ラヤトンの「悲しきワルツ」
ラハティ交響楽団との共演アルバムを聞いて以来、私はすっかりフィンランドのアカペラ・ヴォーカル・グループ「ラヤトン」(Rajaton)にハマっちゃってるのですが、そんなラヤトンの最新アルバムが出ました。タイトルは「Maa」。フィンランド語で「大地」という意味だそうです。
全編歌詞がフィンランド語というこのアルバム、私は一通り聞きとおした後「ああ、いつものラヤトンだな」と思いました。堅実なテクニックをそれとなく披露しつつ、ポップで楽しいアルバムに仕上がってるな、と。そう思いつつ何気なく歌詞を見ようとブックレットに目を落とした私は「えっ!」と驚きました。
そこにはフィンランドを代表する詩人エイノ・レイノ(写真:1878-1926)の名前があったのです。一方で音楽は、ラヤトンのメンバーや(ミカ・マカロフら)外部のスタッフによるオリジナルの旋律です。つまりフィンランド文学界の巨匠の詩に、現代ポップスの旋律を乗っけるという、いわば「荒業」です。日本でいえば、北原白秋や石川啄木の詩にユーミンやミスチルが曲を付けるようなものです(ちょっと違うかも知れんが)。ラヤトンはいつもアルバムに何か「仕掛け」をするのですが、今回のはいささか大胆かな、と思いました。しかし私は歌詞カードを見てソレに気づいてしまったから「おっ!」と思ったわけで、そのことに気づかなければ「あぁ、いつもながらクオリティの高いアルバムだなぁ」と思うだけで済んだことでしょう。むしろ今回は知りすぎない方が良かったのかもしれません。
さて、このアルバムの最終トラックには、シベリウスの「悲しきワルツ」が収められています。最初独アマゾンを一瞥して「Valse triste」とあったので「もしかして…」と思ってはいたのですが、実際に音で聴くまではホントにシベリウスをカヴァーするとは思いも寄りませんでした。正直あの曲をアカペラでやるというのが信じられなかったのです。しかしこの「悲しきワルツ」が、実に素晴らしい出来栄えだったりするのです。低弦のピチカート、漂うような旋律、そして危ういワルツのリズム。それらが全て人間の「声」に見事に移植されています。いやはや参りました。
(※)なお、このアルバムはラヤトンの公式サイトからも購入可能です。
(関連動画)
↑ラヤトンにとって名刺代わりの楽曲「Butterfly」。ライヴ会場のサウンドチェックを収めたというこの動画だが、何というクオリティの高さだろう。
↑時節に相応しく(笑)「ジングル・ベル」です。
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