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2006.12.14

「アラーニャ事件」続報

Alagna_interview  えー、アラーニャ降板の件につきましては、様々な情報がネット上の各地で飛び交っていて、正直どの情報が正しいのか私も十分掴み切れていません。巷の情報では「スカラ座と(公演をビデオ収録していた)英デッカがアラーニャを訴える」とか「逆にアラーニャがギャラ未払いでスカラ座を訴える」だとか、そんなニュースばかりです。もう「アイーダ」のことなんかどうでも良くなってきた感すらあります。当日のアラーニャの歌唱がはたしてブーイングに値するものだったのかどうか、検証した記事を全く見かけないのは、ある意味残念です。
 さてここからは、今回の事件の中で個人的に感じた幾つかの「謎」について述べると共に、各界の反応も併せて紹介したいと思います。

①ブーイングの謎
 すでに多くの方が「アイーダ」第1幕での「問題のシーン」のニュース映像をご覧になったと思いますが、個人的には(2年前のバイロイト音楽祭「パルシファル」のときのように)劇場を覆うかのような猛烈なブーイングを想像していたもので、今回のスカラ座のブーイングにはいささか拍子抜けしました。映像を見直すと、アラーニャが「清きアイーダ」の最後の音を歌い終えると客席から先ず比較的静かな拍手が起こります。それから数秒後に(まるで拍手に抗議するかのように)「ブー!」というノイズがあちこちで湧き上がっています。実は(ここからはネット情報なのですが)当日客席で観劇した人によると「歌い終えたあと客席から『ブラボー屋』と思しき人物が何度か歓声を上げていた」「ブーイングはそのあとで起った」といいます。そこから「あのブーイングはアラーニャではなくむしろ客席に紛れ込んだ『サクラ』に向けられた抗議ではないか」という説が上がっているのですが、個人的にはこの「仮説」は検討に値すると思います。
 しかし現実には、アラーニャは客席に向かって(別れを告げるかのように)右手を上げたあと袖の方に引っ込んでしまったわけです。客席からの散発的なブーイングに対し、どうもアラーニャは過剰反応したようにも感じられます。アラーニャ自身、今回のプロダクションで(本来の彼のキャラとは異なる)ラダメス役を歌うことへのプレッシャーがあったとは思います。それが彼を心理的に追い込んだのでしょうか。ところでキャンセル後のインタビューで彼はこんなことを語っています。「楽屋の脇で不審者3人が空手チョップの真似事をしているのを見た」「スカラ座は私の身に危険が及ばないように注意を払うべきだった」。これが事実なら由々しき事態ですし、そうでなければ今度はアラーニャ自身の「心の健康」が心配です。

Palombi ②代役登場の謎
 一つ前のエントリのコメント欄でdognorah様が指摘したように、舞台袖では万が一に備え代役が控えていて、その代役にもきちんと衣装が用意されているものです。しかしそれならあのときどうして代役のパロンビはカジュアルな服装で登場するという、まさに火に油を注ぐようなことをしでかしてしまったのでしょう。
 実は当日スカラ座でスタンバイしていた「代役」はパロンビではなく、もう一人いたという、ウソか本当か分からないような話が現地から上がっています。その情報によると、当日ラダメス役の「代役」として用意していたのはテノール歌手のワルター・フラッカートで、パロンビはというと、開演後しばらくは客席でずっと観劇していたというのです。さて問題の「清きアイーダ」でのアラーニャの態度を見て「これは何か不測の事態が起ったに違いない」と勘づいたパロンヒは、急遽楽屋に押しかけ、既に舞台衣装に着替えていたフラッカートを差し置いて舞台に駆け上がったというのです。この話、本当でしょうか?若干胡散臭いのですが。ちなみに今晩(12月14日)のスカラ座公演でラダメスを演じるのはフラッカートです…。

③ビデオ流出の謎
 「問題のシーンのビデオが見られるよ」と聞いて私は「一体どこの誰が隠し撮りしたのか!?」と思いましたけど、実際の映像は明らかにスカラ座サイドが放送用あるいはDVD化を見込んで収録したテープでしたね。スカラ座は自らの歴史に泥を塗ったアラーニャを糾弾する意味も込めて、この映像の公開を許可したのでしょうが、このような公演中の「不祥事」を興行主側が積極的にビデオで公開する、ということはこれまで無かったような気がします。よほど腹に据えかねたのでしょうけど。

④各界の反応
 音楽関係者たちの反応は概ね厳しいものがあります。音楽評論家ノーマン・レブレヒト氏は「これで彼の大舞台でのキャリアが終わってしまうかもしれない」と述べています。「タイムズ」紙の音楽担当記者ニール・フィッシャーも彼と同意見です。「今回の事件は、彼の将来にとって決してプラスにはならないでしょう」。
 今回のプロダクションで演出を担当したフランコ・ゼッフェレッリのコメントは、なかなか考えさせられる内容です。
 「アラーニャはラダメスのように、彼にフィットしていない役に対していつも神経質になっていた」「だが彼のやったことはプロの行為ではなかったし、うまいやり方でなかった」「スカラ座のプレミエに立つテノール歌手は、小さい子供のようにイライラしてはいけない。(彼の行為は)到底受け入れ難い。」「しかし今の世界に真のラダメスはいない」「バリトンやメゾソプラノは人材豊富だが、ドラマティック・テノールが見当たらないのだ...欠点を持っている歌手であっても、それに満足しなければならない」

(参考)
Blog "Opera Chic"
Guardian. Tenor who quit will sue La Scala. (December 13, 2006)
New York Times. After La Scala Boos, a Tenor Boos Back. (December 13, 2006)
Reuters Canada. Operatic tantrum may cost star tenor dearly. (December 13, 2006)
PlaybillArts. Franco Zeffirelli Wallops Recalcitrant Tenor Alagna in Interview. (December 13, 2006)

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Comments

なるほど、何でプッチーニなんだろうなぁと思っていたんですが、スカラとの訣別ですね。でも、ピンカートンは数年後に新しい奥さんと戻ってくるんですが。ううむ。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.12.17 at 17:11

http://today.reuters.com/news/articlenews.aspx?type=musicNews&storyID=2006-12-14T213051Z_01_L14670156_RTRIDST_0_MUSIC-ITALY-TENOR-DC.XML&WTmodLoc=EntNewsMusic_C1_%5BFeed%5D-7
↑詳報が出てます。
14日、ちょうど「アイーダ」が開演する頃に合わせてスカラ座前の広場に現れたアラーニャは、「蝶々夫人」のアリア「さようなら愛の家よ」(!!!!!!!)を歌った、とあります。
今回のスカラ座の「アイーダ」、ヒロインは切腹してみたらどうでしょう(笑)。

Posted by: おかか1968 | 2006.12.16 at 08:31

>昨夜(14日夜)、スカラ座の前でアラーニャはストリート・コンサート
...。 言葉がありません...。

Posted by: おかか1968 | 2006.12.16 at 08:20

どうもです。
今朝のフランスのテレビニュースを見ていたら、昨夜(14日夜)、スカラ座の前でアラーニャはストリート・コンサート?を開き、プッチーニのアリアを披露したそうです。

14日というから、次の公演をまさにやっている間でしょうか?それとも開演前か終演後か。。。いずれにせよ、やってくれます。どうせなら、「清きアイーダ」を歌って欲しかったところですが。

古橋廣之進がオリンピックに合わせて東京のプールで泳いで世界新記録を出した話を思い出します。あ、アラーニャの歌の評価は別ですが。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.12.15 at 16:46

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