【レビュー】ハチャトゥリアンのショスタコーヴィチ
(曲目)
1.ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番Op.77(Op.99)
2.同:同第2番Op.129
(演奏)
セルゲイ・ハチャトゥリアン(ヴァイオリン)クルト・マズア指揮フランス国立管
(2006年7月収録)
アルメニア出身の俊英、セルゲイ・ハチャトゥリアンによるショスタコーヴィチの協奏曲録音です(→@TOWER.JP、HMV.co.jp、amazon.fr)。私がこのCDを聴く前に気になっていた点が2つありました。一つはハチャトゥリアンがライブで見せる「燃焼度の高さ」を商業録音でも示すことができるか。もう一つは共演する指揮者のクオリティです。私はハチャトゥリアンの「ヴァイオリン協奏曲第1番」を二度ウェブラジオで聴きましたが、そのときの指揮者たち(ワシリー・シナイスキー&エリアフ・インバル)はソリストに比肩する好演を聞かせていました。このCDでのパートナーはクルト・マズアです。知名度では前者二人に勝りますが、この録音ではどうでしょうか…。
まずソリストから。録り直しが利く商業録音であることを差し引いても、ハチャトゥリアンの完成度の高い演奏は実に素晴らしいものです。そして(嬉しいことに)ライブで見せた「情熱」もこの録音には収められています。「第1番」では第2楽章の冒頭部での小股の切れ上がったような小気味よさは快感ですし、フィナーレ後半では自ら積極的にアクセルを掛けて煽ります。緩徐楽章でのリリシズムも全く安心して聴けますし、カデンツァも(ライブのときより慎重かと思われますが)万全です。「第2番」でも困難さを全く見せることなく「音楽」を感じさせてくれます。
次は肝心な共演者です。「第1番」のパッサカリア(第3楽章)の冒頭部は、マズアが東ドイツ出身であることが信じられない程の気の抜けた音です(もっと「事の重大さ」を感じさせるような響きが欲しい…)が、「第2番」では彼の「職人芸」的な堅実な音楽作りが好印象です。特に独奏と完全に一体化した「アンサンブル」が見事なフィナーレは聞きモノです。
レコード産業が(少なくともクラシック界では)完全に冷え込んでしまった昨今では、正規録音が出ること自体「奇跡」と言わざるを得ません。このことを考慮すれば、ライブで安定したパフォーマンスを見せるハチャトゥリアンをCDで(しかもライブとさほど変わらないクオリティで)楽しめることを喜ばないといけないのでしょう。
(Naive, V 5025)
(関連記事)
若きソリストたち(当ダイアリーの去年8月2日付の記事)
The comments to this entry are closed.
Comments
Hi there colleagues, nice piece off writiung and pleasant urging commented at this place, I am really enjoying by these.
Posted by: binary options review | 2014.04.13 18:49