Sound of Silence (and Siren)
こんばんは、おかかです。それにしても最近急に寒くなりましたね。読者の中には、かぜやインフルエンザにかかってしまわれた方も多いかと思います。くれぐれもお体には十分お気をつけくださいませ。
さて「かぜ」といえば付き物なのが「咳」です。この咳、演奏会のときに会場のあちこちで耳にするものでもあります。楽章間だけでなく、演奏の途中でも(特に静かな箇所で)「コホン」「オホン」とサラウンドで聞こえてくる「咳」。これは何も日本だけのでなく、万国共通の事象であります。
今月13日、カーネギー・ホールでベルリン・フィルがマーラー「交響曲第9番」の第1楽章を演奏し終えたときにも、客席からは咳払いが沸き起こりました。それを聞いた指揮者のサー・サイモン・ラトルは突然、指揮台を降りて客席のほうに向いて語り始めました。「この作品は『静寂』から始まり、『静寂』のうちに終わるものです」「客席の皆様が『静寂』を保つことで、作品の世界は現実のものになるのです」と言うと、ハンカチをポケットから取り出し、口に当てるゼスチュアーをしました。世界トップクラスのオーケストラの首席指揮者が、咳払いの音を鎮める方法を観客にレクチャーしたわけです。
マエストロの「指導」の効果は絶大でした。残りの楽章では、楽章間に見事な「静寂」の世界が作りだされました。しかし「指導」の行き届かないところもありました。第4楽章の最後の最後で、ホール前の道路を救急車が通り過ぎたのです。マーラーの音楽にエドガー・ヴァレーズが紛れこんだ瞬間でしたが、オーケストラと会場に詰めかけた聴衆は臆することなくアダージョ楽章の最後の「静寂」を保ち続けたのでした。
(参照)
New York Times. Berlin in Lights: The Magic of Silence. (November 14, 2007)
of mild interest. Mahler 9. (November 14, 2007)
Guardian. Rattled conductor silences cougher. (November 16, 2007)
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