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2007.02.10

【レビュー】ダウスゴーの新譜二題

 SIMAXレーベルでの一連のベートーヴェン録音で注目を浴びたデンマークの指揮者トマス・ダウスゴー。私も去年ウェブラジオで彼のモーツァルトを聴いた折、その細部まで整えられた精緻なアンサンブルに好印象を抱きました。さて彼の指揮による新譜が2枚立て続けにリリースされましたが、どちらもなかなか興味深い内容となっています。

Dausgaard_schuman_outer

(曲目)
1.シューマン:交響曲第2番ハ長調Op.61
2.同:「ファウストのための情景」から 序曲
3.同:「ジュリアス・シーザー」序曲Op.128
4.同:交響曲第4番二短調Op.120(オリジナル版)
(演奏)
トマス・ダウスゴー指揮スウェーデン室内管弦楽団
(録音)2005年3月(1)2006年3月(2-4)
(BIS, SACD-1519, 5.0ch & 2ch SACD/CD Hybrid, ASIN:B000MX7SN2, Amazon.com/HMV/@Tower)

 このシューマンはいわゆる「ピリオド演奏」と呼ばれる演奏様式を全面的に採り入れています。今時そんな演奏は枚挙にいとまないのですけど、ダウスゴーの仕事ぶりは本当に徹底しています。ありとあらゆる音符や記号、そして演奏法が見直された結果、見晴らしの良いクリアな音、鋭角的な響き、キレのあるフレージング、そして疾走感あふれるシューマンが出来上がりました。そのアプローチは聴感上は「ロマン派」的というよりは「古典派」の音楽に限りなく近く、まるでハイドンかベートーヴェンを聴いているかのようです。
 このやり方、個人的には「第2番」と「第4番」とで異なる結果が出たように思います。前者ではダウスゴーの演奏の持つ軽快さ、スピード感に心地良さを覚えつつも、「シューマンの音楽の持つ感情的な部分が根こそぎ持っていかれちゃったなぁ」といった感が否めません。一方「第4番」では微細なディテールに拘った音楽作りが(「第2番」と真逆に)音楽に内在する「情感」を巧妙に引き出していました。
 ともあれこのショッキングなまでにフレッシュな演奏ぶりは注目に値します。ノリントンのベートーヴェンを初めて耳にしたとき以来のインパクトを私は感じました。

 次はスウェーデンの作曲家アラン・ペッテション(または「ペッタション」、1911-80)の「ヴァイオリン協奏曲第2番」です。

Pettersson_vncon2

(曲目)
アラン・ペッテション:ヴァイオリン協奏曲第2番(改訂版)
(演奏)
イザベル・ファン・クーレン(ヴァイオリン)トマス・ダウスゴー指揮スウェーデン放送交響楽団
(録音)1999年3月
(CPO, 777 199-2, ASIN:B000L42J6S, Amazon.com/HMV)

 私はペッテションの作品を聴くたび、絶望感で胸が一杯になります。はっきりいって聴き続けること自体に苦痛を感じることも稀ではありません。しかも異常に長い…。彼の音楽は、聴衆が「聴く」という行為すら拒絶しているかのようです。それほどに彼の音楽は「暗い」と形容するには余りにも暗く、「重い」と表現するには余りに重過ぎる内容を持っています。
 この「ヴァイオリン協奏曲第2番」も例外ではありません。冒頭部から悲痛なヴァイオリンの響きが心に突き刺さります。その後は騒然とした雰囲気で音楽が進行します。エネルギーを得て盛り上がるかと思うと、霧のように拡散してしまう。そんなことを繰り返しながら、音楽は荒天の山中のようにめまぐるしく様相を変えていきます。
 そのような音楽的混迷状態が果てしなく続き、よもやこのままコーダまで突き進むのでは…と思われたその時、曲は意外な展開を見せます。オーボエとヴァイオリン・ソロがマーラー的な(強いて言えば「交響曲第5番」を想わせる)「嘆きの歌」を奏で始めるのです。ここからペッテションの音楽は言葉にならない「叫び」から一転、朴訥とした「語り」へと変化していきます。そしてハ短調の「哀歌」のあとは急速に落ち着き、安息を得たところで自作の歌曲集「裸足の歌」からの引用が現れます。音楽は最後の輝きを放ったあと平安のうちに幕を閉じます。
 この作品は最後の最後で穏やかな結末を迎えますが、そこに辿り着くまでの魑魅魍魎とした音楽世界の連続は、他のペッテション作品同様にヘビーです。しかしそのヘビーさ故、オランダの名手、イザベル・ファン・クーレンが奏でる美しい旋律が聞き手に深い印象を残します。彼女は痛々しい音の断片が続く前半部でも奮闘し、この曲の諸相を見事に表現していたと思います。
 ということでこの作品、「全ての人におすすめ」というわけにはまいりませんが、不思議な味わいを持った、ユニークな作品であることは確かです。

(追記)このCD購入後、ペッテションの「ヴァイオリン協奏曲第2番」が「ナクソス・ミュージック・ライブラリー」(NML、要登録:有料)でも聴けることを知りました(→こちら)。初演でもソリストを務めたイダ・ヘンデルによるスケール感あふれる演奏は圧巻で、特に叙情的な後半部はまさに彼女の独壇場です。「裸足の歌」のオリジナルも聴けちゃうし、ホント何でもあるな<NML。

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