« November 2005 | Main | January 2006 »

2005.12.31

カエターニ 就任前にENOの音楽監督を辞任

 本当なら大晦日はテレビを見ながらのんびりするつもりでしたがニュースです。イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)はこのたび、指揮者のオレグ・カエターニが当初予定されていたENOの音楽監督のポストには就かないことを公式発表しました。ENOの芸術監督John Berryと総支配人のLoretta Tomasiが今週はじめにカエターニと会談し、その席上で10ヶ月前に一旦決定した人事を白紙にすることで両者が合意しました。今後カエターニは客演指揮者としてENOと関係を保っていくとのことです。地元メディアでは「カエターニはメルボルン響の音楽監督の仕事が多忙で、ENOのための用意できる時間が余りにも少ない」ことをその理由として挙げていますが、最近一ヶ月間に総支配人と芸術監督が相次いで辞任するなどゴタゴタ続きのENOですから、カエターニはかえって関わらない方が良かったのかもしれません。
 ENOでは労使交渉のもつれから、来年早々にはスタッフのストライキも予定されています。管轄する英政府も黙認するわけにはいかず、文化相がENOに対し調査に乗り出すことを明言しています。
(参考)
Guardian. ENO changes tune on music director (December 29, 2005)
The Stage Online. ENO saga continues as Caetani ruled out of musical directorship (December 30, 2005)
The Stage Online. ENO staff vote to strike in new year (December 29, 2005)
The Stage Online. Tory MP demands inquiry into ENO crisis (December 28, 2005)

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.12.29

「坂本くん」的10大ニュース2005

 2005年もあと3日となり、いよいよ歳末も慌しくなって参りました。それにしても寒いですね。私の住んでる辺りも12月にしては記録的な大雪でした。ある日などは一晩中吹雪が続き、その風の余りの強さに我が住まいもガタガタと振動してしまい(「耐震強度なにがし」的物件ではないはずなのですが…)、その音で夜も眠れませんでした。仕方なく窓の外を眺めると、闇夜に雪が激しく宙を舞う光景が視界一杯に広がっているので、つい頭の中で「南極交響曲」が鳴り響いてしまう程の自然の脅威を感じましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 さて2005年のクラシック音楽を回顧する、ということで先日は「今年の10枚」ネタをやりましたが、このエントリでは今年の音楽界の動向を「坂本くん」的に振り返ってみたいと思います。

Continue reading "「坂本くん」的10大ニュース2005"

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.12.27

Apex 10 - My Best 10 CDs 2005-

 正直今年は去年よりは不作かな、と思ったりしてたのですが、改めて10枚並べるとなかなかいいアルバムがそろいましたね。まああくまで個人的なベスト、ということですのでそのあたりご容赦下さい。
 ただ元々新物好きの私が「おおっ」て思うような「新たな発見」がもう少しあれば嬉しかったな、と思ったりもします。ただでさえレコード産業が先細りの昨今ですから、新たな才能をCDショップで見つけるのはいよいよ難しくなっています。そんな中殆ど無名だったヴァイオリン奏者のルミニッツァ・ペトレが自主制作CDを通して脚光を浴びたことは現代の奇跡なのかもしれません。しかしペトレはプロフィールで見る限り堂々たる実績の持ち主です。星の数ほどいるアーティストの銀河から綺羅星を見出すことはそれほど難しいことなのでしょうか。
 それでは10枚のCDのリストを晒します。

Continue reading "Apex 10 - My Best 10 CDs 2005-"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.12.23

スターリングラードのメリークリスマス

stalingrad_madonna

 この絵の作者はクルト・ロイバー。彼は第2次大戦で軍医としてスターリングラードに赴任中、ソ連軍の包囲により補給路が絶たれた中、地図の裏を使ってこの聖母像を描きました。医師・オルガニストのシュバイツァーとも親交があったという彼は生きて戦地から故郷に帰ることはできませんでしたが、彼が生前に記した手紙にはこう記されています。

