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2006.05.07

【短期連載】有楽町でモーツァルトに逢いましょう(7)

Toy_symphony

 今年の「熱狂の日」音楽祭は去年のようなチケット売り場前の長蛇の列こそ見られなかったものの、展示ホールや屋台村前は昨年と変わらない賑わいを見せていました。所狭しと軒を連ねる屋台の前をロココ風(?)の衣装を身にまとったスタッフが行きかう様は、まさに巨大テーマパークさながらの非日常的な異空間です。この場所に居るあいだは日常の煩わしさから開放されて音楽に没頭できる、そんな思いで東京国際フォーラムに連日通った人も少なからず居るのではないでしょうか。ともあれ去年の成功の勢いをそのまま持続できたのは良いことでしたし、事故も無く無事終了し、スタッフの方々は今頃胸をなでおろしているでしょう。「熱狂の日」音楽祭関係者の皆様にはこの場をお借りして「お疲れ様でした」と申し上げます。

 さて去年は「クラシックでも人は集まる」ことを証明した音楽祭でしたが、今年は「人が集まるところに英知が集まる」ことを実感する音楽祭となりました。丸ビルの関連イベントでレクチャー・コンサートをされた海老沢敏氏のようなモーツァルト研究の第一人者から、オルタナティブな見地から鋭い批評をされる許光俊氏のような異才まで、多種多様な意見を持つ論客たちがモーツァルトの名の下に集まったことは、音楽業界にとっても意義深い出来事だったと思います。この辺りに「熱狂の日」音楽祭の新たな可能性が見えるような気がします。子供向けのイベントも大いに結構なのですが、今年のトークライブのような大人の知的好奇心を満足させるイベントにも積極的に取り組んで欲しいと思います。
 それから今度は良くない「可能性」の話なのですが、これほど集客力のあるイベントになると、来年以降広告収入が伸びることが予想されますが、多額の広告収入に目が眩んで商業主義に走るようなことがあってはならないと思います。例えば冠スポンサーを募ったり、ホールの名前を音楽家の名前でなく企業名にしたり、広場で作業するスタッフのユニホームに(F1レーサーばりに)スポンサーのワッペンを貼るようなことは避けて頂きたいのです。まああまり宣伝色を強くしたら、会場から生中継してくれたNHKが手を引いちゃうでしょうから、そんなことにはならないと思いますが。
 ところで日本にはサマーソニック、フジロック、エゾロックなど、夏のロック・フェスティバルが盛んに行われ、多くの観客を集めています。しかしどのサマーフェスも「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」のように子供連れ(特に乳幼児)を多数動員することは出来ないでしょう。そのことを関係者はもっと誇って良いと思います。一部には託児所の設置を希望する意見もあるようですが、私は「親子が一緒になって音楽を楽しむ」ことが、この音楽祭の根幹を成すアイデンティティの一つだと理解しています。まあ多くの音楽ファンがカール・ライスターを聴くために会場に足を運んだのに、「クラリネットと赤ちゃんによる合奏協奏曲」を聴く羽目になったのはお気の毒でしたが(苦笑)。そのあたりプログラミングには若干の課題が残りました。
 プログラミングついでに来年の「熱狂の日」についても一言。「国民学派」(仮称)というテーマですが、「五人組」やチェコの作曲家だけではなく、北欧の3人(シベリウス、グリーグ、ニールセン)、フランスの「印象派」、果てには英国音楽まで扱うころになるそうです。これははっきりいって「ドイツ音楽以外のクラシック音楽全てを扱う」と言ってるようなものですよ(苦笑)。ともあれ「ボレロ」に「新世界」、そしてチャイコフスキーやラフマニノフのピアノ協奏曲といった有名曲ばかりでなく、「熱狂の日」らしくマイナー作品も忘れずフォローして頂きたいです。あと会場では映画も上演されますが、その際はぜひヤナーチェクの伝記映画「白いたてがみのライオン」をお願いします。
 最後に演奏会のあと非常階段を下りているときに漏れ聞いた、後ろにいた女の子の言葉が印象的だったので紹介します。
「なあ?わたし、頭良くなったかなぁ?」

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