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2006.11.15

【演奏会レポ】歌って踊って跳んではねて

(曲目)
1.ブラームス:大学祝典序曲Op.80
2.エルガー:チェロ協奏曲ホ短調Op.85
3.(アンコール)ヴァスクス:ドルチッシモ
4.ブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調Op.77
5.(アンコール)同:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲イ短調Op.102から 第3楽章

(演奏)
ソル・ガベッタ(チェロ,2,3,5)パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン4,5)金聖響指揮関西フィルハーモニー管弦楽団(1,2,4,5)
(2006.11.12 いずみホール)

 「演奏会を聴きに行った」のではない。「ライブを見に行った」のだ。そう言い切ってしまいたくなるようなコンサートでした。

 今回私は最前列の第1ヴァイオリンの真横の席に当たってしまいました。1曲目の「ヴァイオリン奏者たちとその他大勢」によるアンバランスなサウンドの「大学祝典序曲」が始まってしばらくは、ホール中央の観客を羨ましく思っておりました。でもそのうちに「せっかく『砂かぶり席』のような場所にいるのだから、今日は演奏の模様をじっくりと拝見いたしましょうか」とポジティブに開き直ることにしました。ということでまずは指揮者の方を眺めてみましたが、この方はテレビで見るよりずっとスリムでしたね。スーツ姿も実に様になっていました。さすが若手のホープ。
 2曲目はアルゼンチン出身のソル・ガベッタが登場しましたが、この日のエルガーではノスタルジックで哀歌的な音楽世界を無理なく表現していました。私が彼女を聴くのは先月の名フィル定演に続いて2度目ですが、前回に続いて今回も私は好印象でした。ちなみにステージ衣装は名古屋のときと同じ派手なマスタード色のもので、アンコール曲もそのとき同様ヴァスクスの「ドルチッシモ」でした。まあ私は2度目なので「あっ、来た来たっ!」という感じでしたが、演奏後のホールは拍手に交じってどよめきも起こっていました。関西フィルの皆様も随分驚いた様子で(恐らく事前に知らされてなかったのでしょうね)、奏者たちは互いに顔を見合わせ言葉を交わしていました。
 休憩後のブラームス「ヴァイオリン協奏曲」のソリストを務めたのはパトリツィア・コパチンスカヤです。ガベッタ嬢と較べると地味目の赤いワンピースで登場した彼女ですが、演奏が始まると私は彼女の一挙手一投足に釘づけになりました。
 まず冒頭のソロ。躍動的なパッセージの、その最後の重音を弾くときコパチンスカヤは私の眼前で「ぴょん!」と跳びはねたのです。

あなたは女版ナイジェル・ケネディですかぁ!?

 同じパッセージのところで何度も跳躍を繰り返すので、つい彼女の足元に目をやると、ナント彼女は靴を履いておらず「素足」のまま舞台に上がっていました…。

あなたはクラシック界の一青窈ですかぁ!?

 その後も彼女は体を捩らせたり腰を引いたり前のめりになったり(某架空オケのコンマスほどでは無いにしても)楽器を高く掲げたり、果てにはオケに向かって大見得を切ったりと、終始妖しい動きを舞台中央で繰り返していました。まあこれほど癖のある弾き方をする演奏家はこれまでお目にかかったことがありませんし、これからも無いでしょう(苦笑)。
 しかし彼女の奏法は別の意味で驚きの連続でした。どうしてあれだけ体が動いているのに、弓がブレたりしないのでしょう。そしてあんなにボリュームのある、力感の篭った音を出せるのでしょう。そして一番驚いたのは、第1楽章のカデンツァで弓が「up」と「down」の動作を激しく繰り返していても、スラーと区別が付かないほど、音と音が滑らかに繋がっていたことです。こんな器用なことが出来てしまうのは何故でしょう。手首の使い方に何かコツでもあるのでしょうか。私はヴァイオリンは門外漢なのでよく分かりませんが、確かに(演奏中の身のこなしも含めて)彼女の体の使い方は、他のヴァイオリニストとどこか違うのかもしれません。
 最前列で彼女の一部始終を見守り続けたせいで、随分ヴィジュアル面に偏ったコメントになってしまいましたが、コパチンスカヤは音楽でも圧倒的な存在感でした。彼女の演奏は感情の起伏に富んだダイナミックなものです。特に強奏部での強引なまでの推進力は実に圧巻でした。その一方で弱音部では随所に繊細な表現を聞かせていました。ともかくこの日の音楽の主導権は明らかにソリストの側にありました。彼女のソロパートが始まるとオケの響きが急に引き締まったようにすら感じられたのは私だけでしょうか。
 アンコールではガベッタ嬢も登場し「二重協奏曲」の第3楽章を通して演奏するという大サービスでした。まあナンダカンダいいつつも最終的にはこのライブを大いに楽しんだ訳ですが、とにかくコパチンスカヤは聴覚的にも視覚的にも、ものすごいインパクトのあるアーティストでした。マイッタ。

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●Program Note●

"Wiener Musikfest in OSAKA 2006"
Concert for Credit Suisse Young Music Award
Venue:Izumi Hall, Osaka, Japan
Date:November 12, 2006

1.Brahms:Academic Festival Overture Op.80
2.Elgar:Cello Concert in E minor Op.85
3,(Encore)Vasks:Dolcissimo
4.Brahms:Violin Concerto in D major Op.77
5.(Encore)Brahms:Duble Concerto in A minor Op.102 - Third Movement

Sol Gabetta(Cello,2,3,5)Patricia Kopatchinskaja(Violin;4,5)Kim Seikyo conducts Kansai Philharmonic Orchestra(1,2,4,5)

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