Continue reading "スターリングラードのメリークリスマス"

| | Comments (5) | TrackBack (0)

改めて「SUPPORT HYPERION」

de_Lalande_hyperion 「ガーディアン」紙の今日付の記事(英語)によると、フランス・バロック期の作曲家ミシェル・リシャール・ドゥラランド(Michel-Richard de Lalande:1657~1726)の作品を編纂したライオネル・ソーキンス博士と、彼の楽譜でレコーディングを行った英ハイペリオン社との訴訟で、敗訴したハイペリオンは訴訟費用を含めて95万ポンド(約1億9200円)を支払うことになりました(写真は訴訟の元となったCDのジャケ写)。
 この話題について、詳しくは他のブログのエントリ(その1その2)をご覧頂くとして、今日はこのニュースに対する音楽界のコメントのみを取り上げることにします。

Continue reading "改めて「SUPPORT HYPERION」"

| | Comments (2) | TrackBack (1)

2005.12.21

10万アクセスの御礼

 当サイトをご覧の皆様;

 厳しい寒さが続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 さて「おかか1968」ダイアリーが累計100000アクサスを達成いたしました。本当に至らないところの多い当サイトにもかかわらず、多くの方にご覧頂いて、恐縮することしきりです。コメントやトラックバックをされた皆様、私のサイトの情報源となった全てのサイトの管理人の方々、そして多忙ななか当サイトにお越しいただいた皆様に、改めて御礼申し上げます。全てにわたり未熟なこのサイトですが、今後もご愛顧ならびにご支援の程よろしくおねがいいたします。

平成17年12月21日
「坂本くん」拝                            

| | Comments (4) | TrackBack (0)

2005.12.20

イランで西洋音楽放送禁止令

 イラン国営放送での全ての西洋音楽(クラシック音楽を含む)のオンエアが禁止されることになりました。昨日イランのアフマディネジャド大統領が、西洋音楽がラジオで日常的に流される現状を非難し、公共放送でのオンエアを禁止するよう命令しました。この政令は半年以内に実行しなければならず、今後イランでは欧米ロックやポップスだけでなくクラシック音楽もラジオで楽しむことはできなくなります。

Continue reading "イランで西洋音楽放送禁止令"

| | Comments (3) | TrackBack (1)

2005.12.18

JEUJIAもブログで頑張ってる

 京都を中心に店舗を展開するレコード店で、私も小さい頃から大変お世話になっている「JEUJIA(昔は「十字屋」)」が最近ブログを始めました。「JEUJIA SHOP BLOG」という名で、各支店ごとにブログを開設しているのですが、一番活発に更新しているのはJEUJIAが一番力を入れている(と思われる)「梅田ハービスENT店」のブログです。このサイトの最新エントリに、大植英次のインストア・トーク・イベントの模様を詳細に記したものがありましたので、興味深く拝見させて頂きました(→参照)。

Continue reading "JEUJIAもブログで頑張ってる"

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2005.12.15

弦楽四重奏団が、メンバー同士で激しい「不協和音」

audubon_SQ  弦楽四重奏団といえばメンバー交替はさほど珍しいことではありませんが、アメリカではそのメンバー交替を巡ってトラブルとなったクワルテットがニュースを賑わせています。「ニューヨーク・タイムズ」紙の今月11日付の記事によると、オウデュボン弦楽四重奏団(写真:The Audubon String Quartet)の元第1バイオリン奏者であるDavid Ehrlich氏が、自分を退団させた他の団員3人を訴えた裁判で、ヴァージニア州の裁判所は、団員3人に対しEhrlich氏に賠償金61万1000ドル(約7240万円)を支払うよう命ずる判決を下しました。この賠償金を支払う能力のない団員たちに対して裁判所が財産を差し押さえたため、団員は家や家財道具はもちろん、仕事に欠かせない楽器も最悪の場合手放さなければならなくなり、団員たちは途方に暮れています。

