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2007.08.13

真夏の夜のノクターン(5)

 次はマリア·カラスの「椿姫」です。

Callas_traviata_lisbon_pearl カラスが1958年3月、リスボンはサン·カルロ劇場で歌った「椿姫」ライヴ録音は、オペラ·ファンの間で評価の高い名演として知られています。
 このときのライヴ録音は、これまで長らくEMIレーベルからリリースされていたのですが、新しい原盤からリマスターしたCDが英Pearlレーベルからリリース(→HMV.co.jp)されたことを「クラシックジャーナル」の最新号で知りました。同誌で山崎浩太郎氏が「EMI盤よりもはるかに音がいい」と書いていたので「どんだけやろ?」と思って購入してみたのですが、実際に聞いてみて「どんだけ~?」と言いたくなりました(笑)。ほんとに全然音が違います。EMI盤と比較視聴するのも時間の無駄に感じられるほど、その差は歴然としています。これだけ良い状態の録音が残されていたのなら、「どうして最初からこのテープでレコードを出してくれなかったのだろう」とEMIに強い疑念を抱いてしまいます。ともあれ全盛期と言われる「50年代のカラス」が、良い録音状態で聞けるようになったのは良いことです。そういえば最近、彼女の「ルチア」のMETライヴも海外ウェブラジオでオンエアされ、そちらも随分といい音でした。もしかしたらカラヤン指揮のベルリンでの1955年ライヴの方も、放送局に眠るマスターテープは良い音なのかもしれませんね。
 さて、これだけ高音質で聞くと、カラスだけでなく、他のキャストの歌唱にもつい聞きほれてしまいます。マリオ·セレーニの重厚なジェルモンは見事の一言ですし、当時新進気鋭のテナーだったアルフレート·クラウスの若々しい声には、初々しさすら感じます。そしてなんといってもカラスのヴィオレッタ。第1幕での他を圧倒する歌唱はEMI盤でも強く印象に残ったのですが、Pearl盤では第3幕に強く惹かれました。ここでのカラスの歌唱は実に脆弱で、そして痛切なものです。この好対照の演技っぷりは、まさに「女優」そのものです。

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