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2007.10.31

とり急ぎチェルカスキー

Cherkassky01 ウェブラジオでシューラ・チェルカスキー(1911-95;写真)の弾くラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」を聴きました。1969年5月16日、ブルガリアはソフィアでのライヴです。当時ブルガリアは「鉄のカーテン」の向こう側だったわけで、そのせいか録音自体は冴えません(しかもモノラル)が、チェルカスキーのピアノは実に「冴えて」います。彼でしか成しえない、独特としか言いようのない節回しはもちろん随所で聴かれますし、晩年の彼に無い「重厚さ」が、当時60歳の彼の演奏にはあります。その「重厚さ」が、この大曲をより魅力的なものにしています。

 ところでチェルカスキーは時として、グロテスクなまでの異様な語り口で私たちを驚かせたりもします。そんな「サプライズ」もファンにとっては魅力なんですが、このラフマニノフも例外ではありません。第3楽章終結部で、チェルカスキーが我々の想像の斜め上を行くテンポの変化で仕掛けるのです。オーケストラがそれに必死に喰らいつき、音を付けていく様子は、さながら落馬しそうになりながら必死に馬にしがみついているジョッキーのようです。ホントよく音楽が空中分解しなかったものです。ソフィア・フィルと指揮者のナイデロフはグッジョブです(笑)。ここまでチェルカスキーのカプリシャスなピアノと渡り合った指揮者は、(あくまで私が聞いた演奏に限っての話しですが)1993年にN響定期で共演したスヴェトラーノフ(このときはラフマニノフではなくチャイコの「ピアノ協奏曲第2番」でしたが)くらいではないでしょうか。たいしたものです。
 私がチェルカスキーの「第3番」を聴いたのは、これで3度目になります。最初は彼の死の数週間前(1995年12月)のプラハでのライヴ。NHK-FMで耳にしたのですが、このときの彼は絶不調で、本当に何でもないところでピアノの「出」を間違えたりと、聴いているのが辛くなる演奏でした。その次に聴いたのはBBC LEGENDSからリリースされた1957年ライヴCD(BBCL 4092-2)。こちらは技巧的には安定しているのですが、ややチェルカスキーの演奏に「霊感」が欠けるところがありますし、オケとの相性もイマイチです(前述の終結部ではホントにアンサンブルが崩壊しちゃってますし)。今回の1969年の演奏は、第1楽章後半(カデンツァの後あたり)でオケのミスをきっかけに音楽が怪しくなる箇所もあるのですけど、チェルカスキーのソロはほとんどノーミスですし、絶頂期の彼の「音の記録」として、聞いておいて損はないと思います。この演奏、今ならハンガリー「Bartok Radio」の公式サイトからオンデマンドで聞けます(→こちら)。今週末(11/3の未明)までは大丈夫だと思いますので、興味ある方はお早めにどうぞ。

(※)なおチェルカスキーは英デッカにラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」をレコーディングしています(共演はテミルカーノフ&ロイヤル・フィル)が、私は残念ながら未聴です。

(Program Note)Rachmaninov, Concerto for piano and orchestra No.3 in D minor (Op.30). Shura Cherkassky (Piano)Sofia Philharmonic Orchestra, Asen Naydenov (Conductor)
[Date; May 16, 1969. Venue; Bulgaria Concert Hall]

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