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2006.07.08

ノイマンの言葉

 サッカーの次期日本代表監督の選考をめぐる喧騒の中で「オシムの言葉」(著者:木村元彦:→amazon.co.jp)が再び売り上げを伸ばしています。そこには旧ユーゴスラビアを代表する指揮官である彼の含蓄ある発言の数々が収録されています。これらのいわゆる「オシム語録」はサッカーオタクにとってキリスト教の福音書のような存在となっているわけですが、私は彼の言葉の中に冷戦時代をくぐり抜けた東欧人特有の「体臭」を強く感じます。例えば「人気語録ランキング」で間違いなくベスト3に入るであろう「レーニンは『勉強して、勉強して、勉強しろ』と言った。私は、選手に『走って、走って、走れ』と言っている」という発言は、第2次大戦後の東欧で教育を受けた人でなければ出てこないでしょう。この一言に限らず、彼の談話にはユーモアが伴っていますが、そのユーモアを理解するには一定の知性が要求されます。そのような理知的な笑いは、旧ソ連のアネクドートの数々と共通するものです。さて音楽界はどうでしょうか。ここで私が紹介するのはチェコの指揮者、ヴァーツラフ・ノイマン(1920-1995)の言葉です。

Neumann_vaclav ノイマンが手兵のチェコ・フィルと共に日本で演奏旅行をしていた1982年11月10日に、旧ソ連のブレジネフ書記長(当時)が死去しました。当時共産主義国家だったチェコスロバキアの政府関係者から「共産党のドン」への弔意を表すよう命じられたノイマンは、リハーサルを始める前にスピーチを始めました。「皆さんご起立をお願いします。労働階級の英雄にしてソビエト連邦書記長のブレジネフのために祈りましょう。我々はチェコ音楽に多大な貢献をされた偉大なる人物に対して敬意を表します」。そう言った後ノイマンは間髪入れずにこう言いました。「どうぞご着席下さい。彼はチェコ音楽に大した貢献をしていませんから」。これはジョークではなく実話です。しかしどこかアネクドート的で、風刺の利いたエピソードですね。
[この話の元ネタは、ノーマン・レブレヒト氏が今月5日に発表したコラム(参照)ですが、実際に証言したのは、ノイマンの後にチェコ・フィルの音楽監督を務めたイルジー・ビエロフラーヴェクです]

(参考)
チェコ・フィルの世界-1982年来日公演
レオニード・ブレジネフ-Wikipedia
プラハの春-Wikipedia

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Comments

J.D.様こんばんは。うちのサイトは引用自由、コメント自由、ついでに言うとトラバも自由ですので、今後もよろしければご遠慮なく引用ください(笑)。
さて「オシム語録」ですが、真の賢人による金言の恐ろしいところは、清き心の持ち主を魅了するとともに、不幸にしてそうではない人たちの心までも魅了するところです(苦笑)。ということで今JFAは……、というわけですが。

ドラマで描かれるクラヲタ像についてですが、これについてはクラヲタは世間ではアニヲタ、鉄っちゃん同様、「サブカルチャーの担い手」として把握されてる、ということなのではないでしょうか。まあこれはこれで立派な「教養」なのですが。

Posted by: おかか1968 | 2006.07.24 20:52

こんにちは。
J.D.と申します。はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。

 私の方でのサーバーの移転の都合で、遅い事後連絡になってしまい申し訳ないのですが、こちらで触れられていた『オシムの言葉』に関する一文が興味深かったもので、私のブログに少し引用させていただきました。20世紀の国際政治の知識がある人ならそうは珍しくなくても、日本のサッカー関係者からは出てこなさそうな(苦笑)印象でしたので。
 すでにご存知でしょうが、この本は全国学校図書館協議会というところが主催する読書感想文コンクールの高校の課題図書になってますが、これを高校生クンたちはどう読むのでしょうかね?

 「ドラマで描かれるクラヲタ像」も拝見しましたが、私は地上波TVは見ないのでこのドラマのことは知りませんが、少なくともその番組を制作して放送する側と(ドラマが描写する)設定に疑問をほとんど挟まない視聴者にとって、いったい‘教養’って何なんだろう、と虚しくなってしまいました。では。

Posted by: J.D. | 2006.07.24 19:17

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Tracked on 2006.07.24 18:39

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