「エルガー生誕150年記念」CDを聞く
エルガー生誕150周年を記念して、ユニヴァーサルから廉価版シリーズがリリースされました。私もCD店で何枚か買おうとしたのですが、チョン・キョンファの「ヴァイオリン協奏曲」とマッケラスの「交響曲第1番」は店頭在庫を切らしているとの事でした。一枚あたり1200円という値ごろ感もあり、既に結構な枚数が売れてるようです。
この日は結局マッケラスの「交響曲第2番」(UCCD-3899)と、「歴史的録音集」(UCCD-3908:写真)の2枚をゲットしました。前者は演奏は悪くないのですが、もうちょっとワンランク上の「風格」のようなものが欲しいな、と思いました(「今」のマッケラスなら、その辺りはクリアしてくれそうなのですけどね)。一方後者は英デッカにとって最良の時期(と私が勝手に思ってる)、1950年代から60年代前半にかけてのレコーディングを寄せ集めた「オムニバス」なのですが、これが結構馬鹿にできない面白さでした。
とくにピカイチだったのはサー・アーサー・ブリスが指揮する「威風堂々」。所々細かいところに「綻び」が無くも無いのですが、緊張感あるサウンド、そして折り目正しい整然としたテンポ感がたまりません。きちっとノリ付けされアイロンを当てられたワイシャツのような清清しさがあります。なんだか生活感あふれる表現になってしまいました。言い換えると「いかり肩の兵士たちが胸を張り緊張した面持ちで行進している様子が眼に浮かぶ」、そんな演奏です。これほどまでに威風堂々とした「威風堂々」の録音があったでしょうか(いやない)。まさに「ジ・威風堂々」、「威風堂々・オブ・威風堂々」です。この後のアンソニー・コリンズ(あのシベリウス・ツィクルスのコリンズです)の「序奏とアレグロ」「弦楽セレナード」も、早めのテンポでありながら浮ついたところがなく、しっかり音楽を聞かせてくれていますし、最後のボールト卿の「バイエルンの踊り」も(いつもながらに)素晴らしい。実にバラエティに富んだアルバムです。あとはジャケ写がもうちょっと凝っていればなお良かったのですけど。まあコンピレーションですからね、仕方ありません。
あと同シリーズでは、晩年の傑作「弦楽四重奏曲」と「ピアノ五重奏曲」を収めた1枚(UCCD-3905)も「買い」です。私は初回発売時のオリジナル盤を持っているのですが、「チェロ協奏曲」の延長線上にある味わい深い音楽には、聴くたびに魅了されます。こうなると「ヴァイオリン・ソナタ」も聴きたくなるところですが、今回のシリーズにはこの曲が欠けています。ユニヴァーサルには録音が無いのでしょうか。まあこのような企画は、本来なら(膨大なエルガー作品のレコーディングを保有する)EMI日本法人の仕事のような気もするのですけどね。
(追記)エルガー関連の輸入盤では、現在以下の廉価盤BOXが入手可能です。
●Edward Elgar The Collectors Edition Various Artists. (EMI/EU盤;amazon/HMV/@TOWER)
・30枚組セット。主要管弦楽曲はバルビローリ指揮のものを収録。
●Elgar Symphonies, Cockaigne and Sea Pictures Sir Charles Mackerras & Royal Philharmonic Orchestra et.al. (Decca/Australia;HMV/@TOWER)
●Elgar Cello Concerto Enigma Variations etc. Sir Charles Mackerras & Royal Philharmonic Orchestra et.al. (Decca/Australia;HMV/@TOWER)
・いずれも指揮はマッケラス。
●Elgar Symphonies etc. Leonard Slatkin & Saint Louis Symphony Orchestra et.al.(RCA;HMV)
・スラットキンのセット。協奏曲のソロがシュタルケルとズーカーマンという強力メンツ。
●Elgar Symphonies etc. Sir Adrian Boult & London Philharmonic Orchestra. (EMI;HMV)
・ボールト最晩年のエルガー。何度聞いても感動できる。
●Elgar Symphonies etc. Andre Previn & RPO/LPO (Philips;HMV)
・こちらはプレヴィンによるもの。私はプレヴィンのエルガーも結構好き。
●Elgar Choral Works. Sir Adrian Boult & LPO/NPO. (EMI;amazon.jp/amazon.uk/HMV)
・ボールトによる三大オラトリオ。
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