Continue reading "弦楽四重奏団が、メンバー同士で激しい「不協和音」"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.12.13

「シベリウスの日記」公開

 ブログ「w h e a t n o o d l e s . o r g」でも紹介されていますが、この度フィンランドの国民的作曲家、ヤン・シベリウスの日記が初めて出版されました(参照)。シベリウス学者のフェビアン・ダルストローム氏の手により出版されたこの日記には、1909年から44年までのシベリウスの個人的な心情が綴られています。具体的な内容は、妻アイノへの愛情、交友関係、経済問題など多岐に渡りますが、自らの祖先がフィンランドの農民であることに落胆するなど、興味深い記述もあります。そんなシベリウス自身が、現在でも著作権料で2億円稼ぐほどの大人物になるのですから、世の中とは面白いものです。でもこの日記には、私がぜひとも知りたい「交響曲第8番」のことなど、自らの作品について触れてある箇所はほとんどないとのことです。残念。
 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

【レビュー】アルバン・ベルクSQのベートーヴェン全集DVD

ABQ_LvB02 ABQ_LvB03 ABQ_LvB01

(2006.3.17註)このレビューは輸入盤DVDを視聴した上で作成しましたが、今年5/24に日本版(リージョン2)が発売されます。上の写真をクリックするとamazon.co.jpのサイトから予約できます。

<曲目>
[Vol.1](写真左)
1.ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第4番ハ短調 作品18-4
2.同:同第14番嬰ハ短調 作品141
3.同:同第1番へ長調 作品18-1(以上DVD1)
4.同:同第3番ニ長調 作品18-3
5.同:同第10番変ホ長調 作品74「ハープ」
6.同:同第13番変ロ長調 作品130(以上DVD2)
[Vol.2](写真中)
1.同:同第12番変ホ長調 作品127
2.同:同第7番ヘ長調 作品59-1「ラズモフスキー第1番」(以上DVD1)
3.同:同第2番ト長調 作品18-2
4.同:同第11番へ短調 作品95「セリオーソ」
5.同;同第15番イ短調 作品132(以上DVD2)
[Vol.3](写真右)
1.同:同第5番イ長調 作品18-5
2.同:大フーガ変ロ長調 作品133
3.同:同第8番ホ短調 作品59-2「ラズモフスキー第2番」(以上DVD1)
4.同:同第6番変ロ長調 作品18-6
5.同:同第16番ヘ長調 作品135
6.同:同第9番ハ長調 作品59-3「ラズモフスキー第3番」(以上DVD2)

<演奏>
アルバン・ベルク四重奏団
ギュンター・ピヒラー、ゲルハルト・シュルツ(ヴァイオリン)
トーマス・カクシュカ(ヴィオラ)ヴァレンティン・エルベン(チェロ)

 1989年6月にウィーン・コンツェルトハウス内モーツァルトザールで行われた、アルバン・ベルクSQ(以下「ABQ」)によるベートーヴェン・弦楽四重奏曲連続演奏会の模様を収録したDVD6枚組セットです。

Continue reading "【レビュー】アルバン・ベルクSQのベートーヴェン全集DVD"

| | Comments (1) | TrackBack (0)

2005.12.08

大理石で出来たチェンバロ

marble_cembalo  チェンバロという楽器は、その音色と共に華やかな手の込んだ装飾でヴィジュアル的にも楽しませてくれます。中には表面に大理石模様を施したものもあったりしますが、このエントリで紹介するのは、大理石で出来たチェンバロの話です。現在確認されているものとしては唯一の大理石製のチェンバロが、先日モデナにあるエステ美術館で披露されました。

Continue reading "大理石で出来たチェンバロ"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.12.07

