ケネディの新譜二題
王道を避け、あえて草をかき分け獣道を進む野武士の如きヴァイオリニスト、ナイジェル・ケネディの新譜2つがほぼ同時にリリースされました。一つはジャズ・ミュージシャンたちを従えてケネディがエレクトリック・ヴァイオリンを操ったアルバム。もう一つはヴィヴァルディの楽曲を中心としたアンサンブル・コンサートのDVDです。
●「Blue Note Sessions」(BLUE NOTE, 0946 3 75336 2 6)
一聴して「極めて真っ当なジャズ・アルバムだな」と思いました。私はジャズには明るくないので、共演奏者で知っている名前はベースのロン・カーターしかいませんでしたが、ネットで色々と調べてみるとジョー・ロバーノ(サックス)もJDアレン(同)もラッキー・ピーターソン(ハモンドオルガン)もケニー・ワーナー(ピアノ)もジャック・ディジョネット(ドラムス)もみんなジャズ界のビッグネームじゃないですか!彼らの(良い意味で)角の取れたまろやかなサウンドはシングルモルトウイスキーのような奥深さです。そんな中ケネディのメタリックでエッジの立ったヴァイオリンサウンドが「アクセント」となっています。しかしブルージーなナンバーでは、ケネディのフュージョン寄りとも思える表現が、彼をサポートする名プレーヤーたちとどこか「色違い」になっている印象が無きにしもあらずですが。まあケネディは決して「他の色」には染まらない演奏家だ、ということでしょう。
●「Kennedy Live Vivaldi Live à la Citadelle」(EMI Classics, 3 65908 9)
ケネディの「代名詞」となっている「四季」など、ヴィヴァルディの作品が収録されたライブDVDです。この「ギグ」でのケネディの演奏ぶり、そして曲間での立ち居振る舞いは、私が以前ラジオで聴いた今年2月のメルボルン公演の雰囲気に極めて近いものです。そのとき強烈な印象を私に残した「調和の霊感」が収録されていないのが残念ですが、共演ミュージシャンたちと共に「ケネディ色」の世界を存分に披露しています。ケネディとの共演暦の長いリュート奏者の竹内太郎さんの活躍ぶりも見ものです(彼には一箇所「見せ場」が用意されています)。
しかしフランスでのライブということで言葉の問題があったせいか、ケネディのMCはメルボルンのときほど「弾けて」いませんでした。ケネディは片言のフランス語で何とか観客とコミュニケートしようとはしていましたが、彼らにプレミア・リーグの話をしてもおそらく伝わらなかったでしょうし、まあやむを得ないところでしょうね。
さてケネディの「ブルーノート東京」での公演はおそらく「Blue Note Sessions」に収録されたナンバーが中心となると思われます。聴きに行かれる方々は事前にこのCDで「予習」(&「耳鳴らし」?)して頂くのが良いかもしれませんね。ただ共演ミュージシャン達がCDとは異なります。メンバーを見るとポーランド人っぽい名前ばかり並んでいますが、CDのブックレットには「うちのカミさんが教えてくれたクラクフのジャズ・シーンが興味深かった」と書いてあるので、もしかしたらその繋がりかもしれません。
The comments to this entry are closed.
Comments