武生国際音楽祭2007 開幕
今日は車を走らせ「武生国際音楽祭」(→公式サイト)のオープニングコンサートに行って参りました。例年同様今回も、音楽祭参加アーティストたちが次々に登場する「ガラ・コンサート」的な色彩の濃いイベントでした。まあ私はプログラムを知らないままフラリと会場に出かけたもので、シェーンベルクやシャリーノを聴かされてやや不意打ちを喰らった気分ですが(笑)、それでも演奏がどれも一級品でしたので、私としては大満足です。これだけの名手たち揃って、入場料が3000円なのですから安いものです。今日のコンサートはコスト・パフォーマンスの高さでいえば「熱狂の日」を超えたかもしれません。
どの演奏も素晴らしかったのですが、一番印象に残ったのはミケランジェロSQの第一ヴァイオリン奏者でもあるミハエラ・マルティン。彼女の安定感のある音の質感に魅了されました。ゆったりとした運弓で、体の動きの少ない奏法なのですが、音に「重み」があるというか、実にしっかりとした良い音が出ていました。プログラムによると、彼女はステファン・ゲオルギウに師事したそうです。ゲオルギウはルーマニア出身の名教師で、以前バッハ無伴奏のCDが話題となったルミニッツァ・ペトレも彼の門下生です。そう言われてみると、作為の無い中にさりげなく聞き手に確かな印象を残すあたりに、2人の共通点があるような気もします。
児玉桃のショパン(演目は「スケルツォ第2番」)も素晴らしかったです。技巧的には(当然ながら)全く問題ありませんし、ショパンのスケルツォ特有の黒々としたハードな緊迫感の表現も見事でした。私は今年「熱狂の日」で彼女のラヴェルを聞いたのですが、個人的にはそのときよりも好印象です。明日のリサイタル(19:30-、越前市文化センター・大ホール)で彼女はショパンの「第3ソナタ」を演奏するのですが、今日の出来から想像すると、結構期待できそうです。私も聴いてみたいところですが…、仕事も忙しいし…。うーん、迷うところです。
先ほど「不意打ち」と書いたシェーンベルクとシャリーノですが、こちらも良かったです。ステファン・ピカール(ミケランジェロSQの第二ヴァイオリン奏者)とダニエル・クラーマーによるシェーンベルクの「幻想曲」は、力強さと高いテンションが感じられましたし、鈴木俊哉(アルトリコーダー)のソロによるシャリーノ「フェニキアのイメージ」も、特殊奏法を駆使したリズミカルな作品で、結構面白く聞けました。
コンサートの最後にはベートーヴェン「作品18-3」から第1楽章とフィナーレだけが演奏されましたが、これがまた鳥肌ものでした。ミケランジェロSQの合奏能力はかなりのもので、アンサンブルの難所もビシバシと決めてきます。そしてキッチリ合わせるだけでなく、旋律もほんとによく「歌う」んです。だから聴いていて実に楽しい。「4人の実力者が揃ったクワルテットってこうなるのか」というのを肌で実感しました。今度は同じ曲を全曲聴いてみたいです。彼らのコンサートは8/28(火)ですが、この日は私仕事ですので無理ですね。あー残念。
あと武生音楽祭のオープニングといえば、細川俊夫のMCに触れないわけにはいかないでしょう。今日は出演者との「絡み」はあまり無かったのですが、それでも軽妙なトークはなかなか冴えていて、客席からは何度も笑いが起こってました。これは某題名のない番組の司会なんかもイケそうですよ(笑)。
最後に会場の雰囲気について。去年は「ノボリや横断幕が少なく、告知が不十分」「会場周辺でお茶するトコロが無い」とブログで我侭言いたい放題書いてしまいましたが(主催者の皆様すみません…)、今年はきちんと改善されていました。明らかにノボリの本数が増えてましたし、横断幕も分かりやすいところに掲げられていました。これなら地元の方も「あっ、音楽祭やってるんだな」と分かるのではないでしょうか。それから開演前にはロビーで抹茶とお菓子が入場者に振舞われていました。これはポイント高いですよ。外国からお越しのお客さまも興味津々の様子でしたし。
(参考)
●「武生国際音楽祭2007」全体スケジュール。
●メインコンサートのプログラム。8/31(金)のコンサートでは、今井信子がヴァイオリンを弾く(ホントです)ということで、これはちょっと注目ではないでしょうか。
●アウトリーチコンサートのスケジュール。今年も蕎麦屋さんでのコンサートがあります(8/27)。
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●Program Note●
1.Bach: Sonata for flute and harpsichord in E major BWV1035 - !st Mov.
2.Dvořák: Four Romantic pieces.
3.Schönberg: Fantasie Op.47
4.Schumann: Märchenbilder Op.113
5.Bach: Suite for violoncello No.5 in C minor BWV1011 - Prelude/Fugue
6.Chopin: Scherzo No.2 in B flat minor Op.31
7.Sciarrino: Immagine fenicia
8.Beethoven: String Quartet No.3 in A major Op.18-3 - 1st & 4th Mov.
Caput-Duo(1)Mihaela Martin(Violin:2)Stephan Picard(Violin:3)Nobuko Imai(Viola:4)Frans Helmerson(Cello:5)Junko Yamamoto(Piano:2)Daniel Kramer(Piano:3)Kei Itoh(Piano:4)Momo Kodama(Piano:6)Toshiya Suzuki(Recorder:7)Michelangelo SQ(8)
Date: August 26, 2007
Venue: Echizen-shi Bunka Center, Main Hall
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