メルヴィン・タン 徴兵拒否で大問題に

Melvyn_tan フォルテピアノ奏者のメルヴィン・タン(写真)が、母国シンガポールで義務付けられている懲役を拒否したため、罰金3000シンガポールドル(約21万5000円)を支払いました。タンは12歳の頃に祖国を離れて英国に音楽留学した後、兵役に就く年齢に達した1977年になってもシンガポールに戻らず、逆に英王立音楽アカデミーに進学し、翌年にはシンガポール国籍を捨てています(現在は英国籍)。今回の罰金は、シンガポールで開催されたコンクールの審査員として、両親への面会を兼ねて28年ぶりに帰国した今年4月に請求されたものです。

Continue reading "メルヴィン・タン 徴兵拒否で大問題に"

| | Comments (9) | TrackBack (0)

2005.12.03

アール・ワイルド 90歳をカーネギーホールで祝う

wild_90  アメリカを代表するピアニスト、アール・ワイルド(→公式サイト)が先日90歳の誕生日を迎え、それを記念するソロ・リサイタルが先月29日にカーネギーホールで開催されました。プログラムは前半がマルチェルロ「オーボエ協奏曲」のアダージョ(ワイルド編)にベートーヴェン「ソナタ第7番」、後半はリスト(「エステ荘の噴水」)とショパンの作品が4曲(「バラード第1番」「同第3番」「スケルツォ第2番」「幻想即興曲」)でした。ワイルドはこれらを全て暗譜で演奏し、破綻もなく無事完奏しました。アンコールに自作の「メキシカンハット・ダンス」変奏曲を披露した後、ソプラノ歌手のアプリーレ・ミッロと作曲家のネッド・ローレムが一緒に音頭を取り2800人の観客と共に「ハッピーバースデー」を歌い、会場全員で90歳の誕生日を祝いました。ワイルドはこのあともう一曲アンコールとしてレスピーギの「夜想曲」を演奏し、この盛大な誕生会を締めくくりました。

Continue reading "アール・ワイルド 90歳をカーネギーホールで祝う"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.12.02

【レビュー】ジョバンニ・ミラバッシ「Prima O Poi」

PRIMA_O_POI

(上の画像をクリックするとHMV.co.jp内の購入画面に飛びます)

(曲目)
1.Barcarole
2.Ero Io
3.Symphomaniax
4.Gettin' In...
5.Howl's Moving Castle
6.Lloro
7.L'ingenere
8.Tot Ou Tard
9.Minor Voyage
10.Il Bandolero Stanco

(演奏)
ジョバンニ・ミラバッシ・トリオ
フラヴィオ・ボルトロ(フリューゲルホルン、トランペット)

 「ハウルの動く城」がジャズになった(Track 5)、と知りミーハーな私はあまり深く考えずに購入してみたのですが、「ハウル~」に限らずどの曲もジョバンニ・ミラバッシの叙情性あるれる演奏で楽しませてくれます。

Continue reading "【レビュー】ジョバンニ・ミラバッシ「Prima O Poi」"

| | Comments (2) | TrackBack (0)

2005.12.01

「栗東市芸術文化会館さきら」問題

 音楽評論家・渡辺和様のブログで最近知ったのですが、来年4月から「栗東市芸術文化会館さきら」(以下「さきら」)(→公式サイト)を管理運営していく団体が、現在の「栗東市文化体育振興事業団」から、民間のビル管理会社「ジェイアール西日本総合ビルサービス」(以下「JR西ビル」)に変わるそうです(※1)。一般紙でも京都新聞(電子版)で「劇団など要望書、職員ら不安の声 栗東文化会館に指定管理者」という記事(※2)でこのことが伝えられましたが、最近流行の「指定管理者制度」(参照→Wikipedia:指定管理者)の潮流の中での出来事とはいえ、平成11年の開館以降オリジナリティに溢れる独自企画で音楽ファンを楽しませてきた「さきら」が来年以降どうなっていくのか、とても気になります。JR西ビルの運営方針によっては、旧カザルス・ホールのような事態が関西でも起こってしまうことが懸念されるからです。

Continue reading "「栗東市芸術文化会館さきら」問題"

| | Comments (0) | TrackBack (1)

« November 2005 | Main | January 2006 »