ハレ管のアメリカ・ツアーが中止 その理由は…
1858年創立のマンチェスターを本拠地とする管弦楽団、というよりかつてサー・ジョン・バルビローリやジェームス・ロッホラン、そしてスタニスラフ・スクロヴァチェフスキらが首席指揮者を務めたオケとして有名なハレ管弦楽団(以下「ハレ管」)が、来年に予定していたアメリカ公演を中止すると発表しました。同楽団幹部によると、ツアー断念の理由は「就労ビザ取得に費用と手間がかかり過ぎるため」ということです。
1858年創立のマンチェスターを本拠地とする管弦楽団、というよりかつてサー・ジョン・バルビローリやジェームス・ロッホラン、そしてスタニスラフ・スクロヴァチェフスキらが首席指揮者を務めたオケとして有名なハレ管弦楽団(以下「ハレ管」)が、来年に予定していたアメリカ公演を中止すると発表しました。同楽団幹部によると、ツアー断念の理由は「就労ビザ取得に費用と手間がかかり過ぎるため」ということです。
勘のいい当ダイアリーの読者の方はすでに気付いておられるとは思いますが、(ネットラジオに嵌ってるせいでしょうか)最近CDを買う機会がめっきり減ってしまいました。だからといってこれまでCDに投資していたお金を貯金に回せているというわけでなく、そのぶん本やDVDの購入に充てているので結局我が家の財政状況には何の変化の兆しもないわけですが(笑)。
そんな中でアマゾンで購入後何度も読み直しているのが「西洋音楽史」(岡田暁生著)(→amazon.co.jp)です。すでに世評も高いこの本ですが、ネット上でのレビューを見ていると結構各人の感想がバラエティに富んでいるので、パソコンを眺める度に「色々なものの見方があるなぁ」と感心することしきりです。ここで述べるのはあくまで私の個人的な感想であり、この250ページの新書を読み終わったあと皆さんは私と異なる思いを抱く可能性は高いと思います。ただこの本は様々な読者の「立ち位置」に配慮しつつ、外してはならない「要点」をキッチリと押さえて書かれた良心的なクラシック音楽のガイドブックとして、何のためらいもなく推薦できるものであることは確かです。
作曲家のスティーヴ・ライヒ(写真)は3日前「BBC Radio 3」の生放送でインタビューを受けていました。彼が自作「ディファレント・トレイン」のアイデアの基となった自らの幼少期の話をしていると突然どこからか電子音が鳴り始めました。どうやら携帯電話の着信音のようです。しかしその音はこれまで聞いたことのないようなアルペジオでした。するとインタビュアーが「これはライヒの新作です。携帯電話のための小品です」と話し始めました。どうやら着信音の発信源はライヒ自身が持っていたケータイで、しかも着信音は彼のオリジナルだったのです。この短い作品について尋ねられたライヒは「これは妻から電話があったときのための特別な着信音だよ」「曲のタイトルはまだないけど」などと笑いながら応じていました。
この彼の作曲による世界に一つしかない着信音は3/23までBBCのサイトで聞くことができます。ここの「BBC Radio Player」の「Listen Again」のところにある「In Tune」の「THU」のところをクリックすれば、このライヒのインタビューを受けた番組が聴けます。問題のシーンは番組が始まって丁度100分ほど経過したあたりです。
(参考)
On An Overgrown Path. Steve Reich premiere on BBC webcast (March 17, 2006)
今月16日の午後8時頃(現地時間)に行われるベルリン・フィルの演奏会(サー・サイモン・ラトル指揮)のプログラム(→公式サイト)はユニークです。メインのホルスト「惑星」のあとにコリン・マシューズの「冥王星」が演奏されるところまでは「まあ指揮者がラトルだし、イギリス人らしいな」といったところなのですが、コンサート前半の4曲が全曲世界初演で、しかもすべて惑星や宇宙に関するものを題材に取った作品というのがとても風変わりで面白そうです。
(写真)カリスト・ビエイト演出の「ドン・ジョヴァンニ」(イングリッシュ・ナショナル・オペラ)から 第2幕「食卓(というよりリビングルーム)のシーン」
