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2005.09.14

【レビュー】カラヤン&ベルリン・フィルのチャイコフスキー三大交響曲(EMI録音)

karajan_Korea_EMI

1.チャイコフスキー/交響曲第4番ヘ短調 作品36 (CD1)
2.同/同第5番ホ短調 作品64
  (CD1;第1&2楽章、CD2;第3&4楽章)
3.同/同第6番ロ短調 作品74「悲愴」 (CD2)

(演奏)ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィル

 オリジナルテープに「キズ」があるという理由でなかなか再発されなかった「交響曲第4番」を含むチャイコフスキー後期の3つの交響曲の録音が、最近になって韓国のEMIからリリースされました。それにしてもここで指揮をしているのは本当にカラヤンなのでしょうか。そう疑ってしまうほど、私のイメージするカラヤンとは異なるアプローチが展開されています。
 (「坂本くん」註;以下の文章は、やや独断と偏見を含む内容ですので、そのあたりをご理解の上でお読み下さい)

 70年代以降のカラヤンの演奏は、少なくともDGへの正規録音で聴く限り、ある種固定化された様式を持っていました。ヴァイオリンの高音を強調したサウンド造りと、鋭いアタックを控えめにしてレガートを重視した演奏法は、川の流れによって角が取れて丸くなった石の如くツルンとした感じのサウンドを生み出していましたが、旧来の管弦楽の響きとは異なる音世界は賛否両論でした。
 1971年録音のチャイコフスキーは違います。音のバランスはいつもの高音過剰ではなく、中低音を基調と安定感あふれるものですし、大音量での金管の咆哮は実にハードな響きで、その音圧に圧倒されます。そしてカラヤンらしからぬ表現はヴァイオリンを始めとする弦楽パートで目立ちます。「第5番」第1楽章の二箇所(4'45"付近とと11'20"過ぎ)の鋭角的な運弓は、ナイフで何かを切ったかのような響きを生みだしていますし、「第5番」の前半の2楽章や「悲愴」の第2楽章で頻発する(メンゲルベルクばりの)ヴァイオリンのポルタメントには驚かされます。特に第2楽章の6'40"付近からのチェロとヴァイオリンによるポルタメントの応酬は圧巻です。そしてこれらの表現は決して「やりすぎ」な印象を与えず、何とも自然で絶妙です。これはベルリン・フィルの高い技術の賜物でしょう。
 それらの緻密な表情づけに加えて、「悲愴」の第2楽章やフィナーレでの、切々と歌われる弦からは、普段の彼らの演奏では感じられないような濃厚な「甘さ」が感じられるのです。しかも決して単純ではなく、まるで美味のチョコレートドリンクのように複雑な苦みを伴う甘さです。この「甘さ」は、ロシアのオーケストラの演奏を聴くときに時折感じることがありますが、それに近い響きをベルリン・フィルで聴くことができるとは…。これは意外な驚きです。鋭い響きのトランペットもどこかロシア的ですし、もしかしたらカラヤンは「ベルリン・フィルのロシア化」を意図して音楽作りをしたのでは、と思ってしまうほどです。そしてそれはこの録音の場合、成功したと言えるでしょう。ともかく普段のカラヤン&ベルリン・フィルとは一味違う、濃密な感情表出で貫かれたディスクです。
(韓国EMI,7243 5 75929 2 5)

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