« 【レビュー】ルミニッツァ・ペトレのバッハ無伴奏 | Main | 「絶対に負けられない」ヴァイオリン争奪戦 »

2005.09.06

バレンボイムが「反ユダヤ主義者」と非難される

 指揮者・ピアニストのダニエル・バレンボイムが今月1日、エルサレムで彼の著書(エドワード・サイードとの共著)のサイン会を開きました。そのときイスラエル陸軍放送局の女性レポーターが近づきインタビューしようとしたところ、バレンボイムは彼女を無視してサインを続けました。それでもコメントを取ろうとしたレポーターに対して、バレンボイムは「軍服を着た兵士にはインタビューに応じることは出来ない。平服に着替えないと話をしないよ」と答えました。レポーターが「私は任務に就いているあいだは制服を着用する義務があります」と話すとバレンボイムは彼女の肩章を引っ張り、更に大声で怒鳴ったとの事です。
 このバレンボイムの行為に対しイスラエル国内で非難の声が上がっています。リモール・リヴナト教育相は「彼の行為は配慮に欠けるものだ」と非難し、さらに「彼はユダヤの敵で、真の反ユダヤ主義者だ」と厳しく断じました。

 私はバレンボイムの普段の言動から「いずれこうなるだろうな」と思っていました。彼は以前からイスラエル軍によるヨルダン川西岸とガザへの駐留を批判していましたし、ユダヤ人である彼がパレスチナ人と共同歩調を取ろうとする姿勢は、パレスチナ人を敵視する立場の人たちからすると受容し難いところがあるでしょう。まあイスラエルの首脳の「反ユダヤ」発言がどうしても目を引いてしまいますが、彼の発言の真意は「自国の兵士(しかも女性)に対し手を掛けようとした行為への批判」にあるのではないかとも思えますし、私は割と冷静に受け止めています。ユダヤ人のセレブに向かって「ユダヤの敵」呼ばわりした教育相と、女性に手を掛けたバレンボイムの双方に「まあお茶でも飲んで落ち着け」と声を掛けたい気分ですが。

(参照)
BBC NEWS. Conductor Barenboim in radio row. (September 3, 2005)
Chicago Tribune. Barenboim called anti-Semitic. (September 3, 2005)
PlaybillArts. Barenboim Draws Criticism for Refusing Interview. (September 6, 2005)

(関連記事)PlaybillArts. Barenboim's East-West Divan Orchestra Finally Makes Its Ramallah Debut. (August 23, 2005)
↑バレンボイムとサイードが創設した「ウエスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラ」(西東詩集管弦楽団)がヨルダン川西岸地区・ラマラでも演奏会を開きました。

(9/10追記)この問題についてはブログ「Calling you」の9月10日付のエントリで詳しく触れられていますのでどうぞご覧下さい。

|

« 【レビュー】ルミニッツァ・ペトレのバッハ無伴奏 | Main | 「絶対に負けられない」ヴァイオリン争奪戦 »

Comments

はじめまして。
拙blogをご紹介いただき恐縮の限りです。
遅くなりましたが、お礼まで。

Posted by: M | 2005.09.16 23:38

TBさせて頂きました。以前、このオケがBSで放送された時のものです。

Posted by: kokoni | 2005.09.07 10:13

こん○○は。
「西東詩集~」は演奏家、関係者の全員が命を賭けてる企画だと私も思います。イスラエル人はともかくアラブ人やイスラム教徒の方々は大変だと思います。イスラム諸国の中には歌舞音曲の類を疎ましく思っている方々もおられますから。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.09.07 06:40

こんばんは。
主に”ピアニスト”バレンボイムのファンでもある私ですが
彼の今回の行動は・・ちょっとダメじゃんと思うけれど例のディヴァン・オーケストラでやろうとする考えは応援したいので・・
”ダニー君”ファイト~なんて思っちゃいます
(爆)

Posted by: dokichi | 2005.09.07 00:07

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference バレンボイムが「反ユダヤ主義者」と非難される:

» 会えるはずのない人々を結びつけるオーケストラ [kokoni blog]
以前エキサイトブログに載せた記事です。TBがついたので思いだしました。 ここのところ話題になっている世界のニュース関連で、今年のプロムスでバレンボイムがこのコンサートをし [Read More]

Tracked on 2005.09.07 10:09

» Barenboim、そしてイスラエルとパレスチナ [Calling you]
1日(木)、Daniel Barenboimが、エルサレムで行われた故Edward Saidとの共著の出版記念会の席で、軍服を着たArmy Radioのレポーターのインタビューを拒否、レポーターに対し、平服に着替えたら答える、と述べた。 これに対し、2日(金)、リモール・リブナット教育相(リクード、..... [Read More]

Tracked on 2005.09.10 01:12

» 「レッスン・イン・ハーモニー」 [工房通信 悠悠]
昨日未明、NHK BSで「レッスン・イン・ハーモニー」という放送番組があった。 昨年11月に放映されたものの再放送になる。 この放送分は残念なことに見逃してしまっていた。 実はこのBlogの8/22エントリー「バレンボイム、ヨルダン川西岸での連帯コンサート」へのkokoniさんからのトラックバック「会えるはずのない人々を結びつけるオーケストラ」での紹介があって、そのNHK番組のことをややぼけてきた記憶装置に保存していたものであったが、昨夕、夕刊の番組欄に眼をやってたまたま見つけた再放送だっ... [Read More]

Tracked on 2005.12.04 20:16

» 新たな魅力 [伊藤的見聞録]
僕は室内楽は大好きなのだが、ピアニストとの室内楽、つまり連弾や二台ピアノの演奏にさほど興味をもてないでいた。音色も同じだしなにかがちゃがちゃして聞こえてあまり面白いと思わ [Read More]

Tracked on 2005.12.08 21:02

« 【レビュー】ルミニッツァ・ペトレのバッハ無伴奏 | Main | 「絶対に負けられない」ヴァイオリン争奪戦 »