過剰なまでの性的描写と猟奇的な暴力シーンが欧州のオペラ界で話題(「問題」とも言えるが…)となっている演出家カリスト・ビエイト氏については以前当ダイアリーでも取り上げましたが、彼の演出による「ドン・ジョヴァンニ」(リセウ歌劇場:2002年上演)のDVD(→HMV.co.jp)が先日リリースされました。「モーツァルトは頭が良くなるから」と思い何の予備知識もなく購入した人はこのビデオを見て腰を抜かしてしまうかもしれません(苦笑)が、彼の演出は決して興味本位なものではなく社会派的な問題提起も孕んでいて、色々と考えさせられます。
去年ベートーヴェン作曲「大フーガ変ロ長調」を作曲家自ら四手ピアノ用に書き直した自筆譜がオークションで2億3000万円で落札された、というニュースが伝えられました。その時は落札者が誰か明らかにされませんでしたが、意外な形でその名前が明らかになりました。先日、投資家でジュリアード音楽院の評議員でもあるBruce Kovner氏が、自ら収集した楽譜コレクションを同音楽院に寄贈しましたが、その中に去年フィラデルフィアの神学校の地下室から発見された80枚の自筆譜が含まれていたのです。
ハーバード大を中退後、タクシードライバーを経て投資会社「Caxton Associates」(→公式サイト)を設立したというユニークな経歴を持つKovner氏が、楽譜収集にハマり出したのは10年程前です。「西洋音楽の偉大な業績に触れたいという個人的な興味から楽譜収集を始めました」と言う彼がジュリアードに寄贈した139点のリストは音楽院の公式サイトで見ることができます(pdfファイル)。パーセルの「ディドーとエネアス」の原稿(写真)からシュニトケの作品までとバラエティに富んだ楽譜コレクションは「Juilliard Manuscript Collection」と名づけられ、2009年に完成予定の特別閲覧室に収められる予定です。
(参考)
The Juilliard Journal Online. Juilliard Receives Gift of Rare Manuscripts (March, 2006)
CBS News. Secret Trove of Music Donated to Juilliard (March 1, 2006)
Playfuls.com. Priceless Collection Of Music Manuscripts Donated To Juilliard (March 1, 2006)
BBC News. Juilliard given rare manuscripts (March 1, 2006)
CNN.com. Nearly 140 manuscripts date as far back as late 17th century (March 1, 2006)
オークション会社のクリスティーズは、1707年製造のストラディバリウス・ヴァイオリンを5月16日に競売にかけると発表しました。以前Christian Hammerというスウェーデン人が所有していたことから、「ハンメル」(The Hammer)という名前(いかにもオークションされそう…)で呼ばれているこのヴァイオリン(写真左)は、アントニオ・ストラディバリが優れた名器を数多く作り出した「黄金期」(1700年~1720年)に製作されたということで、かなりの高額での取引が期待されています。最近まで所有者からの貸与を受けた竹澤恭子さん(写真右)が使用していた(※1)というこの楽器、予想落札額は「150万ドル(約1億7400万円)から250万ドル(約2億9000万円)の間」で、昨年オークションで楽器としては史上最高落札額で落札された(やはりストラディバリウス製ヴァイオリンの)「The Lady Tennant」の203万2000ドル(約2億3542万円)を超える可能性があります。
(※1)竹澤さんの公式サイトによると、現在は別のストラディバリウスを弾いているようですね。
(参考)
PlaybillArts. Christie's to Auction Stradivari's 'The Hammer' (February 28, 2006)
News-Antique.com. ‘The Hammer’ Stradivari Violin Leads Christie's Musical Instrument Auction. (February 27, 2006)