェンチッチは、主人公の妻(!)を演じています。つまり「ズボン役」ならぬ「スカート役」というわけです。その証拠映像はこちらにありますので、興味ある方はどうぞ。
 過去にも傑出したカウンターテノールが登場したときには、随分と驚かされたものです。ドミニク・ヴィス然り、アンドレアス・ショル然り。しかしこのツェンチッチの場合は、驚きの「レベル」が完全に別ランクです。彼の声は、他のどのカウンターテノールよりも力強く、そして「男性的」です。彼の今後の活躍が、実に楽しみです。

(関連記事)
Max Emanuel Cencic Official Site
BOY’S VOICE ~永遠の少年たち~ 来日ボーイソプラノ・ソリスト列伝(5)マックス・E・チェンチッチ
↑少年時代のツェンチッチの歌唱にもリンクが貼られています。
YouTube - EMI Music France
↑ツェンチッチ以外にも、ナタリー・デセイによる「キャンディード」からのアリア、カプソン兄弟のレコーディング風景などの動画が見られます。

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