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2006.09.09

「世界文化賞」若手奨励賞を受賞したベネズエラの音楽財団とは

Dudamel_01  最近1枚のクラシックCDが発売されました。曲目はベートーヴェンの「運命」と「交響曲第7番」(→amazon.co.jp)。演奏はシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ、指揮はグスターボ・ドゥダメル(写真上)です。ドゥダメルはベネズエラ出身で、2004年にマーラー指揮者コンクールで第1位を獲得し、昨年巨匠ネーメ・ヤルヴィの代役としてロンドンの夏の音楽祭「BBCプロムズ」にデビューを果たしています。まさに指揮者としてスター街道を走ろうとするドゥダメルのデビュー盤なのですが、私はこのCDで彼が指揮している「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ」について昨日まで何の知識もありませんでした。正直若手育成を目的に結成されたユース・オーケストラくらいにしか思っていなかったのです。

Fesnojiv_01 さて昨日「高松宮殿下記念世界文化賞」が発表されましたが、受賞の栄誉に浴した5名のプロフィールを伝える産経新聞の紙面の片隅に、『「ベネズエラ青少年・児童オーケストラ全国制度財団」(Fundación del Estado para el Sistema de Orquesta Juvenil e Infantil de Venezuela:以下FESNOJIV)(写真中)が「若手芸術家奨励制度」の対象団体に選ばれた』とありました。「どんな財団なのかな」とプロフィールを読んで私は驚きました。ベネズエラでは30年以上前からFESNOJIVを中心に国家レベルで児童や青少年に対するクラシック音楽教育に本腰を入れていること、しかもそこで教育を受けている生徒の大半が貧困地域の出身者たちだというのです(紙面と同一内容の記事は「世界文化賞」の公式サイトで読むことができます)。

Fesnojiv_02  これはただ事ではなさそうだ、と思いネットで色々と検索していくと「シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ」がFESNOJIVに所属する25万人の児童・生徒たちの中からセレクションされた精鋭たちで構成されていること、そしてドゥダメルもFESNOJIVでヴァイオリンを習っていたことも分かりました。さらに彼以外にも既に数多くの演奏家達が活躍しているようです。貧民街出身のEdicson Ruiz氏はFESNOJIVでの教育を経て17歳で(!)ベルリン・フィルのコントラバス奏者となりましたし、薬物使用と強盗の罪で9度も矯正施設に収容された後にFESNOJIVへと送られたLennar Acosta氏(写真下)は、現在同団でクラリネットを教えているとの事です。まあ何と言いますか、「いつからオーケストラはボクシング・ジムのような役割も果たすようになったんだ…」という思いも無いわけではありませんが、とにかくこれまでと異なった成り立ちを持つ音楽組織が日本の裏側に存在していた、という事実に驚かされました。
 更に興味深い点はFESNOJIVの教育システムです。ベネズエラ各地に散らばる210もの管弦楽団で指導を受ける生徒たちには楽器が無償で与えられ(盗難されることを防ぐため、楽器を自宅に持ち帰ることは禁止されています)、14歳以上の優秀な生徒は首都カラカスに集められ、住居から生活費まで提供を受けながら音楽トレーニングを受けているそうです。これらの手厚いサポートはまるでサッカーのユース育成プログラムを連想させますが、財政的にはベネズエラ政府からかなりの援助を受けているようです。
 FESNOJIVにはアバドやラトルらも指導に訪れているとのことで、既に同団は世界の音楽家たちから熱い注目を集めています。その代表選手であるドゥダメルの登場を「新たなスター作り」と揶揄する向きもあるようです。実は私も昨日までそう信じて疑わなかったのですけど(苦笑)、若干その認識を修正して今後のFESNOJIVと、その卒業生たちの活躍を見守りたいと思います。

(参照)
VHeadlene.com. For Venezuela's poor, music opens doors; Classical program transforms lives. (June 22, 2005)
FT.com. Classical escape from life on the mean streets. (August 1, 2005)
BBC NEWS. Venezuela youths transformed by music. (November 28, 2005)
On An Overgrown Path. No such thing as an unknown Venezuelan conductor. (August 4, 2005)
↑ドゥダメルの華々しいデビューを「新たなスターシステムの発動か」と危惧する管理人と、FESNOJIVの活動の意義を強調するコメントの応酬が読ませる。
イザ!-スティーブ・ライヒ氏「名誉です」 世界文化賞の喜び語る (September 8, 2006)
↑昨日ニューヨークで行われた授賞式を伝える記事。
日本アマチュアオーケストラ連盟(JAO) 第46号(注意:pdfファイル)
↑少し古いが、2000年当時のFESNOJIVと、当時若干17歳だったドゥダメルの活躍が記されている。

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Comments

>『東京シンフォニエッタ』という団体が現代邦人作曲家の曲を引っさげて公演した

うーん、私は音楽関係者じゃないのでこの公演の経緯はわかりかねます。なんらかの音楽交流の一環かも知れませんが…。お役に立てなくてすみません。

Posted by: おかか1968 | 2006.09.12 at 18:18

ついにで・・調子に乗って?
昨年7月に 『東京シンフォニエッタ』という団体が現代邦人作曲家の曲を引っさげて公演した・・と聴きました。ここでも、何でベネズエラ?って思いましたが・・・思ったまんま・・です。

おかか様・・どうしてなんでしょうね?

Posted by: かおる | 2006.09.11 at 17:52

かおる様こんにちは。
これは貴重な情報ですよ!ありがとうございます。日本とFESNOJIVとは以前から繋がりがあった、ということですね。

Posted by: おかか1968 | 2006.09.11 at 12:07

こんにちわ。
昔何かの調べ物をしていて目に付いて覚えていたので再検索してみたら・・ベネズエラには日本のODAで楽器が何回か援助されてるんですね。1990,1997,2002年
http://www.ve.emb-japan.go.jp/nikokukan/nikokukan.htm

そのときも疑問に思っていてなんで楽器なんだろう・・って。未だに理由がわかってません。

Posted by: かおる | 2006.09.11 at 11:54

ご教示ありがとうございますm(_)m

Posted by: おかか1968 | 2006.09.10 at 17:28

「アストロ球団」と並ぶ伝説の野球漫画「アパッチ野球軍」です。
http://www.geocities.jp/kindanhm/apachi.html


Posted by: Hayes | 2006.09.10 at 14:04

Hayes様こんにちは。
私も知りませんでした。
「知りませんでした」ついでですが、その歌の元ネタは何でしたか?昔テレビで見かけた憶えがかすかに…。

Posted by: おかか1968 | 2006.09.10 at 11:18

これは知りませんでした。♪俺たちゃハダカが燕尾服~

Posted by: Hayes | 2006.09.09 at 05:36

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