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2006.12.07

【演奏会レポ】オイラの夢にもピンクのメガネのメイドさんが出てきたよ(嘘)

(演目)
ハイドン:歌劇「月の世界」
(配役)
ブオナフェーデ:フルヴィオ・ベッティーニ
エックリティコ:セルジュ・グビウ
フラミニア:森麻季
クラリーチェ:野々下由香里
リゼッタ:穴澤ゆう子
エルネスト:彌勒忠史
チェッコ:水船桂太郎
(演奏)
寺神戸亮指揮レ・ボレアード
(演出)三浦安浩(※)
(2006.12.2 北とぴあ さくらホール)

 先日「北とぴあ」で上演されたハイドンの歌劇「月の世界」、私はものすんごく期待して上京したのですよ。珍しいハイドンのオペラ、しかも荒唐無稽な筋立てのドタバタ喜劇、そして演奏するのは世評の高い「レ・ボレアード」、歌手陣も今エイベックスが最も強力にプッシュしてる森麻季と、バッハ・コレギウム・ジャパンでお馴染みの野々下由香里が登場、と魅力一杯のプロダクション。「私をどれだけ笑わせてくれるんだろう…」と期待に胸を膨らませて来たんですけど…。正直関西人には「笑い」が足りませんでした…。まあ確かに笑いましたよ。でも笑ったのはブオナフェーデが「カワイイ!」と日本語で叫んだりカンフーの真似事をやったりしてる時と、各幕の冒頭でスクリーンに映し出されるアニメーションのときだけでした。私はオペラの中で歌手達が歌っているときに、もっと「音楽」で笑いたかったのです。これはどこに起因するのでしょうか?ハイドンの音楽がロッシーニやドニゼッティの「オペラ・ブッファ」に比べて大人しかったからか?演奏がシリアス過ぎたからか?それとも演出に何か問題が?

 どれもあると思います。でも一番責任があるのは…、やはり演出でしょうか。私はオペラ公演に足繁く通っているわけではないので「演出」については正直よく分からない部分が多いんですが、それでも舞台上の歌手達には「動き」が不足していたように思いました。その結果、舞台からは喜劇的な「活力」や「躍動感」といったものがあまり感じられませんでした。一言でいうと、「なんかダルかった」です。それから上演中ずっと舞台をうろうろしていた「愛の神」は結局なんだったんでしょう。第3幕の二重唱(これは実に魅力的な愛の音楽だった!)の歌詞に「愛の神」が出てきますが、それに向けての伏線なのでしょう。ただ特に何をするわけでもなく傍観したり小道具を運んだりと、舞台に関係ない動きを繰り返してるのであれば、むしろ客席に入って観客をイジってた方が良かったような気もします。それから個人的にはアニメーションは面白かった(特に薬を盛られたブオナフェーデが夢を見るシーンで、彼のお気に入りである「ピンクのメガネのメイドさん」のリゼッタが登場するところ)のですけど、月の主(ヌシ)として登場するウサギが(関西人なら分かって貰えると思いますが)「おはよう朝日です」のキャラクターのおき太くんにクリソツなのはどういうことでしょうか(笑)。だって耳が横になったり立ったりするトコまでソックリなんだもの(爆)。そもそもヨーロッパでは月の表面は「カニ」の形に見えるらしいです。これはこないだ「とくダネ!」で気象予報士の天達さんが言ってました。
 歌手とピットのオケは終始立派な演奏を繰り広げていたと思います。ブオナフェーデ役のベッティーニは周到な歌唱と演技を披露していました。例の「カワイイ!」のセリフは初日の公演(12/1)では出なかったようなので、彼のアドリブだったのかもしれません。その辺りがイタリア人歌手らしいですね。ブオナフェーデに結婚を懇願する3組=6人の歌手達も悪くなかったです。特に森麻季は輝きのある高音域が魅力的で、世評が頷ける出来でした。ただ若人役の歌手たちにはあともう一息、溌剌とした躍動感と、やはり「遊び」が感じられたら良かったのですが。
 このことはピットのオケにも言えることだと思います。ただ一方で「レ・ボレアード」の堂々たる演奏振りに驚かされたのも確かです。堅固なアンサンブルと表現力の高さは世界レベルではないでしょうか。特に第2幕フィナーレのブオナフェーデの怒りのシーンはすごかったです。あんなにドロドロした怨念のような響きを古楽アンサンブルで聴けるとは夢にも思いませんでした。それからこのアンサンブルは、個々の奏者たちの技量も相当高いと思われます。とりわけ印象的だったのは終始甘美な響きを聞かせてくれた通奏低音のチェロ奏者です。私的には歌手たちを差し置いてこの日のMVPにしたい位です(笑)。ともあれこれほどの技量の高さを示したアンサンブルなのですから、次はもっとシリアスな作品、例えば「ドン・ジョヴァンニ」や「フィデリオ」、いっそのことバッハの宗教曲も彼らの管弦楽で聴いてみたいです。

(※)公演プログラムでは、先日お亡くなりになった実相寺昭雄氏の名前が三浦氏と並んでクレジットされていますが、故人が生前、今回のプロダクションには関わっていない旨発言されていたとのことですので、このエントリでは名前を挙げるのを控えました。

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●Production Note●

IL MONDO DELLA LUNA by Franz Joseph Haydn
Venue:Hoku Topia Sakura Hall, Tokyo
Date:December 2, 2006

【Cast】
Buonafede:Fulvio Bettini
Ecclitico:Serge Goubioud
Flaminia:Maki Mori
Clarice:Yukari Nonoshita
Lisetta:Yuko Anazawa
Ernesto:Tadashi Miroku
Cecco:Keitaro Mizufune

【Stuff】
Production:Yasuharu Miura
Orchestra:Les Boreades (Leader:Azumi Takada)
Conductor:Ryo Terakado

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