屋根の上のセロ弾きたち
今イギリスではテムズ川源流から下流までの約203マイル(約327キロ)を遠泳中の冒険家Lewis Gordon Pugh氏(36)が話題になっています。去年南極の沿岸を泳いで「最南端水泳記録」と「極地での水泳時間の最長記録」を打ち立てた彼は、今回は地球温暖化問題のアピールのため泳ぎ続けています。昨日はロンドン・ウェストミンスターまで泳いだ後一旦水を出てダウニング街10番地に直行し、CO2削減を訴える手紙をブレア首相に手渡しました(参照)。
さてイギリスではPugh氏と軌を一にするかの如く、3人のチェリストたちが英国を巡回し、ホームレス救済のための募金を募るチャリティ・コンサートツアーを行いました。しかし彼らのパフォーマンスはいささか大胆です。というより常軌を逸しています。彼らは行く先々の教会の屋根の上に楽器を担いで登り、そこで演奏会を行っていたのです。
Jeremy Dawson、Clare Wallace、そしてJames Reesら3人のチェロ奏者による破天荒なチャリティ・ツアーは先月24日のコーンウォール地方・トゥルロを皮切りに、イングランド国内に点在する英国国教会の大聖堂42ヶ所を12日間で廻るという強行軍でした。総移動距離が約1900マイル(約3058キロ)にも上る、と聞くだけでも偉業だと思うのですが、どうしてこの3人は大聖堂の静寂の中ではなく、わざわざ太陽が照りつける屋根の上でのコンサートを行ったのでしょうか。
3人がアブノーマルな演奏行為に及ぶきっかけとなったのは、なんと「究極のアイロン掛け」としてネット界で一時話題になった「エクストリーム・アイロン掛け」(Extreme Ironing:→Wikipedia)でした。アイロンとアイロン台を抱えてエベレストやら深海やらに出かけてアイロン掛けをしてしまうというアレです。「場所を選ばない」というコンセプトにインスパイアされた彼らは自らを「エクストリーム・チェリスト」(→公式サイト)と名乗り、アウトドアでのコンサートに精力的に取り組み始めます。今回のチャリティ・ツアー「Cathedral Roof Tour」は3人にとって三度目となる大きなツアーとなります。
「人間とは考える葦である」と言ったのはパスカルですが、本当に人間って色んなことを考えるものですね。しかし「エクストリーム・チェリスト」には今や(ドイツの有名な弦メーカーのピラストロなど)立派なスポンサーが付いていたりするので、演奏団体としての前途は洋々といったところでしょう。
(参考)
BBC News. Extreme cellists scale cathedrals. (August 3, 2006)
Guardian. Cello trio's rooftop tour. (August 4, 2006)
Extreme Cellists Cathedral Tour Blog. (←今回のツアーの公式ブログ)
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