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2006.03.31

ハレ管のアメリカ・ツアーが中止 その理由は…

 1858年創立のマンチェスターを本拠地とする管弦楽団、というよりかつてサー・ジョン・バルビローリやジェームス・ロッホラン、そしてスタニスラフ・スクロヴァチェフスキらが首席指揮者を務めたオケとして有名なハレ管弦楽団(以下「ハレ管」)が、来年に予定していたアメリカ公演を中止すると発表しました。同楽団幹部によると、ツアー断念の理由は「就労ビザ取得に費用と手間がかかり過ぎるため」ということです。

 100名もの団員やスタッフがアメリカに入国するのに必要な就労ビザの手数料は合計45,000ポンド(約920万円)にも上ります。そして(同時多発テロを受けて)米国の入国審査が厳しくなったおかげで、就労ビザの給付には参加メンバー全員がロンドンのアメリカ大使館で指紋採取の上で面接を受けねばならず、その手続きのため団員全員のスケジュールをまる2日空ける必要に迫られました。「今回の決定にはとてもがっかりしているし、非常に悲しい」と語るハレ管のマーケティング・ディレクター、Andy Ryans氏は「(ハレ管は)ビザの費用やロンドンへの100人分の交通費をまかなえない状態だ」とコメントしています。同氏は入国審査の厳格化については「入国ビザ、特に就労ビザ取得に関するルール変更の理由は理解している」と述べていますが、スタッフの中には「ビザ取得のためにそんなムダ話が必要とはビックリだ」と言うものもいます。
 当初予定されていたアメリカでの2回公演では、バルビローリも活躍したニューヨークでの演奏会(於リンカーン・センター)も予定されていました。さぞスタッフは意気込んでいたことでしょうから、その分落胆も大きいのではと察せられますが、ハレ管の厳しい経済状況を考えると、2回公演のために1千万円も負担するのは現実的ではない、という楽団幹部の判断は正しいのかもしれません。
(参考)
Manchester Evening News. US visas too much hassle for Hallé. (March 30, 2006)
BBC NEWS. Red tape silences orchestra tour. (March 30, 2006)
The Guardian. Trouble and cost of visas halts Hallé's US tour. (March 30, 2006)

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Comments

dokichi様こんばんは。
渡航費用ですが、出そうと思えば出せたのかもしれませんが、オケの財政事情のことを考え「まずは足元をしっかりと固めてから」と思ったのかもしれません。スポンサーの一つでも付いていたら違う結果が出たかもしれませんが。

Posted by: 「坂本くん」 | 2006.04.05 20:10

こんにちは。
ハレ管とマーク・エルダーのコンビって
なかなかいいように思うので
(個人的な感想ですが)
”ビザの費用やロンドンへの100人分の交通費をまかなえない状態だ”・・というのは
心配ですねえ・・
ビザ取得費が高いのも問題ですが・・。
 

Posted by: dokichi | 2006.04.04 08:07

ガーター亭亭主さまこん○○は。
この件といい、メキシコからの不法移民についての最近のニュースといい、これまで外国からのヒト、文化の流入に寛容だったアメリカの、国家としてのアイデンティティが問われているような気がします。
それにしてもビザ発行の手続きって面倒ですよね。私もオーストラリアに就労ビザを取りに行ったときは1日つぶして領事館に行きましたから。まあセキュリティの問題がありますから納得はしてますけど。

Posted by: 「坂本くん」 | 2006.04.02 11:02

ちょっと驚くべきことですね。
まあ、もちろんそこを狙ったことではないとは思いますが、結果としての文化鎖国主義になりかねないのでは、と思います。

就労ビザの手数料で得たお金を国内産業の振興につぎ込んでいるのでしょうかね。

全体から感じる閉鎖的な臭いに危険なものをかぎ取ってしまいます。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.04.01 05:50

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