やっぱり行くのか…。ニューヨーク・フィル、平壌へ
ニューヨーク・フィル(以下NYフィル)が来年2月に北朝鮮・平壌で演奏会を開く、と今日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙が報じています(参照)。「正式発表は明日」とのことですので、これは同紙のスクープ記事でしょう。今年夏「北朝鮮がNYフィルに対しコンサート開催を打診した」と聞いたとき、私は「まさか…。天下のNYフィルが金正日のオファーを受けるわけないやん…」と一笑に付したものです。しかし現実は信じられないほどのスピードで動いています。皆様もご存知の通り、金融制裁の緩和以後、米国と北朝鮮は外交的対話を活発化させています。そんな中で開催される「NYフィル・イン・平壌」は、単なるコンサートとしてではなく、最近の両国の「急接近」を象徴する出来事として、全世界が注目することでしょう。しかもNYフィルは平壌でのコンサートのあと韓国・ソウルに立ち寄り、同地で演奏会を開くというのです。「南北融和」の雰囲気づくりに一役買うことになりそうな、このNYフィルの振る舞いを、私はどう解釈すれば良いのでしょうか。
ところで「共産主義政権下での『西側の』オケの演奏会」と聞いて、私は幾つかのエピソードを思い出しました。唐突ですが、ここで「ショスタコーヴィチの証言」から勝手に引用します。
オーストリアの指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンがモスクワにきたときはたいへんな人気で、入場券を手に入れるのが困難だった、劇場の入口には、騎馬隊を含む民警が出動していた。だが(ピアニストのマリア・)ユージナはスカートをひろげて、劇場の前の歩道にすわりこんだ。当然のことながら、民警が彼女のそばに歩み寄り、「それは法に違反します、あなた、どうしたというのです?」とたずねた。すると、ユージナは、「演奏会に入れてくれるまで、立ちませんから」と答えた。
(以上引用おわり)
来年2月の平壌の会場前で、このような光景は見られるのでしょうか。
あと(これまた唐突ですが)プレヴィン&ロンドン響のラフマニノフ「交響曲第2番」(EMI)のオリジナル・ライナーノートには、プレヴィンたちがモスクワで同曲を演奏した後、感激した観客から「演奏のお礼に」と1個のオレンジをプレゼントされた、というエピソードが紹介されています。慢性的な「モノ不足」に悩まされた当時のソ連らしいエピソードですが、このような一般人との(真の意味での)交流が、現在の平壌では可能なのでしょうか。
(関連記事)
NYフィルが2月に平壌で初公演(MSN産経、December 10, 2007)
NYフィル、2月26日に平壌で公演…米紙報道(読売新聞、December 10, 2007)
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