イランで西洋音楽放送禁止令
イラン国営放送での全ての西洋音楽(クラシック音楽を含む)のオンエアが禁止されることになりました。昨日イランのアフマディネジャド大統領が、西洋音楽がラジオで日常的に流される現状を非難し、公共放送でのオンエアを禁止するよう命令しました。この政令は半年以内に実行しなければならず、今後イランでは欧米ロックやポップスだけでなくクラシック音楽もラジオで楽しむことはできなくなります。
イランでの文化のイスラム化政策は、1979年のホメイニ師によるイスラム革命の頃に始まります。革命政権が「西洋音楽は害毒」という立場を取ったため、多くの音楽家がイランを逃れることを余儀なくされました。この政策は時を経るとともに緩和され、ホメイニ師の死去後はロックなど欧米のヒットチャートを賑わせている音楽も徐々に解禁されていきました。
西洋音楽に寛容なハタミ政権下で活動を続けてきた音楽家たちの運命は、今年のイラン大統領選、そして「イスラム原理主義的」とされる人物への政権交代で暗転しました。12月の上旬にはホメイニ革命以来初となるベートーヴェン「第九」の連続演奏会を開き、地元メディアから「西洋の価値の押し付けだ」と非難された指揮者のアリ・ラハバリ(写真:日本では「アレクサンダー」という名の方が通りが良いですね)が、イランの音楽政策に抗議して自らテヘラン交響楽団のポストを辞し、イランを離れるという事件もありました。
それにしても「ホロコーストは作り話」「イスラエルは欧州に移国すべきだ」など、アフマディネジャド大統領の発言が連日ニュースをにぎわせている中、今回の「西洋音楽禁止発言」は気がかりです。特に私はこの「非西洋化」の流れがアジア有数の強さを誇るイラン・サッカー界にも及ぶことをとても心配しています。
(参考)
New York Times. Iran's President Bans All Western Music (December 19, 2005)
Iran News. Tehran symphony conductor leaves for Vienna (November 20, 2005)
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Comments
Niϲe blog Albertine
Posted by: Vizyondakiler | 2014.02.22 14:35
くまさんこんばんは。
元ネタの「ニューヨーク・タイムズ」紙の記事の結語にもありましたが、イランの現在の政策はタリバン統治時代のアフガニスタンを連想させるものがあります。共産主義政権下なら「国威発揚」の名の下、積極的に国際舞台に参加するところですが、イスラム原理主義を推進する国家の場合、西洋由来の文化は徹底的に排除しようとするので、どうしても悲観的な観測をしてしまうのです。かつてのアフガニスタンではサッカースタジアムは公開処刑場に転用されていたわけですし。
ところで旧ソ連の「肋骨レコード」ですが、レントゲンのフィルムはソノシートよりも柔らかいのに丈夫なので、レコードの代用品としては最適の素材です。レコードへの転用を最初に思いついた人は素直に偉いと思います。
Posted by: 「坂本くん」 | 2005.12.21 23:53
お久しぶりです。
何でも禁止すれば済むと思っているお偉方って、頭が悪いですよね。もしかしたら、放っておけば廃れる文化かもしれないのに、上から禁止すれば、庶民は反感を感じながら、地下へ潜るだけでしょう。
以前、レントゲン用のフィルムに西側のロックなどを「録音」した「肋骨レコード」で密かに聴いていたロシアの音楽好きをテレビで見た時、民衆って凄いなと感じました。
Posted by: くま | 2005.12.21 22:00