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2007.09.23

ザンデルリンク事件

Sanderling_dsch10 ドイツの新聞にクルト・ザンデルリンクの最新インタビューが掲載されていることを、ブログ「Takuya in Tokyo」で知りました。数年前に音楽活動から引退し、現在御年95歳。かなりのご高齢ですが、インタビューの受け答えを見る限り、まだまだお元気そうなご様子で、一ファンとして安心した次第です。
 さてこのインタビューに出てくる「ザンデルリンク事件」、どこかで聞いたことがあるな…、と思い書棚のショスタコ本を取り出してチェックしてみると、エリザベス・ウィルソンの「Shostakovich - A Life Remembered (Second Edition)」(→amazon.co.jp)の中に、その件について記された一節を見つけました(pp.265-266)。同書では息子のトーマス・ザンデルリンクが、スターリン政権末期のショスタコーヴィチについて証言しているのですが、ここでは「事件」について語った部分だけ抜粋してみます。

 「西側の人々は、ショスタコーヴィチがなせ作曲家会議や平和会議などの場で政治的な発言をしてきたのか、理解に苦しむところでしょう。でもショスタコーヴィチにとっては、それはあくまで計算された行動でした。彼は尋常とは違う行動を取ったわけですが、そのおかげで彼はそれなりの権威あるポジションに就くことができましたし、その地位を利用して周囲の人々を助けることができたのです。彼は水面下で、何の障害も受けずに仕事をなしとげました。この時代に人助けをしようと思えば、個人のツテを頼るしかありませんでしたし、当時はそれが現実的なやり方でした。表立った抗議は却って危険でしたから。」
 「そうやって救われた人物の中には、私の父、クルト・ザンデルリンクも含まれています。スターリンが亡くなる直前、父はムラヴィンスキーと共に、レニングラード・フィルの指揮者を務めていましたが、ある日父が地元党委員会で批判されてしまったのです。このようなことが起こると、最低でも職を失うか、ひどいときはもっと大きなものを失うこともありました。当時のレニングラードでは、このような事件は日常茶飯事でしたし、私の身近なところでも起こっていました。」
 「どうしていいかわからず、家族は途方に暮れました。そんなときムラヴィンスキーがモスクワのショスタコーヴィチに、父の窮状を伝えてくれたのです。ドミトリ・ドミトリエヴィチは党の中枢に、父を救うための請願書を書いてくれました。彼は高級官僚に対してひるむところがありませんでした。」
 「…レニングラード・フィルの監督は、父を音楽活動から追放してしまいました。指揮者のポストが公式には『留任』扱いだったにもかかわらずです。自ずと父は公の場に出ることはなくなり、失業状態になりました。しかし幸運なことにショスタコーヴィチは、レニングラードで『齟齬』があった、と証明することに成功したのです。党の批判から半年後、父はレニングラード・フィルの監督に呼ばれて、次回のコンサートへの出演を打診されました。ほどなく演奏会が開かれ、レニングラードの新聞には「クルト・ザンデルリンクがコンサートで指揮した」うんぬんと書かれた記事が載るようになりました。これは事態の好転を示すサインでした。それから父は再び「persona grata」(好ましい人物)となったのです。このようなことをショスタコーヴィチはやってきたのです。」
 

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» ザンデルリンク・インタビュー(2)〜ショスタコーヴィチとの関係をめぐって [Takuya in Tokyo]
(1)からの続き  つまり、ショスタコーヴィチの支持によっておそらくあなたは救われたわけです。彼との個人的な交友関係は、彼の音楽に対するあなたの理解にどの程度影響を与えたのでしょう。  まず君の質問には、形式上の誤りがある。僕が彼の音楽に対する理解....... [Read More]

Tracked on 2007.09.23 at 18:16

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