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2005.09.11

【演奏会レポ】木嶋真優リサイタル

1.シューベルト/ロンドロ短調 D895(作品70)
2.フランク/ヴァイオリンソナタイ長調
3.プロコフィエフ/同第1番 作品80
4.チャイコフスキー/ワルツ・スケルツォハ長調 作品34
5.(アンコール)モンティ/チャールダッシュ

演奏:木嶋真優(ヴァイオリン)江口玲(ピアノ)
(会場:神戸新聞松方ホール 2005年9月4日)

 先日聴いたショスタコーヴィチの協奏曲が素晴らしかったので、9月4日の神戸での江口玲とのデュオ・リサイタルにも出かけてみました。プログラムはシューベルト、プロコフィエフ、フランクという組合せですが、演奏順は前半にフランク、そしてプロコフィエフを後半のメインに置いていました。これを見て私は「彼女はプロコフィエフの方が自信あるのかな」と思ったのですが、予想通りプロコフィエフの方が確信に満ちた演奏でした。決してフランクがダメ、というわけではなく、むしろ素晴らしい部類に入る演奏だったことは間違いないのですが、現在の木嶋さんにはプロコフィエフの方が合ってるかな、と感じた次第です。

mayu_kishima 彼女は一点の曇りもない確実なテクニックを持っています。そして音色のヴァリエーションをいくつも持ち、それを曲の場面に応じて使い分ける能力があります。プロコフィエフはそんな彼女の特徴を生かし、局面局面での音色の変化つけが見事で、色彩感あふれる演奏を展開しました。これぞまさに主演女優がハマリ役を演じきった、といったところでしょうか。プロコフィエフは粗野な曲を書く人、というイメージがありますが、繊細かつ瞑想的で心に残る楽想を持った作品もたくさんあります。「ヴァイオリンソナタ第1番」がまさにそれなのですが、ここでの木嶋さんの演奏は絶品でした。作曲家自身が「墓場に吹く風」と表現したと云われる第1楽章、そして第4楽章の後半部でのヴァイオリンが上昇と下降を繰り返すモチーフでは、細かな音符が一つの継ぎ目のない線のように繋がっていき、何ともいえない質感の良さです。また第3楽章の緩徐楽章での息の長い旋律は、まるで小舟が美しい軌跡を描きながら静かに夜の海を滑っていくような滑らかさです。これらと対照的なプロコ「らしい」部分(第2楽章、第4楽章前半)では一転して音色も硬質になり力強い表現に変わるのですが、強奏部でも音が濁らずスムーズなところに技巧の確かさを感じました。
 フランクの方も十分なスケール感と鮮やかなテクニックで引きつける演奏でしたが、プロコフィエフが「カラー写真」だとすると、フランクは「モノクロ写真」のようなところがあったりするので、音色の変化ではなく音の濃淡の変化をもう少しつけると(例えば第1楽章の冒頭部などでの)表現の幅が広がるかな、と思いました。それでも最終楽章では江口さんと共に劇的な音楽を作り上げていて、私は十分満足しました。
 最後のチャイコフスキーと「チャールダッシュ」の2曲は曲芸のようなパッセージが連続する、まさに典型的なショー・ピースなのですが、これほどまで超絶テクを次々と見せつけられると、もうオジサンは「関心」とか「感動」とかを通り越して笑ってしまいましたよ。これに似た体験となると、楽器は違いますがヨー・ヨー・マが初来日したときに、バッハとかフランク(←またフランクか!)などの名曲を華麗に弾き通したあと、テクニカルな「モーゼ」変奏曲を「こんなのチョロい、チョロい!」といった感じの余裕の演奏を披露して呆気にとられたことがありましたが、この木嶋さんの最後の2曲はそれを思い起こさせました。

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Comments

こん○○は。
いやいや、技巧の安定感は素晴らしかったですよ。スピッカートやフラジオレットなどの特殊奏法のところでも全然音が濁らなかったですし。

>>フランクは「モノクロ写真」・・・
>うまい表現ですね。と言ってもなかなかイメージが湧かない想像力の貧しい私ですが。
「どんなイメージか」と改めて尋ねられると返答に窮してしまいます(苦笑)…。以前ティボーの演奏でフランクを聴いたときに「モノクロ写真みたい」と思ったことがあったので、今回それを使ってみました。まああくまでイメージ、ということで今回のトコロはご容赦下さい(笑)。

Posted by: 「坂本くん」 | 2005.09.11 at 09:24

木嶋さんのコンサート報告ありがとうございます。彼女、好調な様で安心しました。
テクニックもやはりすごいものを持っているんですね。

>フランクは「モノクロ写真」・・・
うまい表現ですね。と言ってもなかなかイメージが湧かない想像力の貧しい私ですが。
今度彼女がロンドンに来ることがあれば聴きに行きたいと思います。

Posted by: dognorah | 2005.09.11 at 07:51

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