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2006.08.29

【不定期連載】全く役に立たないロシアピアニズム・ガイド①-前口上

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 (一つ前のエントリの続き)
 さて「エスクァイア」誌の今年9月号での「ロシアピアニズム」の特集記事を眺めながら、私はCDバブル真っ只中の1990年代を思い出していました。旧ソ連時代の名手たちのCDが怒涛の如く発売されたあの頃、「それにしてもどうしてこんなに沢山リリースするんだ?」と不思議に思いつつ、「それだけCD化されるだけの値打ちがあるんだろうな」と思って買い集めておりました。さすがに全部を揃えるのはとても無理でしたが(だってホントにもの凄い数のCDが出たんだから…)、しかしその頃の大量リリースのお陰で、私たちはかえって「ロシアピアニズム」の層の厚さと奥の深さに、「物理的」な意味でも気づかされたような気がします。

 ともあれ私はDENONやMELDECのCDを聴くことで、旧ソ連のピアニストたちにハマっていったのですが、彼らの演奏を聴くうちに色んな情報が欲しくなってきて「何か本は無いか」と書店や図書館を探し回りました。佐藤泰一氏の「ロシアピアニズム」がどこにも見当たらなかった(絶版だったから仕方がなかったんだけど)当時、数少ない情報源として重宝したのは「ソビエトの名ピアニスト」(ゲンナジー・ツイビン著、ISBN;4875460481)でした。ロシアで長年活動してきた批評家による文章は、巨匠たちがロシアでどのように見られ、どのように評価されているのかを知る上で貴重でした。そして作曲家カレトニコフが著した「モスクワの前衛音楽家」(ISBN:4794803265)に記されたゲンリヒ・ネイガウスに関するエピソードも興味深いものでした。これらの書籍により、フェインベルク、ソフロニツキー、ユージナ、ヴェデルニコフ、そしてもちろんネイガウス親子らが生前、ソ連国内で極めてリスペクトされていたことを再認識すると共に、「こんな名手たちが鉄のカーテンの向こう側に隠れてたなんて…」という思いも新たにしたわけです。
 しかし私にとってそれ以上の驚きは、彼らが全て確固たるオリジナリティの持ち主だったということです。ロシアの鍵盤の巨匠たちは皆、誰かの猿真似でも借り物でもない、自分にしか表現し得ない音楽世界を持っているのです。そして鉄のカーテンが崩れた今も、巨匠の後継者たる現役ピアニストたちの演奏を聴くにつけ、ロシア人ピアニストは他国人よりも「オリジナリティ」を大事にしているのでは、という気にさせられます。
 旧ソ連で活躍した名手たちだけでなく、革命を逃れて西側で活躍したピアニストたちも含めると「ロシアピアニズム」のカタログは、電話帳並みの厚さになることは確実です。私はそれら全てを把握しているほど博識でありませんので、手持ちの音盤の中から印象的な録音をいくつか紹介していく予定です。
(この項つづく

(写真)先日実家から持ち帰ったLPです。右からブーニンの「クライスレリアーナ」(VIC-28238)、モギレフスキーのラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」(VIC-5122)、ショスタコーヴィチの「ピアノ協奏曲」自作自演(OL-3156)。

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