ガリーナ・ウストヴォルスカヤ 逝去
ウストヴォルスカヤ自身、「自作と他の作曲家の作品の間には、何の関連性もありません」と語るほどの独自色に満ちた音楽は、当時のソ連音楽界としては突然変異的にアバンギャルドなもので、レニングラード音楽院で学生時代の彼女を指導したショスタコーヴィチをして「私の方があなたの影響を受けている」といわせしめるほどでした。
またウストヴォルスカヤは、ショスタコーヴィチと個人的に非常に近い関係にあったことでも知られています。1948年ごろから15年間、断続的に続いたといわれる「恋愛関係」について、彼女自身は「驚くべきショスタコーヴィチ」(現在絶版)の著者であるソフィア・ヘーントワ氏との対談(1977年)でそれを認めています。しかし彼女はその後前言を翻し、ショスタコーヴィチとの関係そのものを否定するようになります。彼女はショスタコーヴィチからの手紙を全部処分し、彼からプレゼントされた「プーシキンの詩による4つのモノローグ」「弦楽四重奏曲第5番」「24の前奏曲とフーガ」「ユダヤの民俗詩より」などの手稿をスイスのパウル・ザッヒャー財団に売り渡してしまいます。彼女はその行為で「何か」を断ち切りたかったのでしょうか。今となってはそれを知る由もありません。
「Misterioso」 (ECM NEW SERIES 1959, 476 3108)
リュビーモフ(ピアノ)トロスティナンスキ(ヴァイオリン)リバコフ(クラリネット)
ウストヴォルスカヤの「クラリネット、ヴァイオリンとピアノのための三重奏曲」「ヴァイオリン・ソナタ」を収録。瞑想的でモノトナスで、実に厳しい音楽だ。しかしタイトルが「ミステリオーソ」とは、なかなか言いえて妙だ。
(関連記事)
Ustvolskaya. "A Grand Russian Original Steps Out Of The Mist". (英語)
↑米国の音楽評論家、Alex Ross氏によるウストヴォルスカヤ紹介記事。
(参考)
Elizabeth A.M. Wilson. Shostakovich A Life Remembered (Second Edition). Faber and Faber. pp.294-298.
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Comments
LMNさまこんにちは。この写真は、ネットで落ちていたものですが、どこから拾ったかは忘れました…。
ところでLMN様は、ウストヴォルスカヤの曲をお弾きになっているのですか。彼女のことはまだまだ世間に認知されているとはいえないと思います。彼女の不思議な魅力を持った作品が演奏される機会が増えればよいな、と思っています。
Posted by: おかか1968 | 2007.08.14 07:27
こんにちは。ウストヴォルスカヤを最近弾き始めたのですが、検索していて来ました。こちらのウストヴォルスカヤの写真、ちゃんとした写真でいいですね。どこで手に入れられましたか?
Posted by: LMN | 2007.08.13 19:54
こんばんは。そして相当遅いレスで申し訳ないです…。
まあショスタコーヴィチと彼女との間には「何か」があったのでしょうね。ただ個人的には、どうしてウストヴォリスカヤがあんな行動を取ったのか、何となく分かる気がします。あくまで「何となく」ですが。
Posted by: おかか1968 | 2007.07.10 22:36
こんにちは。はじめまして。
ガリーナ・ウストヴォルスカヤが亡くなっていたのですか!
し、知らんかった・・・。
ピアノ協奏曲、三重奏曲、ピアノとチェロのためのグラン・デュオなど、
愛聴しておりました。
6曲あるピアノ・ソナタもいいなあ。
この人とショスタコーヴィチの間には、ホントに何があったんでしょうね。
Posted by: 木曽のあばら屋 | 2007.01.18 23:23