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2006.07.21

ファリネッリの墓を暴く科学者たち

Farinelli  今月12日、ボローニャの記念墓地にある18世紀の伝説的名歌手、ファリネッリ(写真)の墓が暴かれました。バロック時代を代表する去勢歌手=カストラートの遺体を発掘したボローニャとピサの研究者たちは、墓から見つかった骨をカストラートの生理(病理?)学的研究のために役立てたいとの事です(参照1)。
 私はこのニュースを見て「あれっ?」と思いました。というのもカストラートの生物学的特長である高い声、高い身長、そして小太りな体型はすでに医学的に説明可能だからです。

 カストラートとは去勢手術によって人為的に生み出された、高音を出す男性歌手たちのことですが、「去勢」によって失われるのは睾丸です。この臓器は男性ホルモンのひとつであるテストステロンを産生しますが、思春期にテストステロンは産生量が急激に増大し、第二次性徴を発現させます。そしてテストステロンは喉頭を成長させて「のどぼとけ」を作り出すと共に、声帯を肥大させます。これにより男性の声が低くなるわけです。逆にいうと睾丸の無いカストラートはテストステロンによって誘発させる声帯発達が起きず、高い声を保ったまま大人になっていきます。
 またテストステロンは骨の成長する場所である「骨端軟骨」を消失させます。つまり骨の成長、すなわち身長の伸びを止める作用があります。カストラートの場合は骨端軟骨はいつまでも手や足などに存在し続けるため、身長は伸び続け、その結果カストラートは一般男性よりも背が高くなっていきます。これ以外にもテストステロンは脂肪を燃焼させる働きがあるので、このホルモンが少ないカストラートは腹部脂肪が増加し、自ずと小太りとなっていくのです。
 このようにカストラートが生み出されるメカニズムは既知の医学的知識で十分説明可能なのです。個人的には今回発掘に携わった学者たちがどんな研究をするのかを興味深く見守りたいところです。単なる「興味本位」でなければ良いのですが。

(参考)
Wikipedia - テストステロン
メルクマニュアル. 生殖器の異常
北里大学電子テキストブック. Q213:アンドロゲン

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Comments

こもへじ様こんばんは。
テストステロンはオリンピックに出場するトップアスリートのドーピングによく使用されてたので(代表選手があのベン・ジョンソン)、以前少し個人的に調べてみたことがあったのです。ちなみに古代オリンピックに出場した選手たちは羊の睾丸を食べていたらしいですよ。

>あす文字絵研究所がテレビ埼玉の夜10時から
TV出演おめでとうございます。我が家はテレビ埼玉は映らないのでオンエアを拝見できず残念ですが(すみません…)。今後のこもへじ様の益々のご活躍をお祈りしております。

Posted by: おかか1968 | 2006.07.28 at 18:34

 びっくりしました。何というかすごい。よくわかりやすくまとめましたね。カストラートの生物学的な機序のことを。
 こもへじです。こんにちは。実は仕事柄、医学関連(特に精神医学)の文章については注意するようにしているのですが、上の文章、とても明快だと思いました(内容については知識がないので何ともコメントできませんが...)。
 ところで、あす文字絵研究所がテレビ埼玉の夜10時からの「ビジネスウォッチ」という番組で紹介されることになりました。もし視聴可能でしたらご覧いただければ幸いです。ブログにもう少し詳しく放送の話をアップしました。
 それにしても、この墓暴きの話はひどいですね。ファリネッリという人は名前しか知りませんが、同情してしまいます。


Posted by: こもへじ | 2006.07.28 at 11:57

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