クリスマス・イヴに「無名名曲」を聴く
「無名名曲鑑賞会」(鈴木康之、矢口正巳共著、文化書房博文社)というタイトルの本があります。巻末に「1994年6月30日 第一刷」とあるので、10年以上前の著作物ということになります。この本では(題名から推察される通り)普段余り聴く機会に恵まれない「隠れた名曲」76曲が紹介されていて、駆け出しのクラヲタだった頃の私は「へぇ、こんな曲があるのか」「クラシックって奥が深いなぁ」と感心しながら読んだ思い出があります。この本を先日自宅に立ち寄った折に持ち帰り、ほぼ10年ぶりに読み返してみたのですが、一昔前の「無名名曲」というのは今でも「無名」のままなのだ、ということを痛感してしまいました。この本で取り上げられている76曲のうち、「メジャー」に「昇格」した曲といえばショスタコーヴィチの「ヴァイオリン協奏曲第1番」しか思い当たりません。というか十年前はこの名曲も「無名」扱いだった、ということに軽いショックを覚えたのですが。
ともあれ著者たちの「クラシック音楽愛」にあふれる筆致で埋め尽くされたこの本を読むうちに、同書で紹介されている「無名名曲」が無性に聴きたくなってしまいまして、「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」(※:有料、要登録:以下NML)で色々と聴いてみました。サンサーンスの「オルガン付」をもう一歩シリアスに「深化」させたようなウィドール「交響曲第3番」(→NML)にはいたく感銘を受けましたし、アメリカの作曲家アーサー・フットの「ピアノ三重奏曲第2番」(→同)のフィナーレの洗練された筆致には感心させられました。そしてマルトゥッチ「交響曲第2番」(→同)では曲自体もさることながら、このシンフォニックな曲の魅力を余すところなく表現したマレーシア・フィルの優れたテクニックにも舌を巻きました。これだけ立派にオーケストラ・サウンドを響かせるオーケストラは、日本でもなかなかお目にかかれないかもしれません。
そうこうしてるうちに私の心の中にも私的な「無名名曲」があることに思い当たり、それらを立て続けに聞くことにしました。クルト・アッテルベリの「チェロ協奏曲」同)、ステンハンマルの「ピアノ協奏曲第1番」(→同)などを聞き進めながら、曲の価値を測る尺度には「有名」か「無名」かではなく、「いい曲」か「悪い曲」かしか無いのだな、ということを改めて実感した次第です。
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Comments
木曽さまこんばんは。
>マーケットプレイスで古本が5000円
そうなんですよね。定価は1980円ですから、約2.5倍のプレミアが付いてます。再販してもらいたいものですね。
Posted by: おかか1968 | 2007.12.28 20:41
おお、読んでみたいですね、この本。
いまamazonで検索したら、マーケットプレイスで古本が5000円でした・・・。
こりゃちょっと無理だなあ。
Posted by: 木曽のあばら屋 | 2007.12.27 22:52