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2007.06.03

鳥の歌とレスピレーター

 最近とあるホールで、こんな経験をしました。
 その日は若手演奏家によるチェロ・リサイタルだったのですが、私の席のすぐ前が丁度「障害者席」でして、コンサートが始まる直前に電動車椅子の方がその席に来られたのです。そのお方は自力で呼吸することも叶わないらしく(おそらくは筋萎縮性側索硬化症のような、筋肉が侵される難病の方なのでしょう)、車椅子には鞴(ふいご)のようなレスピレーターが備え付けられていました。その機器を見て「ひょっとして…」と私が案じた通り、演奏会のあいだ、私の耳には「ゴー」「ゴー」と鞴が作動する音が間断なく聞こえていました。
 やがて演奏会はアンコールに入り、チェリストは「鳥の歌」を演奏し始めました。チェロの祈るような響きと、空気を送るレスピレーターのサウンドが交錯する様を耳で感じながら、「生き物の『生』とは何だろう」そして「自分の力ではどうしようもない運命に身を委ねるとき、人間は何を思うんだろう」と思いを巡らせていました。

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